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じゅんぐり論 [読書感想文] ワイルドサイドをほっつき歩け / ブレイディみかこ

毎週一回更新のつもりだったのに、早速一回すっぽかしたのは、深夜のイカゲームのせいでも私の三日坊主グセのせいでもなく、先週は親戚のおばあちゃんが亡くなり、お葬式に行っていたからなのです。
(どんなときでも毎日更新する人ほんとすごいです。尊敬します。)

お葬式のあった親戚は、「ドラマかよ」とツッコミたくなるほどの家庭内不和で、いざこざが多いのだけれど、子供たちはさすがなものです。はじめのうちは、なんとなく小さいながらにマウントとりたいのか高圧的な態度の子もいたりしたけど、そのうち収集つかないほどキャッキャと家中走り回り、帰る頃には別れが悲しすぎてお父さんのお腹に顔を埋めて悲嘆に暮れる始末。

よくある光景といえばそうなのですが、大人たちの事情なんて子供にとっては知ったこっちゃないわけで。とても微笑ましく皆の様子を眺めていました。

そんなとき、叔母がひとこと。

「じゅんぐりだね」

しみじみとつぶやきました。
要するに、生命力あふれる子供たちと亡くなっていったおばあちゃんのことです。老人が亡くなり、子供が生まれる。そうやって世界がずっと回っている、といういかにも当たり前のことを目の当たりにしたひと時だったように思います。

じゅんぐりといえば。

順当に行けば楽隠居できる年齢だけれど、社会情勢のせいでそうはいかず頑張って生きていたら、若者たちには疎まれるし、なんやかんやで『まだ人生という旅路にしがみつき、ワイルドサイドをよろよろとほっつき歩いている』おっさんたちのお話を、今週は読んでいました。


ワイルドサイドをほっつき歩け / ブレイディみかこ


面白かったし、感動もしたし、それからちょっと怖かったです。

以前どこかのメディアで、著者のブレイディみかこさんが、「日本のちょっとだけ未来がイギリスの現状」という趣旨のことを仰っていたように記憶しているのだけど、それだとほんとにホラーすぎます。

崩壊寸前のNHSとか、格差社会とか。日本でもコロナ禍でどうしても様々な場面で格差が広がったと言わざるをえないし、こんなところでも「じゅんぐり」している場合じゃねーよ、と虚しいツッコミが頭を駆け巡ります。

ともかく、本のなかでおっさんたちは戦っていました。
ただただ、「じゅんぐり」で終わっていくと分かっていながらも、どうしても悪あがきでも、人生を戦ってしまうのが人間なんだなあとひしひしと感じました。

そして頷けるのがこの一文。

理念と理念で対立し合う時代から、人と人が対話する時代へ ー中略ー そういうことが机上の理念でなくて本当に始まるのは、メディアでも学会でも議会でもなく、いつだって地べたである

対話が出来るというのは、結構奇跡なんじゃないかと思います。
対話のフリして理念を押し付けてくる人もいっぱいいるし。
だけど、その奇跡が起こるのはやっぱりミクロの世界というか。日常の些細なレベルの世界にあって、それにまず気づき、大切にするということです。


タイムリーなことにもうすぐ衆院選ですけど、この地べたのパワーが国会に届くといいな、なんて思っています。そして、この地べたレベルの対話に耳を傾けてくれる人たちに政治をお願いしたいものです。


もうちょっと上手くかけるようになりたい!
今日はこの辺で。

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