見出し画像

飲みまくれ!カルトドリンク7選

列島では続々と梅雨が開け、いよいよ夏本番となってきました。皆さんも水分・塩分のこまめな補給を欠かさないよう気をつけてお過ごしください。

ところで、世の中でカルトと呼ばれる集団の中には、活動の一環として独自の製品を生産している団体が見られますが、その中には少なからず飲料品を扱ったものがあります。

そこで今回は、著名なカルト集団が製造している飲み物をいくつか紹介したいと思います。特に団体内で特別な意味を持っているものを中心にセレクトしてみました。いくつかは実際に試飲しています。

(港区広尾の末日聖徒イエス・キリスト教会日本東京神殿内の自販機。教義でカフェインが禁忌のため、茶・コーヒー類が一切販売されていない。代わりの刺激物としてルートビアが置かれていたり、さり気なくチルアウトがとんでもない値段で売られていたりする)

1. メッコール (統一教会)

(2022年11月に横浜ネイキッドロフトで行われた「第3回地下カルトクイズ王選手権」の特別メニュー・メッコールハイ。普通に美味しかったです)
  • 入手難易度:★★★

  • 味:★★★

  • 価格:★★

統一教会(世界平和統一家庭連合)のフロント企業「一和」が製造している炭酸飲料です。一昨年下旬から沸騰している旧統一教会問題の流れで取り上げられることが多くなり、本邦において現状最も著名なカルトドリンクと言えます。

(『ミヤネ屋』2023年3月30日放送より。ソウル市内の売店で販売されている様子を取り上げている)

「メッ」は韓国語で「麦」、「コール」は「コーラ」を表しており、その名の通り大麦がふんだんに使用されています。

統一教会の生産品にしては良心的な価格で提供されており、同社が製造している高麗人参茶と違い霊感商法の資材として用いられた形跡もなく、上記画像のように韓国では一般の売店などでも販売されて親しまれています。

ヘッダ画像のように、日本でもかつては個人設営の自動販売機や新大久保界隈の食料品店などでしばしば見かけ、ドクターペッパーやルートビアと共に「賛否両論炭酸飲料」の筆頭としてサブカル的な知名度がありました(筆者は全部好きですけどね)。

(相生祐子さんも愛飲)

味は、昔読んだある雑誌に載っていた「麦茶に砂糖を飽和するまで混ぜて煮詰めたものを炭酸で10倍に割った味」というレビューが実に的確で、香ばしい風味の後に甘ったるい感じが押し寄せてきて、一回で飲み干すのが難しい雰囲気。マックスコーヒー好きの2割くらいに刺さりそうなイメージです。

先述したようにかつてはそれなりに広く見かけることの出来たメッコールでしたが、2018年に常温状態で缶が爆発するという恐ろしい事件が続発したことで一時生産中止に追い込まれてしまいます。

現在は現地での販売は再開されていますが、日本への公式ルートでの輸出は途絶しており、非公式に一部の店舗か通販のみで入手することしかできません。もちろん自動販売機からはほぼ撤収されていました…ところが!

(記事公開の2日前に撮影しました)

「100円自販機」でお馴染みのスキマデパートが展開する自販機の一部にて、7月頃から「韓国フェア」の一環としてメッコールが販売されています。久しぶりにアクリル越しに対面する青く細長いアルミ缶の姿にはかなり感動しました。

「韓国フェア」がいつまで行われるかは不明ですが、もしかしたらこれをきっかけに販売ルートが拡大するかもしれません。メッコールの今後に期待です。

(「話題の」)

2. ゴールデンハンマー (幸福の科学)

(ラ・ムー北津守店にて撮影)
  • 入手難易度:★★

  • 味:★★★★

  • 価格:★

ゴールデンハンマーは、関西を中心に展開する格安スーパー「ラ・ムー」のプライベートブランドが販売しているエナジードリンクです。壁がピンク色で、店内BGMがエロゲ平成J-POPっぽいのが特徴のあのお店です。

