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『クリュセの魚』を読む

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東浩紀『クリュセの魚』を精読する。現在時において小説を読むことを意識しつつ、虚構の表現が私たちの生を取り持つ可能性を示す。
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#固有名

『クリュセの魚』を読む③ 名前の物語

『クリュセの魚』を名前についての物語として解釈する。テクストの固有名の性質には無名性と単独性を見ることができるが、それらはまた偶然性と必然性という様相概念に連接している。名前はメディアとして機能し、それぞれの固有名の性質は、人物のあいだで欲望や生を結ぶ根拠として働いている。固有名こそが恋愛や家族を結びつけるのである。よってこの小説は名前をめぐる物語なのである。

② ズレの方法

†アレゴリーとし

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