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ドラマシナリオ⑪「もう一つの模試」②

■あらすじ■

 作品テーマ(キープレイス?)は「軽井沢」。家庭の事情で離れた幼馴染との再会を描く。
 新浦智彦と佐竹さゆりは幼馴染の高校2年生。現在は離れているが関係は続いている。新浦の模試に日が近づいてきた。同じ日にさゆりは文化祭でバンドライブをやるという。お互いにエールを送るが……

■シナリオ本編■

◯新浦家・外観(朝)

タイトル『翌日』

ガラガラとシャッターが上がる音が周囲に響く。
新浦の家の前を犬の散歩をしている若い女性が通りすぎる。


◯新浦の自室・中(朝)

ライトブルーのTシャツにジーパンの新浦がリュックにノートや参考書を詰め、リュックのファスナーを締め、ため息をして振り返る。
朝日をあびた色あせたカエルのぬいぐるみが棚に座っている。

新浦「なあ、ケロ太、お前の元々の持ち主、覚えているか?」

新浦立ち上がり、ぬいぐるみに近づいて、手に取る。

新浦「持ち主に、会いに行くか」

リュックのファスナーを開けて、丁寧にカエルのぬいぐるみを入れる。


◯新浦家・玄関

リュックを背負った新浦がスニーカーの紐を結んでいる。
リビングから英美が出てきて、新浦に歩み寄る。

英美「今日、模試だっけ。頑張って」

ビクリと英美に振り返る新浦。

新浦「あ、ああ……いってきます」

新浦、慌ててドアから外に出る。


◯四ツ境駅・外観(朝)

『四ツ鏡』と書かれた駅舎。様々な人々に紛れて、新浦が足早に駅の構内に入っていく。


◯同・改札(朝)

ポケットからパスケースを取り出す新浦。改札に向かって数歩進み、立ち止まって改札の脇の券売機を見つめる。
新幹線の自動券売機。
新浦、掌中のパスケースを見つめ、ポケットにねじ込んで、リュックを背負い直す。

新浦「……今日の模試、会場は軽井沢にするか……」

新幹線の券売機に歩み寄る新浦。


◯北陸新幹線・自由席・車内(朝)

登山客と観光客で、程よく混雑している車内。
窓側の席で外を眺める新浦。大きく息をついて、手にしているスマホのディスプレイを点灯させる。画面は9時25分の表記。
インカメラを起動させ、にやけ顔の新浦が映し出される。

新浦「さて、そろそろ驚かせてやろうかな」

『録画』がタップされる。真顔に戻る新浦。

新浦「おはよう、さゆ。今日は母さんにナイショで予定変更することにした。今、もう一つの模試会場に向かってるんだ」

背後の車内の様子を映し出す新浦。行き先と到着時刻を案内する車内アナウンスが流れる。

新浦「と、まあ、こんな感じ。コイツも連れてってというので、連れてきたんだ」

新浦、スマホで隣の座席を写す。座席においてあるリュックの隙間からケロ太が首を出している。リュックを揺らして小躍りしているようにケロ太を動かす。
『録画停止』をタップして、メッセージアプリを起動。手慣れた様子でさゆりとのやり取りに動画をアップロードする。
即座に既読となり、カエルの驚いているスタンプが表示される。『そんなサプライズ……とりあえず家族に学校の前で待っててもらうから!!』というメッセージに後、大喜びで跳ね回っているカエルのスタンプが表示される。
苦笑しながら膝の上に広げている参考書を読み始める新浦。


◯軽井沢駅・北陸新幹線ホーム

『軽井沢』と書かれた看板のあるホーム。駅の到着アナウンスが流れ、ホームドアと車両のドアが開き、一斉に乗客が降りてくる。
他の乗客と一緒に駅に降りる新浦。キョロキョロと周囲を見渡す。

新浦「勢いとは言うものの……ほんとに来ちゃったな」

駅の時計は11時15分。
小走りに北口に向かう新浦。正面の下り階段に向かいながらスピードを上げて走り出し、階段を駆け下りる。


◯軽井沢駅北口・バスターミナル

階段を駆け下りた新浦、スマホを取り出して覗き込み、バスターミナルを見渡す。
停車しているバスがあり、乗客が列を作って乗り込んでいる。
スマホを覗き込んでうなずき、列に向かって疾駆する新浦。
乗り込みかけていた乗客に追いつき、バスに飛び乗る。新浦が乗ってすぐにドアが閉まり、発車するバス。


◯バス車内

荒い息を整えながら、ハンドタオルで額の汗を拭う新浦。目線は窓の外。晴天に映える長野の山野を見つめる。


◯軽井沢高校・正門

『2018年度 軽井沢高校 噴煙祭』と書かれたアーチ型の看板が立っている。制服姿やカジュアルな服装の人々が、ぞろぞろと看板をくぐって行く。
出店が並び、ごった返している校内。
正門付近にあるバス停に、スピードを緩めながらバスが近づく。
アーチ看板の根本で佐竹(45)、涼子(45)、きよみ(9)が停車したバスを見つめている。
向かいのアーチ看板の根本にある立て看板に模造紙を持った学生が近づいて立て看板に模造紙を貼り出す。
『12:00 体育館にて バンド『ボルケーノ』ライブ』とギターのイラストが書かれている模造紙。
きよみ、涼子を見上げる。涼子、きよみにほほえみながら肩を抱く。
バスが停車し、他の乗客に混じって新浦が降車する。
手をメガホンのように丸めるきよみ。

きよみ「とーもーひーこ兄ちゃーん!! こっちだよー!!」

キョロキョロしていた新浦、ビクリときよみの声の方向に向き直り、にやけながら佐竹一家に近寄る。
片手を上げる佐竹。ニコニコ顔で手を振る涼子。ぴょんぴょん跳ねながら腕をブンブンと回してアピールするきよみ。一礼する新浦。

涼子「ずいぶん、大人っぽくなったねぇ。前に合ったのは中2時だっけ?」

佐竹「話は後にしよう、さゆりの出番がそろそろだ」

校舎の時計が11時40分を指している。
新浦の手を引っ張りながら駆け出すきよみ。笑いながら顔を見合わせて二人に続く佐竹と涼子。

続く

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