同店を展開している株式会社大黒天物産は、経営者が熱心な幸福の科学の信者であることが知られています。幸福の科学の作る映画では毎回エンドロールに「協力企業」という名目で教団の関係企業が多数クレジットされていますが、同社は毎回必ず筆頭で登場します。

東日本では長野と新潟の一部でしか見かけませんが(さらに言えば2012年に買収した西源のリブランドである)、西日本ではスーパー玉出と双璧を成す有名店であり、教団系企業としては最も成功したうちの一つであると言えます。

(フォッサマグナを越えられないラ・ムー)

一方である程度教義からは自由に経営されているらしく、一和の商品が販売されていたという話(幸福の科学において統一教会は邪教の如き扱いを受けている)もあります。利用者の殆ども教団との繋がりは知らないでしょう。

同店は低価格を実現するためプライベートブランドを活用しており、非常に様々な商品を展開していますが、ゴールデンハンマーはその中でも特にプッシュされているようで、筆者が訪れた店舗ではノンシュガータイプゼリータイプ、さらにはアルコール飲料まで存在していました。

(キャッシュレスにも対応しているが、恐るべきベンダーロックインが行われている)

単価は100円を切っており、本稿で紹介されている商品の中でも圧倒的な最安値です。さすが格安スーパー。味はレッドブルやモンスター系の普通のエナドリで、強いて言えば後味にやや苦みが残る雰囲気があります。

ラ・ムーはコスト削減のため宅配事業を一切行っておらず、正規に入手するには最寄りのラ・ムー店舗で購入する以外の手段がありません。現状地域によってはアクセスがある程度限られるため入手難易度は高めと言えます。

3. XSエナジー (アムウェイ)

(2023年5月、渋谷のアムウェイプラザにて撮影。新フレーバーの試飲コーナーで、会員は応募すると特製ボトルが貰えたらしい)
  • 入手難易度:★

  • 味:★★

  • 価格:★★★

我が国ではマルチ商法の代名詞的存在のアムウェイ。化粧品や洗剤が有名ですが、食品も多く販売しています。中でも近年同社が激推し中なのがXSエナジーというエナジードリンクです。

特設サイトによると、米国での発売は2002年と意外に歴史が長く、日本では2011年頃から販売されているようです。その推しっぷりは半端でなく、渋谷のアムウェイプラザでは新フレーバーをゲーミングなショーケースに陳列したり、入口に謎の間違い探しまで展示されていました。

(意外と難しい)

パッケージには「世界初のノンシュガー・ノンカフェインのエナジードリンク」などと銘打たれており、一体どの辺りにエナジー要素があるのかよくわかりません。

味はチルアウト系のさっぱりした風味で後味もそれほど悪くは感じませんでしたが、さすがマルチ商品、350ml缶で410円と強気すぎる価格設定をしています(ちなみに別のウォッチャーさんの情報によると心斎橋の店舗では550円もするらしいです)。ゴールデンハンマーを見習え。

ところで、XSエナジーは店舗と通販でも購入できますが、その他に専用の自動販売機なるものが展開されています。もちろんディストリビューターがアムウェイから購入して置いているものです。定価よりも割安で販売されているので、こちらで買ったほうがお得。

こちらのブログに掲載されている会員向け情報の転載と思われるテキストによると、自販機の提供は2019年から始まっており、「ブランドの認知度アップ」を目的としているとされています。

ネットで検索をかけると、実際に設置されている例をいくつか確認することが出来ます。このうちよく知られていた阿佐ヶ谷の某美容室に設置されていたものは一昨年中旬頃撤去されてしまったようですが、都内では先述した渋谷のプラザから坂を下った「Heckel Sports SHIBUYA」の自販機が現存しています。

(すぐ近くにニュースでよく見かける統一教会の本部ビルがあります)

