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書評「世界を敵に回しても、命のために闘う」④

前回の続きです。第4章、むしろこちらの方が岩田氏の件で特筆すべき内容が書かれています。検疫は全て失敗だったという野党や左翼からすると卒倒する内容があるので、ぜひとも多くの人に知って欲しいと思う。

厚労省の堀岡氏のセリフは野党や左翼への挑発ですね。(p.122)

「彼が言ったような基本的なことを、われわれが知らない訳がないだろう、ってことですよ。こうするしかないから優先順位をつけてやっていたんです。100%完璧な感染対策などできていないことなんて分かっていますよ。だから、何なの? ってことです」

DP号の時ネット上でも分かっている医師など(特に岩田氏のコミュニケーション下手を知る人)は堀岡氏の言う意味が分かっていました。でも船に関わったり災害で治療をしたことない0か1思考の人は生理的に反発していました。本文にも筆者が「岩田教授は確かに感染症の専門家ではあるだろう。だが危機管理の専門家ではない」と切り捨てています。岩田教授と感染症という言葉をそっくり入れ替えて批判すべき学者が世の中には相当いますね。

更に阿南医師のこのセリフに岩田氏は反論すべきでしょう。怒りを抑えてスパッと切り捨てています。

「岩田教授は、思い込みが強く、周り正しいが見えないタイプじゃないだろうか。医師にはわりとそういうタイプがいるからね。彼は船内にたった2時間しかいなかった。まさに円錐の『点』のところを見ていた。それで『危ない』と言った。でも彼は全体を見ていたのか。自分が見た世界だけが正しいと思っているなら、子供と同じだと私は思いますね。人間には多角的な視点が必要ですよ(p.124)」

126ページからは「多職種連携」について筆者は取り上げている。医師で苦手な人がいて、岩田氏は典型のようだ。あと阿南医師は船員居住区にも行き、船底で暮らす東南アジア人船員の就労まで知っている。「(前略)乗客たちのクルーズ船での生活は彼ら抜きでは成り立たない。集団感染が発生した後も、彼らが働かなかったら、乗客は生きて行けなかったかもしれません」

元船会社で船員管理者だった私から言えば「生きていけなかったかも」ではなく「生きていけない」です。マスコミが働く船員をデスる報道をしていたが、彼らにはそういう視点はあったのか。本では小林多喜二の「蟹工船」を取り上げていたが、社会主義思想の評論家でこのような部分に触れていた人は日本に一人もいなかった。むしろプリンセスクルーズを弁護して日本政府を批判していた。労働問題に強い渡辺輝人弁護士の言動など、まるでプリンセスクルーズの顧問弁護士のようだった。

更に近藤医師の振り返りも痛烈である。

「(前略)現場のニーズに合わせて対応する姿勢が重要なんです。ところが、専門家は『自分の知識を教えてやろう』『現場を指導してやろう』という上から目線を取りがちです。こうした専門家がいると現場は間違いなく大混乱に陥ります(p.132)」

コロナ問題でも実際に治療に関わっている医療従事者と、関わらない医師や学者に置き換えると全く同じ事が起きている。後者には野党や左翼学者のほとんどがあてはまる。

筆者も岩田氏の意見に一理ある事は認めつつも、こう批判する。

「話しながらであっても、不正を見つけたら、万難を排して告発すべきとは思う。しかし、そのような告発が必要なときにも、可能な限り、関係者との対話が必要ではないだろうか。自分が「発見」したことが、その状況にあっては本当に正義なのか、正しいのか。当事者と話しながら確認していかなければならない。岩田教授はそれを怠った。(後略、p.132)」

岩田氏の場合はそういう事を怠るこれまでの行動を利用した人がいると私は思っています。その一人は以前書いた通りテレビ朝日の幹部でしょう。更にその背後には、DP号への潜入取材が出来ずに痺れを切らしていた記者の不満がある。筆者は取材する側なので、そういう視点は判っていても書けないでしょう。

あと防大卒記者らしく、フェリー「はくおう」に寝泊まりした自衛隊「宿泊支援隊」の事にも触れている。一部はNHKの報道でも取り上げている内容だ。この他、DP号の大きさにもちゃんと触れている。私としてはこの創作写真を提供したかった。

ランドマークタワー

検疫批判の一部はDP号の大きさを分かっていないものも見受けられる。日本で有数の横浜ランドマークタワーとほぼ同じ大きさで統率を取る難しさを理解していないネット民は多かった。筆者は残念ながらそういう所には触れていない。

物足りなさは感じるが、これまでDP号で取材した新聞記者の中ではよく書いたと思う。

ここまでご覧下さり、ありがとうございました。第5、6章については後日書きます。

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