portrait
アウトレットコーナーで
埃のついた画用紙を買った
新品は使いたくなかった
買ってきたものを蜜色で染めて
幾筋もの爪あとをつけ
決して本気にならない準備をした
頭の中にあるプレビューを選択し
印刷するように下書きを始めた
長い時間向き合っていると
選択肢がいくつも浮かんでくるから
何度も筆を置いて逃げ出した
そうしないときっと
心の温度が上がってしまって
絵の内容を変えてしまう
だからこれはお遊びなんだと
そう言い聞かせて
クールに筆を操ろうとした
だけど閉じ込めた想いが溢れ出してきて
絵の世界を激変させてしまった
下書きの段階では表情もなく
背中合わせで座っていた男と女は
肩を寄せ固く手を繋いでいる
本気になってしまった絵を前にして
ため息混じりで苦笑いをしながら
携帯電話でキミを呼び出した
夜に手を繋ぐだけの関係を捨てるために
この絵を描いたのだから
こっちの絵でも
構わなくなったのだから
キミにこの絵を見せようと思う
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