Heckel Sportsは日本人で唯一アムウェイの最高位会員となった中島薫が経営しており、言ってしまえば半公式なお店。なのでここの自販機が今後撤去される可能性は非常に低いと思われます。

また、都内にはもう一台、拝島線小川駅の近くの駐車場に存在を確認していますが(ストリートビューを確認する限り2021年頃から存在するようです)、こちらは筐体が公式のものと異なるため、熱心な会員が自ら製作したものであると推測されます。かなりレアな一台です。

(小川駅付近の個体)

他にも、筆者未確認ですが、関東では群馬県の駒形駅付近の住宅街、関西では神戸の元町商店街と、大阪の河内永和駅近くにも存在するようです。後者はGoogleストリートビューにHeckelのロゴの入った自動車が駐車されている画像を確認したので、アムウェイ関連施設であると推測しています。

ひょっとしたらあなたの地元にも未知のアムウェイ自販機があるかもしれません。ぜひ探してみてください。

4. クロアクティブ (事業家集団・環境)

(この小ささで980円)
  • 入手難易度:★★

  • 味:★

  • 価格:★★★★

近年、繁華街で学生層を中心に「喫茶店を探しています」などの声掛けを行い、巧みに関係を構築して組織に誘導していく悪質なマルチ商法団体が問題となっています。

この団体はネットでの悪評を防ぐため会社としての登記もない無名の集団として活動していましたが、3年ほど前から被害者からの告発が相次ぎ、一昨年ごろからは大手メディアに取り上げられるなど存在が認知され始めました。「事業家集団・環境」は告発者による便宜的なネーミングです。

主な手口は、偽りの友人関係を結ぶことで対象をマインドコントロールし、「師匠」なる人物の参加のグループにそれとなく加入させ、「師匠」の経営する店や商品を通じて月15万円ものノルマを課すというもの。

この「師匠」へのノルマによく使用されるのが、事業家集団・環境のフロント企業である株式会社Beが販売する健康飲料「クロアクティブ」です。集団内部では15万円分をパッケージした特別セットが流通しているのだそうで、用意周到ぶりが伺えます。

100mlのボトルが1本980円という信じられない高値で販売されています。グレープフルーツジュースと緑茶を足して2で割ったような味で、とにかくドロッとしていて本当に原液で飲んでいいのか悩ましい喉ごしでした。あんまり好き好んで飲む人はいない気がします…

ところで、筆者は本商品を購入するために「師匠」に15万円を上納したりはもちろんしていません。ではどうやって入手したのかというと、なんと伊勢丹の新宿本店で普通に販売されていました

(伊勢丹公式サイトより)

販売されているのは地下2階「ビューティーアポセカリー」食料品コーナー。他にも伊勢丹ではBeの販売する化粧品も取り扱っています。大手の百貨店が全国報道で問題の報告されている団体の関連商品を販売しているという状況は中々怖いものがあると思いました。

5. EM・X GOLD (EM菌)

(隣は関連商品のEMウォーター)
  • 入手難易度:★★

  • 味:★★

  • 価格:★★★★

「EM菌」とは、株式会社EM研究機構が生産している微生物資材の俗称。EMは「有用微生物群」の略称だそうで、十数種の細菌を混ぜ合わせることで発酵による有用成分の産生が行えると謳っています。

主な用途は堆肥の生産ですが、福島第一原発事故の直後には被災地にて「土壌の放射能を軽減できる」と喧伝するなどの活動が見られていました。しかし、EMの効果に対しては生物学的な裏付けがまったく無く、逆に科学的な検証によって土質改善の効果がみられないことが判明、現在ではニセ科学とされています。

一時期は全国の学校や自治体を通じ環境教育の一環としてEMを混ぜた泥団子を河川に撒くイベントが開催されたり、最近でも内閣府から巨額の補助金が支出されているなど、公的機関への侵食に特化した活動から、研究者などに長年危険視されています。

