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組織文化の育み方、繰り返すことの重要性 #LXアドカレは概念

こんにちは、LayerX CTOの@y_matsuwitterです。只今育休を頂いております。信頼できるチームに感謝です。

さて、昨日から組織文化などを中心としたテーマでLayerX Advent Calendar(概念)が再びスタートしています。初日はCEOの福島から"企業文化に投資する"というお話でした。

二日目となる本日は、少しメタな視点に立って、組織文化の育み方について書いてみたいと思います。ちなみに組織文化については過去下記の記事を中心にいくつか書いております。有料マガジンの記事ですが参考までに、しばらく無償公開しておきます。

組織文化って結局なんだっけ?

組織文化とはとても捉え所の無いものです。私達の文化はこれです、と表現することがありますし、あなたの会社の組織文化は?と言われてValueの話をするケースもあるでしょう。が、こういった言語化は一側面しか表現できていないことがしばしばです。私自身も、度々LayerXの文化とは?と聞かれてもこれだ、という一言ではいつも説明出来ていません。

これを日本文化、と置き換えてみるとどうでしょう。日本文化とは何?というのもまた難しい問いだと思います。ですが、個別の事柄に対する日本の文化圏に属する人の振る舞い、となると回答がある程度まとまってくるように思います。例えば主食としては何を食べる?と聞かれると平均的にはお米という答えになるのではないでしょうか。

このような組織内の平均的なリアクションの仕方、もっというとそれを生み出す組織内に共有された考え方・思考様式が、組織文化の話をする際の「文化」なのではないかと考えています。もう少し企業活動に沿って書いてみると、文化とは「一人ひとりが同じ傾向で意思決定できるための思考様式の共有」だと思っています。

LayerX羅針盤より

共通の思考様式はその組織のAgility、LayerX的には爆速を生み出す原動力となります。迷ったときに同じ方向に進めるような共通の思考様式を持っているという自覚は、
・自分の意思決定に対する自信と心理的安全性
・自律分散的で素早い意思決定
主にこの二つ、文化を共有する一人ひとりにもたらします。もちろんこれらは、コミュニケーション方法の工夫などHowの部分でもより改善できるものではあります。ですが、組織文化は多様な場面においても自発的な心理的安全性や自信を生み出すことができる数少ない要素です。共通の組織文化を有するスタートアップはそれだけでとても強い組織ではないかと思います。

文化を育む、とは

ところで、組織文化はとらえどころが無いもの、共有された思考様式と書きましたが、これらはどのように育まれていくのでしょうか。基本は企業のミッションやビジョン、存在意義を起点として、その達成に向けた課題構造の理解と戦略、それらを支える望ましい振る舞い方や組織のあり方という順に具体化されていく流れの中で生まれていくように感じています。

3年前に作成した組織改革資料より

もう少し具体的にしましょう。ミッションから実際の施策の間で我々は「なぜこの施策をやるのか、それは会社の意義やそれに対する望ましい振る舞いから考えてどう貢献するのか」といったような理由付け・解釈を行います。例えば、特定の顧客セグメントに集中する、という施策の背景には、自社の価値を最も理解して頂きやすい顧客から取り組んでいこう、などの考え方があったり、QCDS(品質・コスト・納期・スコープ)のうちDelivery(納期)を優先しようという背景には、より素早く顧客に価値を届けることを是とする行動指針があったりするでしょう。

こうした具体的な背景を解釈していくと、段々と「我々らしい振る舞い方・考え方」というものがおぼろげながら一人ひとりの頭の中に生まれていきます。このおぼろげな輪郭しかない共通の思考様式に対して言語化・記号化を行うと、他のメンバーにもその思考様式が生まれやすくなります。状況、行動、結果、解釈、言語化、共有を繰り返す中でより強固な共通の思考様式が生まれます。

思考様式をアップデートし続けるサイクル

こうした流れで組織文化は成長していくものだと考えています。ちなみにこのサイクルはOODAループとも類似しています。OODAループも、Orient、つまり方向付けの過程で重視する共通の思考様式を強化していく活動があるように思います。(ちなみに下記OODA LOOPは私の好きな本の一つです。)

繰り返しの重要性

このようにサイクルの中で段々と文化を構成する思考様式が生まれていくとすると、必然的に文化づくりという活動は繰り返しが重要であるというところに行き着きます。日々の行動や解釈、その言語化と共有から育まれていくわけですので、これを促進する活動を意識せねばなりません。特に、誰かが生み出したよりよい考え方を共有する言語化と共有の過程は組織が拡大するほどに重みを増していきます。

LayerXでは組織文化作りに投資することを重視しており、この目的の下、同じような内容でも繰り返し何度もインプットする、ということを意識的に行っています。特に、一つひとつの活動と背景、その成果と評価、なぜそのように評価するのか、という一連の繋がりをストーリー建てて伝えるということは、理解を促進する上で重要です。

また、文化は冒頭にも述べましたが捉え所がありません。なので複数の視点から光を当てて、具体的な行動や言葉から捉えていく必要があります。同じカテゴリの話であっても、様々な具体的ストーリーや例示を以て光を当てていくことでだんだんと全容を掴めていく、解像度が上がってくるものとなります。

