あぁ、なんて儚くて無常なの
こんな今よりも昔はもっと幸せだった。
そう感じることって誰しもあることなのだ。
**めぐり逢いて 見しやそれとも **
わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな
《現代語訳》
久しぶりに巡り合ったのに
見たのがあなたかどうかも分からないうちに
帰ってしまった
(まるでそれはすぐに雲に隠れた夜中の月のように)
百人一首は久しぶりだ。最近はもっぱら更級日記だったから良い心機一転になる。そんなことはさておき。
今日紹介する歌は、みんな大好き?『源氏物語』の作者、紫式部が詠んだこの作品。中学でも高校でも少しは触れたことのある御人でありましょう。
そんな紫式部さん、どうやら煌びやかな宮廷での女房勤はなかなかうまくいってなかったようで…。この歌は紫式部が宿下がり(※)したときに久しぶりに幼馴染と再会をした後に詠んだ歌だと言われてるんです。
《語句解説》
めぐり逢ひて…
幼馴染と巡り逢ったことを言っている
見しやそれとも…
見たのが「それ」かどうかも、意味
「それ」とは幼馴染のことをさしている
わかぬ間に…
見分けがつかないうちに
雲隠れにし
雲に隠れてしまったことですが、幼馴染が見えなくなってしまったことも含んでいる
夜半の月…
「夜半(よは)」は夜中・夜更けの意味
かな…
詠嘆の終助詞
あっという間だったんだろうなぁ。だってその人かどうか確認できる前に帰っちゃったって詠んじゃうくらい時間が足りなかったんでしょう。ここでの久しぶりがいつぶりかは分からないですけど、時間が経てば周りの環境の変化とともに、人も変わっていく。一晩で語り明かすなんてできないですよね。
その思いを月に例えるのは今の人ではなかなかに難しいと思う。月はずっと丸いはずなのに、光の当たっている面で私たちは判断しがち。見えているところだけで、三日月だの半月だの言う。本質は変わらないはずなのに。ね。
だからきっと紫式部にも、その幼馴染にも小さい頃から変わらない部分はあったに違いない。ただ、時間が経ち、見えているところが昔と違えばなんだか違う人のように思えてくる部分もあったのだろう。
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