【雑感】2022/7/2 G大阪vs浦和(J1-第19節)
ガンバは3日前の広島戦から福岡、三浦、クォンギョンウォンの3バック+CH1枚がアンカー的に振舞う形でのビルドアップに変更し、上手くバランスが取れるようになっていました。また、非保持もプレッシングではガッツリ人を捕まえに行くことをトライし続けており、攻守両面で相手陣内でのプレー時間を意図的に増やしてきた中での対戦となりました。
まずはガンバのビルドアップvs浦和のプレッシングで見て行くと、先述の通りガンバは3CB+奥野の4枚で形成するビルドアップ隊に加えて、齊藤と石毛が左右のハーフレーンを上下することで浦和のSHに対して内側と外側両方の可能性を匂わすことが出来ていました。
浦和の方は江坂がアンカー役の奥野を押さえて明本が中央から外向きに追うことでガンバを左右分断したかったのだろうと思いますが、この時に齊藤や石毛が下りてきてサポートが入るので片側に追い込み切れずに脱出されてしまいます。
さらに、ハーフレーンで下りてサポートに入る相手を岩尾と柴戸が捕まえに行きますが、そもそもSHが名古屋戦で行ったような左右CBに対して縦スライドをする設定がなかったのか、配球力のある福岡とクォンが空きやすく、2'10~はクォンから、17'38~は福岡からそれぞれ浦和のCHがハーフレーンにいる相手に食いついたことで空いたスペースへボールを差し込んで前進しています。下は17'38~の図です。
前からボールを受けに下りる選手はいますが、その後の展開が逆サイドまで大きく振れば相手ゴール前に入る時間は少しかかるので、下りた選手の分が前方で不足するということは起こりにくかったです。それだけガンバの中盤の選手が良く走っていたということですが。
続いて浦和のビルドアップvsガンバのプレッシングですが、冒頭に書いたようにガンバが人を明確に捕まえに行くスタンスを取っていて、浦和はこれにまんまとハマってしまいました。
基本は坂本が岩尾、石毛と倉田がショルツと岩波に出て行って、後方まで下りてサポートに入る小泉にはクォンがしっかりついていくことで浦和の選手はなかなかフリーになることが出来ませんでした。特に倉田は岩波を見つつ、ビルドアップ隊を出入りする大畑にもついていきました。岩波はあまりポジションを動かすことが少ないので、倉田はそこをスタート位置にしてから大畑へ出ていくというイメージだったかもしれません。
ただ、人を意識する相手にはポジションを入れ替えて相手の目線を変えるというのが常套手段で、6'25は岩尾が岩波の左側に下りて大畑を外に開かせて大久保を内側に入れるローテーションを行い、倉田が大畑についていくために空いた齊藤とのゲートから前進に成功しています。
ここは観返すととても良い場面で、大久保がハーフレーンでターンして前向きになると中央へ運んで相手を引き付け、ガンバの中盤の脇を取った小泉を経由して大外(黒川の視野外)からハーフレーンの奥へ斜めに走りこんだ宮本を使ってマイナスのクロスを入れています。
ただ、この後はガンバにボールを持たれる時間が増えた結果、浦和のビルドアップの位置が自陣深くからになってしまい、ガンバからすればひっくり返されてもまだゴールまで距離があるので前に出ていきやすいし、浦和とすれば手前に引いて逃げ道を作るにしてもすぐにゴールラインがあるので作れる選択肢も限られてしまうので、なかなかポジション入替をする時間を作ることが出来ませんでした。
また、縦+横の2本のパスで捕まえに来る相手の背中を取って前向きな選手を作るようなアクションはしようとしたものの、前向きな選手からのパスがズレたり、前向きになってもそこで前に出ていかないことで相手が戻ってきてしまったり、意図した形で前進出来る回数はほとんど作れなかったと思います。
例えば前半ATの45'55には倉田が岩波へ出てから大畑への二度追いを敢行しますが、岩波からパスを受けた大畑はオープンな状態だったのでそのまま運んで倉田を完全に置き去りにして欲しい場面でした。倉田が大畑に追いついたときに画面の外から大久保が入ってきたので、大畑がオープンに持った時に大久保が手前に下りてきていたのかもしれません。
大久保が下りずに裏を狙って小野瀬を引き連れていけば大畑の前のスペースがもっと空いたかもしれないし、大畑がそこを運んで前進すれば、もしそのまま相手ゴールまで迫ることが出来なかったとしても、相手を自陣から追い返すことが出来るので、ビルドアップの次の手を打つための猶予を得ることが出来ます。
ボール前進から突破のフェーズに進めなかったとしても、相手のラインを1列でも超えることが出来れば、相手はそれに対応するために下がらざるを得なくなります。相手が後ろ向きに走ってくれれば自分たちの手前にスペースが生まれますし、これを積み重ねることで相手の走行距離を増やして体力を奪うことに繋がります。日程的に苦しいはずの相手に対してそれがなかなか出来なかったのは残念でした。