ところで組織のValueの濫用という事態に陥るケースを相談されることもあるのですが、これはまさに繰り返しの不足によるものと考えています。言葉が意味するところは人により様々ですので、Valueを言語化しただけではその解釈にばらつきが出ます。繰り返し伝えることを通じて初めて同じ思考様式を共有し文化が生まれます。

さらに、文化はよりよい方向へ進化を続けていかねばなりません。外部環境の変化に追従できない組織はいつか滅びます。変化に強くなるためには、最高の文化を作って終わりではなく、最善の文化を常に追い求めることが大切です。今はソフトウェア全盛期の市場ですが、この先もそうとは限りません。もっとミクロには取り組んでいる市場の環境が技術や法の変化で激変することもしばしばです。このときに、より好ましい組織であるためにも文化を育むサイクルを繰り返し回し続けることが大切です。

ちなみにご存知の方も多いかもしれませんがLayerXでも、一度大きな事業方針転換を行っています。Blockchain事業からSaaS+Fintech事業という大きな転換を進める中で、段々と向かう先に合わせた文化へアップデートしています。

文化を育むには継続的な、兎に角しつこい、また同じ話かよ、と思われるレベルでの取り組み、特に言語化と共有のサイクルが求められてきます。繰り返し繰り返し少しずつあるべき組織文化を構成する様々な面に光をあてて姿を浮き彫りにし、一人ひとりに伝えていくことで段々と組織内に共通の思考様式が生まれそれが文化となるのです。

おすすめしたい取り組み

最後に、LayerXでの組織文化を育む具体的な取り組みについていくつか触れてみたいと思います。

先にも述べましたが、ストーリーとして何度も伝えていくことは、理解を促進する上で有用です。特にCxOなどリーダーによる文化の解釈と言語化は大事な取り組みとなります。そのため、LayerXでは毎週月曜、全社に向けた週次定例の冒頭10分でCEO/CTOが交代で隔週で様々な考え方にまつわる話をしています。そこでは具体的なビジネスモデルの解釈から、直近あった社内の取り組みと行動指針の関連にまつわるものまで様々な粒度で文化を育むに資する話をさせていただいています。

例えば過去、相反する事もありえる行動指針をどう捉えるのか、というテーマで話をさせていただき、その時は下記のようなブログにもしました。こうした解釈を伝えていく過程で、「私なら具体的にこう活動に活かしていけばよい」という理解を生み出せているように思います。

また、人事評価制度と1on1の中で、文化に沿った行動の称賛、フィードバックが行える仕組みを整えておくことも有用でしょう。よくある仕組みではありますが、組織のValue、LayerXでは行動指針に沿ったアクションを評価する人事評価の仕組みを整えています。1on1においても、マネージャが行動指針や羅針盤に沿ったフィードバックなども含め、1on1研修などを実施しています。1on1はより近いマネージャがそれまでの具体的な活動とそのフィードバックを通じて文化を育む重要な場です。自身に近い話が行われることで理解度は大きく上がります。

その他、小さなようで重要な施策が「方言を生み出す」というものです。特に多くの会社ではSlack等のチャットツールが導入されているかと思いますが、そのスタンプ等のリアクションを通じたフィードバックは強力なツールです。弊社ではHRの石黒さんがよく意識的にスタンプを付ける、ということをおっしゃっており、これはまさに文化を伝えていく活動だなと感じています。自社らしい反応の仕方、かつ行動指針などから見て好ましいフィードバックとなるものをスタンプなどを通じて整備しリーダーが積極的に活用・奨励していくことは、小さなフィードバックの集積によって多くの人に影響を与えていきます。

最後に、定期的なまとまった文書化は重要です。羅針盤がまさにこれです。文化は環境に合わせて変化し続けます。一定のタイミングでまとまった資料や言葉に落としこむことは、そのタイミング以降で入社するメンバーや、場合によっては潜在的な採用候補者へ文化を伝えるパッケージとなります。特に組織がスケールする際には、拠り所となるような資料を力を入れて作り込むことが役立つのではないかと思います。LayerX以外でも文化を伝えるためのパッケージづくりを行う組織をいくつか見たことがありますし、公開している企業もありますので参考までに見てみることをおすすめします。下記は今回公開させていただいた羅針盤です。

最後に

さて、ここまで組織文化とは何か、LayerXは如何に文化を育むことに向き合っているか具体的な取り組みを書いてきました。といっても、我々はまだまだ組織が拡大していく途上にあって十分な取り組みが出来ているとは思っていません。

さらに、文化をより洗練させていくためには、ここまで話してきたことに加えてもう一つ重要なことがあります。それが採用です。チームの文化にあった方に楽しく活躍していただくことが、更に文化を磨き上げていくため重要です。LayerXは、羅針盤を見て興味を持っていただけた方ならばおそらく楽しんで活躍できる組織だと思います。

様々なポジションで人を募集させていただいておりますが、どこが良いかわからない、応募の前にもっとカジュアルに話を聞きたいということも多いのではないかと思いますので、ぜひmeetyなどでお話をしましょう。


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