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うちのこたつなんてない~こたつ記者の主張~

こたつ記者です。

こたつ記事を書くこたつ記者です。

うちにはこたつなんてありませんが、リビングの食卓でこたつ記事を書いています。

アラウンド80歳になっても自転車で取材に行く、新聞記者出身の実の父親にも、お正月に「取材もしないで書くのか? なにを? え…芸能? まあいいやよくわからん」と引き気味に言われました。

こたつ記事が何かというと、「記者、ライターが取材対象者に直接取材を行わず一次情報を元に執筆した文章」だそうです。 

取材した記事も書いておりますが、エンタメの速報記事や、テレビ番組の文字起こしなんかは、こたつ記事です。

「楽して書いている」と思われがちですが、取材記事とはまた別のテクニックが必要だったりします。

トピックスライターとこたつ記者の共通点

 7年前まで、私は某ポータルサイトの派遣社員をしており、トップページ編集チームのトピックスライターでした。

トピックスライターとは、簡単に言うと、電車の車内吊り広告づくりのような仕事。

 ルーティンワークとしては、毎日大量に流れ込んでいる記事に、「引きの良さそうな見出し」を付けて、随時紹介する作業です。

 こたつ記事を書く作業はある程度流れ作業で、自分の言葉で記事を書くというより、トピックスライターの編集作業に似ています。

 大量に溢れる「拡散して良いものとして世に出された情報」の中から、ユーザーが興味がありそうな記事をピックアップして、紹介する。場合によっては3行で説明する。

 退屈なルーティンだと思う方もおられそうですが、私にとってはかなりエキサイティングな業務でした。

こたつ記事はキュレーション記事

14年前、派遣社員として採用試験を受ける際に、「トピックスライターのイメージをまとめてきて」という課題が出されました。

 当時、たまたま父親が雑誌に書いた記事が、当該のサイトのニュース政治・経済カテゴリーのランキング上位に入っていたので、そのニュースの要点だけ切り貼りした画像を貼り付けて、

「情報溢れる現在でも、時間には限りがあります。忙しいあなたに変わって、ジャンルごとに、新鮮で美味しいネタだけを取り寄せておきました。

優秀な秘書が切り抜いたスクラップブックを眺めるように 読みやすく纏められた良質なニュースをさまざまな角度からお楽しみください」

 みたいなことを書いて挑みました。

面接で会話に詰まったら、「実はこの記事はうちのとうちゃんが~」的な小話のひとつでもしようかと……。

ちなみに、面接官だった上司は、後に姉の友人だということが発覚し、がぜん、居心地がよくなり出産前まで7年半居座りました。

いい大人が、とうちゃんが、ねえちゃんが、でもないだろう、と思いつつ、繋がるご縁は全力で利用したい無職のアラサーでした。

課題のデータも残してありますが、出来は、20代の未経験者ということもあり雑なものでした。でも、業務内容が「スクラップブック作りっぽい」という点は、こたつ記事にも通ずるものがあるかと。

なぜこたつ記事を書くのか? って、需要があるからです。

 「ちょっと記事読んでられないし、テレビ見てらんないから、短くまとめといて。興味があったら本編も見てみる」

 みたいなことを言ってくる、お客さまのために。

特定のテーマに基づいて情報を収集・整理してまとめたキュレーション記事的なものをまとめておく。と。

こたつ記事を書く醍醐味

 そして、ネットニュース記事は、媒体にもよりますが、すぐにPV(どれだけ読まれたか)が分かります。

自分が切り抜いてまとめたスクラップブックに需要がなかったら、社員なら翌日に、外部ライターなら翌週か翌月に白日のもとにさらされます。

なんならリアルタイムで自分で集計するのも業務のうちだったりするし、数字が悪いと「すべった」「使えないやつ」という自責の念に駆られたり、そんなことが続けば解雇される可能性すらあります。

だから、日々、SNSやツイッターや匿名掲示板をパトロールしたりして、その媒体の読者にとってのトレンドを分析しないといけない。

そこが、おもしろさでもあり、気を使うポイントです。

取材記事との違いは?

私に限っていいえば、取材記事よりこたつ記事のほうが、「受ける受けない」を気にして数字に一喜一憂します。

取材記事なら、そこまで神経質にはならない。

雑誌のWeb版でも、美容や医療の取材記事を書かせていただいていますが、そりゃPVは気になるけど、そっちは「取材した専門家の方の言葉を正確に分かりやすく伝達する」というのが主な業務なので。

その取材記事に需要があるかないかは編集部判断で、ネタ出しする場合はライターも「読者の興味を引くもの」を探す分析はもちろんしますが、PVをリアルタイムで見張るような真似はしません。

楽といえば楽ですが、例えば取材させていただく広報の方や専門家の方への配慮とか、気を使う面ももちろんあります。

で、私の場合は、ギャラは取材記事のほうがやや良い、感じです。しかしながら、こたつ記事のほうが、早く大量にこなせます。

分析したり集計する作業も

 こたつ記事は手早く量産できる反面、公式サイトやプレスリリースや過去ニュースの情報を追記したりして厚みをもたせる作業を行いながら、手早くリリースしなければ、遅れをとります。

ネタ出しの段階では、リアルタイムのトレンドの波を読んだりするのも、楽しくもあり、神経を使います。

PVを見る権限がある立場なら、どの配信先からの流入が多いのか、2ページ目まで読んでくれたのは何%なのか、どんなところで拡散されたのか、集計して傾向と対策をまとめたりするのも、業務のうちです。

やっぱりこたつ記事が好き!

そんなこんなで、どっちが楽かは、適性や好み次第ではないかと。

……個人的に、どっちが好きかというと……。

私が担当する媒体に限っては、こたつ記事のほうが、テンションはあがります。(好きな会社の媒体に書かせていただいているという要因もありますが)

ポータルサイト編集時代から、ツイッターのトレンドを眺めながら「よし! 行ける!」と判断する瞬間の高揚感や、PVを集計する(外部ライターなら集計したものを見せていただく)時のピリッとした緊張感が、好きです。

今は外部ライターなので参加はしていませんが、何故こけたか、何故刺さったか、を分析する会議も大好きです。

そうやって流行りを分析してPVをおいつつ、なるべく主観を入れず、正確に「一度世に出た情報」をわかりやすくまとめる、というのが、腕の見せどころだと思っております。

 あ、あと、タレントさんが喜んでくださると嬉しい。名もなき記者としては、RTしてくれたり、サイン入りの本を編集部に送ってくださった時は、テンションがあがりました。

そんなことをはげみにしながら、雪掻きとか落ち葉掃き的な感覚で、日々粛々と情報を集めて整えてる作業をこなしています。

#仕事のポリシー

 


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