実は、EM菌は世界救世教という新宗教団体の強力な後押しを受けて開発されたものでした。世界救世教はいわゆる「手かざし系」と呼ばれる反医療的教義を唱えており、自然農法を中心教義の一つとしていることから目をつけたものとされています。

EMの提案者である比嘉照夫は「信者ではない」と自称していますが、90年代に起きた教団の分裂騒動以降も一方の派閥に付き関係を続けているなど、かなり強いシンパシーを抱いていることが感じられます。

一方で、EM菌自体も比嘉氏自身が「EMは神様」「良いことが起きたらEMのおかげと思うこと」などと発言したり、スピリチュアル的な言説を唱えるなど単体としても宗教的な様相を帯びています。批判者に対して恫喝や濫訴に出るなど、カルトと呼んで差し支えない言動も数々行われています。

(比嘉照夫のエッセイ『新・夢に生きる』より「EM讃詩」)

そんなEM菌が農業資材「EM1号」と共に主力商品としているのが、発酵成分飲料「EM・X GOLD」です。元々は比嘉氏の地元の沖縄の企業が「EM・X」として製造していましたが、2008年に何らかの理由で商標契約が切れたため、現在はEM研究機構が独自に製造しているようです。

(『フェイク・バスターズ』2023年8月26日放送より。陰謀論に嵌った母親が購入した怪しい民間療法アイテムとして登場)

よく誤解されていますが、公式の説明によれば本商品にはEM菌は入っておらず、EMに発酵物質を産生させた後に殺菌していることになっています。2000℃でも死なない設定のEM菌をどのようにして殺菌したのか非常に興味をそそられるところですが特に説明はありません。逆浸透膜でも使ったんすかね?

(販売元の「EM生活」が発行しているパンフレット。「薬ではないから安心」という不思議なフレーズが印象に残る)

お値段は200mlで2263円とかなりお高いですが、本来は50倍程度に薄めて飲むものらしいので単価としてはクロアクティブより安いと言えます。EMウォーターという薄めた形の商品は一本160円と比較的妥当な値段で販売されていました。

原液の状態で飲んでみましたが、普通ににがりっぽい感じでした。水で薄めると単なるミネラルウォーターです。背後の団体に比べて味のインパクトが薄いところがウォッチャー的な不満点となります。

以上が市販されており一般に入手可能なもの。以下は一般に入手困難で、その存在も不明瞭な伝説級のカルトドリンクです。

6. 神真都のしずく (神真都Q)

(静岡地裁で行われた刑事裁判の傍聴に来ていたメンバーが持参していたもの。なぜか梱包材に入ったまま)
  • 入手難易度:★★★★

  • 味:未知

  • 価格:★★★★★

神真都Qは2021年末頃に結成された団体で「日本のQアノン」を自称し、ワクチン接種業務を妨害する刑事事件を引き起こしたことでリーダー含むメンバー20人以上が逮捕されました。「世界は爬虫類型宇宙人に操られている」「日本人は龍神天皇の末裔」などQアノンとも無関係な独特の教義を持っています。

そんな神真都Qが2022年9月頃に販売を開始したのが「神真都のしずく」なる飲料です(正確に言えば「寄付に対する返礼」)。長細の瓶に入った、不透明な濃褐色の液体で、ラベルの食品表示によると、種類は「松茶」、原材料は「松、炭酸水素ナトリウム」とされていましたが…

会員内部で共有されていた映像がウォッチャーの手によって流出すると、その実態に多くの人々が戦慄することになります。そこには、屋外で火に焚べられた大鍋に何らかの植物を無造作に突っ込んでは、それを太い木の枝のようなものでかき混ぜる笑顔の村井大介代表理事の姿が。まるで魔女が怪しい薬を調合しているような光景です。

製造元は静岡県袋井市にあった当時の本部事務所とみられ、12月に幹部8人が逮捕されたことを報じた静岡朝日テレビの記事には、「しずく」の製造中と思しき現場を目撃した近隣住民の証言が掲載されています。