CKを東口にキャッチされた後に誰もその前を塞がず、ポンとボールを出されて、そこから一気に運ばれて、挙句失点、というちょうど4年前にどこかで観たような展開でしたが、さらにその次のCKの後も同じように東口にキャッチされ、誰も前を塞がずにボールを出され、という流れからもう一度ゴールネットを揺らされてしまいました。後者はオフサイドで助かりましたが、同じやられ方を立て続けにしてしまうのはいかがなものでしょうか。。
保持で相手のプレッシングを背負えない、前向きになってもパスがズレる、後ろでオープンに持てても前へ運べない、こうした悩みは人を変えることで対策しましたね。ハーフタイムで小泉、柴戸、宮本を下げて、モーベルグ、平野、酒井を入れました。
相手の特徴はある程度把握してこの試合に臨んでいるはずなので、特に小泉に対してはどういうプレーを期待してスタメンにしたのかが見えてこなかったのは残念でした。
また、岩波とショルツの位置を入れ替えましたが、これは岩波があまりポジション移動をしないので酒井が上下動するスペースを空きやすくすることと、広範囲にプレッシングする倉田に対してこちらも広範囲に動けるショルツをマッチアップさせることで大畑への二度追いを封じようとしたのではないかと想像します。
酒井とモーベルグはワンツーで抜け出そうとしたり、酒井が自分の前がオープンならそのままググっと運んで行ったり、手を打った右側に推進力が出てくるようにはなりました。しかし、後方でボールをオープンに持っても前線のアクションが少なかったり、前進してもパスやトラップがズレたりと、どうしてもチグハグする状況が続きました。
時間が経つにつれてガンバは疲労から最終ラインを上げられなくなっていって、浦和が敵陣に押し込む場面が増えました。そして、66分には岩波を下げて松尾投入、代わりに誰かを最終ラインに落とすことはせずCBショルツとSB酒井、大畑の3バックというファイアーフォーメーションを敢行。撤退守備になる場面はあまりなかったですが、そうした時には岩尾が最終ラインに入ることでバランスはとっていましたね。
交代で入った松尾は相手の疲労度合いとのかみ合わせもあって、前を向けたら積極的にドリブルを仕掛けていきました。ただ、徐々にスペースが広がっていく中でも対大久保、対モーベルグではガンバ側が確実に左足を切っていたので、押し込んでボールを持てるし、ペナルティエリアに侵入できる回数自体は増えたものの、相手を外してシュートコースが空くような場面はほとんど生まれませんでした。
定例会見でも話題に上がったように、リーグ上位にランクする浦和のゴール期待値(xG)を鵜呑みに出来ないというか、数値の内訳は気にした方が良いだろうというのが良く分かる展開だったのではないでしょうか。
最終盤にとうとう三浦が我慢しきれずに松尾の足を引っかけてPKを獲得し、ショルツが見事なコースに見事なスピードでボールを流し込んでなんとか同点に追いついて勝ち点1は獲ることが出来ました。
今年のJ1全体の傾向として、これまでの「上手さ」「強さ」で言えば「上手さ」の方に重きを置くチームが減ってきて、球際の部分に象徴される「強さ」を強調するチームが増えている中で、浦和は引き続き「上手さ」の方に重きを置いています。
だからといって、この試合のようにしっかり人を意識して潰しに来る相手に対して、それをはねのけられない状況が続いているのは気がかりです。理不尽なCFがいないのであれば対浦和だけはマンツーマンでプレッシングすれば良いっしょという考えを持たれてもおかしくありません。これは昨年で言えば10月の神戸戦であったり、今年の春先の鳥栖戦であったり、同じようなやり方に同じようにやられ続けています。
それに対するトライとして縦パスを受けた選手がターンできないとしてもすぐに横サポートに入ることで3人目が前向きになろうとはしています。9'06~のゴールキックからのビルドアップで相手にはめられてボールを失った場面もショルツからの縦パスを受けた小泉に対して柴戸が横サポートに入っていて、柴戸は前向きにボールを持てたものの江坂へのパスをカットされてしまいました。
その位置にいられることは増えているものの、そこでボールを受ける、ボールを出す、次の場所へ走る、といったことがまだまだ足りません。成人の選手がどれくらいのスピードでこの技術を伸ばせるのか、そもそも伸びしろはどのくらいあるのか、というのは分かりませんが、やらないと一生できるようにならないのでやってもらうしかありません。
ブレイクスルーが来そうで来ないもどかしさがずっと続いていますし、そんな中で厳しい内容の試合を観てしまうとガッカリ感も強くなってきますが、足りていない部分は明確に分かっているのですから、そこに真摯に向き合って克服してもらうべくサポートを続けていきたいですね。
今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。