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【Lost Liner Notes】 ウェザー・リポート / ウェザー・リポート '81 (1981年)

Weather Report / Weather Report

これは1991年にリリースされたCDのために執筆したライナーノーツを加筆・訂正したものです。

1982年の1月(日本では2月)、ウェザー・リポート(以下WR)は、グループ結成11年目、11作目(東京でのライヴ・アルバムを含めると12作目)に、“新たなる10年”の始まりとして、デビュー・アルバムと同じグループ名をそのままタイトルにしたアルバム『Weather Report/ウェザー・リポート '81』をリリースした。当時ジョー・ザヴィヌル、ウェイン・ショーター、ジャコ・パストリアス、ピーター・アースキン、そして1980年からはそれにロバート(ボビー)・トーマスJr.が加わるという鉄壁のラインアップで『ミスター・ゴーン』『8:30』『ナイト・パッセージ』と立て続けに傑作アルバムを発表し、1978年、1980年、1981年の来日公演で圧倒的なライヴ・パフォーマンスを披露してくれた彼らにとっても、『Weather Report』というシンプルなタイトルに込められた意味は大きかったにちがいない。
この『ウェザー・リポート '81』を初めて聴いたときのことは今でもはっきりと覚えている。あまりにも完璧なそのサウンドから大きな感動を受けた一方で、ぼくの心の中ではひとつの不安がよぎっていた。“こんなすごいアルバムを作ってしまって、彼らにはこの先やることが残されているのだろうか?”.......そしてこのぼくの予感は残念ながら的中し、ジャコ、ピーターが相次いでグループを脱退していくことになる。1976年から続いた“奇跡のWR”もついに終驚を迎えたのである。
この頃のWR周辺の状況をもう一度整理しておこう。1981年に『ナイト・パッセージ』完成後、ジャコはセカンド・リーダー・アルバムにあたる“悪魔の傑作”『ワード・オブ・マウ ス』の制作に取りかかり、ソロ・アーティストとしての地盤をかため始めていた(様々な人の証言によると、この頃から“おかしくなる”徴候が出ていたらしい)。そしてピーターは、当時WRの拠点だったロサンゼルスからニューヨークに移って、ジャズ・ドラマーとしての修業を積みたいと考えるようになり、そのことをザヴィヌルに話している。そういった状況の中でレコーディングされたのがこの『ウェザー・リポート '81』だった。つまり5人のメンバー全員がこのフォーマットの“崩壊”を予感し、そういったギリギリのテンションに満ちた中でレコーディングされたのがこの作品だったということになる。そしてそのサウンドからもわかるように、彼らのテンションの高さは並大抵のものではない。のちにピーターは“ぼくがWRに参加して以来、こんなにグループのメンバーがエキサイトしたレコーディングはなかった”と語っている。そしてザヴィヌルは、このフォーマットによるWRのラスト・アルバムに、これまでの活動を総括する意味を含めて『Weather Report』というタイトルを付けた。彼は当時のインタヴューで“『ウェザー・リポート』から『ウェザー・リポート'81』まででひとつの区切りをつけたと考えてもらっていい。そして次のアルバムが新しいWRの1作目になる”と語っている。そしてWRはザヴィヌル、ショーター以外のメンバーを一新し、ヴィクター・ベイリー、オマー・ハキム、ホセ・ロッシーというヤング・ウェザー・リポーターたちと共に新しいディレクションへと進んでいくことになる。

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