 住民によりますと、3カ月ほど前から事務所に人が出入りするようになり、県外ナンバーの車もたびたび目撃されていました。

 こちらの男性は、団体の関係者とみられる人物に直接話を聞いたそうです。

近隣住民:
「火を焚いて熱湯のなかに木の葉っぱみたいなものから、木を粉末にしたようなものをいろいろ混ぜていて、何ができると聞いたら『漢方薬とか』女の人が3人いた。30代くらいの人に、どこから来たのか聞いたら『大阪から来た』。なんでこんなところに来たか聞いたら“師匠”がここにいるから来たという話だった」

新型コロナワクチン会場に強引に押し入る反ワクチン団体「神真都Q会」とは?静岡県警は実態解明を急ぐ

動画のような光景を繰り広げている真っ最中の集団に「何ができる」と尋ねる住民のクソ度胸に注目したいところですが、気になるのは「木を粉末にしたようなもの」。神真都Qの公式の説明によると、「しずく」には松茶の他に「神樹」が入っているそうなので、それかも知れません。近隣住民の方は大変な現場に立ち会ってしまった可能性があります

当初は会員限定で、2000円の寄付で300mlの返礼を行っていましたが、翌年5月ごろになると非会員に対しても頒布を開始。これが会員の10倍の価格という暴利で、筆者含めウォッチャーで入手できた(というより、入手する気になった)人は絶無でした。

一方の神真都Q側は一時期「しずく」を強くプッシュしており、全国の会員が集結してデモを行う「結集デモ」においては解散地点での臨時頒布会が行われたり、正会員とは別の「しずく会員」なるプランを設けたり、関西を中心にマルシェを開催し「しずくスカッシュ」なるものを売ったりしていました。

そんな活躍を見せていた「しずく」でしたが、2023年11月21日、突然頒布の中断が通達されます。実はこの時、神真都Qの内部で幹部同士の内紛が発生し、「しずく」を推していた一派が粛清されてしまったのです。

この騒動は会の内部に動揺をもたらし、複数の支部の離脱を招く事態へと発展していきました。さらにこの幹部は本部事務所の土地建物の提供なども担当していたため、会の存続を巡るいざこざが長期間に渡って続くことに。ついでに「神樹」とされていたものは泥岩であったことまで暴露されます。「しずく」の正体は泥水でした。

(衝撃の暴露)

現在、公式サイトにはリンクが貼られたままとなっていますが、受付停止中となっており、「しずく」の所在は不明となっています。一方、離脱した幹部は新たに「渼和音」なる謎の液体を売り出しており、商標対策を行った「しずく」なのではないかと推測されています。

7. サットヴァ・レモン (オウム真理教)

(不謹慎ゲーム「上九一色村物語」より。出典は不明)
  • 入手難易度:★★★★★

  • 味:未知

  • 価格:未知

言わずと知れた無差別殺人集団です。この飲料は粉末ジュースの形で提供され、当時の信徒の間で日常的に親しまれていましたが、一連の事件の裁判が始まると、悪い意味で有名になってしまいます。

教団では1993年頃から「キリストのイニシエーション」と称し、サットヴァ・レモンに幻覚剤であるLSDを混ぜて信徒に説明無く服用させ、幻覚を見せることで神秘体験を捏造していたことが判明したのです(たまに勘違いされていますが、サットヴァ・レモン自体にLSDは含まれていません)。

当時から教団内でのみ提供されていたもので、非信徒の正規の手段での入手は不可能でしたが、こちらの元信徒の方と思われるブログでは、カネボウ(現クラシエ)がかつて販売していた「フルフル」という粉末ジュースをリパックしたものと説明されています。

(『スーパーモーニング』1995年7月27日放送より。第4サティアン内に無造作に置かれているサットヴァ・レモン)

