集患活動が重要な理由と患者確保の方法論

１．これからの病院経営において集患が重要とされる理由

２００９年から２０１８年にかけての入院医療の状況をみると、新規入院件数は増加しているものの、入院日数は短縮していることが分かります。
２つの指標から算出される延べ患者数（受診延日数）は緩やかに減少しており、これに伴い全国の病院数・病床数は減少を続けています。
過去と同じ入院件数を確保できたとしても、入院日数の短縮により稼働が落ちてしまうことが、これからの病院経営において集患が重要とされる理由です。

２．集患活動により入院患者を確保する方法は大きく分けて２つある

自院の外来患者が入院医療を必要とする状況に対応するだけでは、入院件数の大幅な増加は見込めません。重要なのは、現時点で自院と繋がりのない患者を確保することです。
厚生労働省の公開データを用いて分析を行ったところ、２０１６年から２０１７年にかけ入院件数が増加した病院の６４．５％で救急車搬送数が増えており、５５．８％で他院から紹介を受けた患者の入院件数が増加していました。
救急搬送数と紹介数の両方が増えている病院の８４．１％は病院全体の入院件数も伸びており、集患のためには救急車の受け入れと他院からの紹介が重要であることが分かります。

３．救急車の受け入れを増やす秘訣は救急隊からの要請を断らないこと

救急搬送における医療機関の受入れ状況等実態調査によると、２０１７年は救急搬送された重症患者の８４．９％が初回の照会先医療機関に受け入れられており、３回以内の照会で決まらないケースはわずか２．１％でした。
救急隊からの要請に対する医療機関の応需率は年々改善を続けています。救急隊からの要請を断ることは、限られた地域の医療需要を他院に奪われることを意味します。
理想的な対策としては受入体制の強化が挙げられますが、難しい場合はどのような状況であれば受け入れ可能であるかといった情報を地元の救急隊に向けて発信することが重要です。

【参考】上昇病院.ｃｏｍサイト内記事
事例１：他院が断る患者を積極的に受け入れることで経営が好転した松田病院の事例
https://www.jyo-sho-hospi.com/case/

４．紹介患者の確保には営業活動の実施と逆紹介の推進が有効

厚生労働省が行っている受療行動調査によると、入院患者が病院を選んだ理由として最も多い回答だったのが「医師による紹介」です。
救急患者を増やすためには人材確保と設備投資が要求されますが、紹介患者の確保はそれほどコストをかけずに実施できます。
紹介数を増やすためには営業活動と逆紹介が重要です。営業活動は相互補完関係になれることを説明する機会となり、逆紹介は利益相反がないことを証明する方法になります。

【参考】上昇病院.ｃｏｍサイト内記事
事例２：逆紹介の推進により紹介数を増やした佐賀県医療センター好生館の事例
https://www.jyo-sho-hospi.com/case/394/
事例３：地域連携室営業チームの訪問活動で紹介数を増やした大分岡病院の事例
https://www.jyo-sho-hospi.com/case/345/
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５．集患活動の成功確率を高めるためには入院経路の把握が必要

集患活動の成功確率を高めるために補足しておきたいのが、疾患毎の入院経路についてです。患者が入院するまでの流れは、疾患によって大きく異なります。
例えば、子宮頸がんなどを中心とするＭＤＣ１２（女性生殖器系疾患及び産褥期疾患・異常妊娠分娩）の疾患では予定入院が中心となりますが、ウィルス性・細菌性肺炎を中心とするＭＤＣ１５（新生児疾患、先天性奇形）は救急搬送との関連性が高い特徴があります。
下の図は疾患毎の入院件数増減と、その値を入院経路別（予定入院・救急搬送入院）に分けた相関係数を示したものです。入院件数の増減と相関の高い指標は疾患によって異なっていることが分かります。
ある診療科で上手くいった集患活動が、他の診療科では機能しない可能性を留意しておく必要があります。

６．自院の役割を明確にして集患コストを下げる意識も大事

今回のノートでは、集患活動の重要性とその方法論についてまとめました。こういった取組が機能しない病院では、これから徐々に稼働が落ちていくことが予測されます。
一方、個々の病院が集患活動に力を注ぐことは、患者獲得に必要なコストが増えることに繋がります。地域の医療ニーズが一定である以上、その中で競争原理が働くことは好ましくありません。
地域の医療資源を効率的に活用していくためにも、他の医療機関との協調によって自院の役割を明確にし、集患コストを下げていく意識が重要です。