ただ、現在はその「フルフル」も生産を終えているため、その味を知ることは永久に不可能…と思いきや、公安調査庁の2006年の報告書によると、後継団体Alephの施設内でサットヴァ・レモンが販売されていたそうで、その後の報告書にも度々「粉末飲料」が登場しています。

① 美濃加茂(本郷)施設は,「サットヴァレモン」と称する粉末ジュース類を製造する工場兼事務所及び信徒の居室
② 美濃加茂(関)施設は,「プラーナパワー」(水飴を材料にしたお菓子)と称する食品類の製造工場兼食材等の保管倉庫
としてそれぞれ使用されており,教団中央部署の一つである「食品製造部」(信徒用食品を製造する部署)及び「お供物発注担当」(信徒用食品を全国各施設に配送する部署)所属の信徒らが本郷施設に居住し,両施設において上記製造作業などに従事している実態が確認された。

立入検査の実施結果について(2006年7月13日)

野田施設は,教団主流派において,独自の手法で製造した粉末飲料等の食品を製造・保管する場所として使用されているほか,修行用衣服の縫製などを行う作業所としても使用されていることが改めて確認された。

立入検査の実施結果について(2011年4月26日)

「粉末飲料」は2011年の報告を最後に登場していませんが、もしかしたら現在も教団内に在庫があるのかもしれません(「独自の手法」もなんとなく気になります)。とはいえ、サットヴァ・レモン如きのために棒に振れるほど人生は安くないと思うので、別に無理して入手を試みる必要もないでしょう。

おわりに

なぜカルトは飲み物をつくるのでしょうか。量産が簡単だからです。そこには何か、人間普遍の感情が関係しているようにも感じます。

夏が来ると特に実感しますが、人間は何かを飲まなければ生きていけません。乾いた喉を潤すとき、飲んだものが喉を滑り落ちてゆくと、体中に霧散して浸透してゆくような感覚を受けます。そうした感覚は、多くの人にとって特別な感情を想起させていると思われます。

1978年に、カルト教団人民寺院の信者1000人弱が集団自殺をする事件があった際、メディアは、彼らが自殺のためにとった手段に注目しました。教団は信者に、毒薬入りの粉末ジュースを渡して飲ませていました。

ここからアメリカでは「思考停止」を意味する「クール・エイドを飲む」という慣用句が生まれます。クール・エイドは米国の代表的な粉末ジュースのブランド。服毒という行為に、死という結果以上の意味が内包されるようになったわけです(ちなみにクール・エイドの製造元は「他社製品も使われていました」とアピールしていたりします)。

陰謀論の世界においても、飲料(特に「水」)は重要な意味を持ちます。スタンリー・キューブリックの映画『博士の異常な愛情 または如何にして私は心配するのをやめて水爆を愛するようになったか』で、ソ連への核攻撃を命じるリッパー准将は「水道水にフッ素が添加されているのは米国人の体内エッセンスを破壊する共産主義者の工作である」という陰謀論に嵌っています。

この陰謀論はキューブリックや、脚本を書いたテリー・サザーンの創作ではなく、当時から米国の一部で流行していたもの(ジョン・バーチ・ソサエティなどが主に主張)で、現代でも根強い支持があります。最近では「水道水にコロナワクチンが混ぜられている」という進化版も時々見かけるようになっています。

古くから人類は、「飲む」という行為について神秘的な概念を結びつけがちでした。同じものを飲むということは、物質的なものだけでなく、そこに内包された精神性を共有し、共同体の一員になるという表明を意味する場合もあります。

筆者が飲んだ5つの飲料は、それ自体は単なる無害な飲み物でしかありませんが、その背景を知ってから口に含むと、単に情報を取り入れただけでは味わえない、「共同体」の存在を感じることが出来るような気がするのです。

要するに何が言いたいのかというと、参政党もオリジナルドリンクを作れということです。自然農法で栽培した橙ジュースとかどうですか?

◇今回のクイズ

Q.この飲み物を製造している団体の名前は?

ここから先は

493字 / 4画像

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?