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【雑感】2023/10/20 J1-第30節 浦和vs柏

序盤の関根の負傷交代というアクシデントから始まって、停滞感のある前半を過ごしながらも、ハーフタイムの選手交代から後半にグッとプレーが改善されたのは監督を筆頭にコーチングスタッフの優秀さが見えた試合だったと思います。


柏は非保持では4-4-2の配置を出来るだけ崩さず、2トップが中を閉めながらボール保持者へ出て行く、SHは内側を絞りつつ相手を外回りにさせる、というイメージでしっかりとした守備対応だったと思います。特に前半は、浦和のボール前進を外回りにさせる中でSH-CHの間を通されることがあってもCHやDFが内側から寄せることでピッチの中央へボールが入ることはほとんどなかった印象です。

浦和の方は2CBに加えて岩尾がアンカーの位置にいるか、岩尾が下りて敦樹がアンカーの位置に入るか、あるいは敦樹と小泉が並ぶかという具合に2-1、3-1、3-2と形を変えながらボール前進を試みてはいました。ただ、柏の
2トップがアンカーや下りた岩尾の方から外側に開いたショルツやホイブラーテンへ寄せていて、そこからの選択肢はそのままハーフレーンを縦に刺すか、SHの脇へボールを出させるか、いずれにしても4-4のブロックの外側へ絞られるような状態になっていました。

浦和がビルドアップする時に、ヘソの位置にいる選手が1枚の時は2トップのゲート上から2FW-2CHのボックスの中央に立つことが多く、そうなると2トップ脇から運ぶ選手に対して角度がつきにくいだけでなく、ボールと逆側の相手が背中に張り付いた状態になりやすいのでボールを受けてもボールが来た方向にしかプレーしにくくなります。

「相手の間に立つ」ということは大事ですが、そこに立つことだけでなく、「ボールを受けてプレーをした時に相手の間にいられるようにする」ということも大事になります。前半はヘソの位置の選手が相手の間に立っていたからこそプレーが難しくなったのではないかと思います。


20'55~のショルツが2トップ脇から運んでハーフレーンの大久保へ縦パスを刺してそこから前に出た酒井へ繋いで前進した場面も、ボール自体は前に進んでいるものの、柏のチームとして出している矢印に沿っています。そうすると、ボールは前に進んでもゴールへたどり着くまでの間に相手が何度もカバーしあえる関係が崩れにくいです。

この場面でヘソの位置にいたのは敦樹ですが、2FW-2CHのボックスの中央にいることでショルツからボールを受けたとしてもターンすると背中に山田がいて詰まってしまうので、柏の4-4-2の組織の内側を通して逆サイドまで展開することは難しくなります。


ハーフタイムで興梠に代えて安居を入れて、特に2点取るまでの間はビルドアップでは岩尾の相方はほぼ安居になっていました。さらに、左SHになった小泉も含めて、誰かが前に出れば誰かが後ろをカバーするという関係性が良くなったと思います。また、SHのスタート位置も前半よりは少し下がり目でSHの矢印を引き受けさせやすくなったように見えました。

この修正の効果が早速現れたのが46'20~の場面だったと思います。左手前で荻原へボールが入った時に戸嶋が出した矢印の根元を小泉が取りに行っています。さらに、小泉はFW-CHのゲート上でボールを受けて、そこからターンすることで相手の間にいる状態になっています。

小泉が横ターンして逆サイドへ展開することによって柏はチーム全体として出した矢印の逆を取られることになるので、元々ボールサイドにいた選手がスライドしないといけない距離が長くなり、対応が間に合いにくくなります。

この場面はショルツからの縦パスを受けた大久保がオフサイドだったため、その後どうなったかを見ることは出来ませんが、大久保が酒井にボールを落としたときには少なくとも戸嶋は守備対応に参加できず、椎橋も少し距離がある状態です。

後半の入り方に成功したことで相手陣内でプレーできるようになり、その流れのまま先制することが出来ました。先制点は大久保の腰をひねってジエゴと古賀を置き去りにしたパスが素晴らしかったですね。そして、一番ゴールに近い場所に髙橋が走り込んだことも良かったです。彼が突っ込んだから柏のDFが2枚引き付けられたわけで、こぼれてきたボールを小泉がシュートするスペースが生まれました。

昨季もそうでしたが「9番」というか、ゴールに一番近い所へ最初にアクションを起こせる選手がいないということが課題でした。夏に明本を前線で起用した時にはこの課題に対する解決策のように思われましたが負傷離脱してしまいました。ここに来てその役割を果たせる髙橋がチームの中で信頼を勝ち取ってきていることはとてもポジティブなことですね。彼らのような「とにかく走る」が出来る選手がいるからこそ2列目の上手な選手が引き立つわけで。


前半のようにボールを逆サイドへ回すときも一旦最後尾へバックパスしてU字で展開していくと、バックパスに合わせて相手はラインを上げることが出来ますし、浦和の選手もそれに合わせてポジションを自陣側へ戻すことになります。

そうすると、次に縦パスが入る時には後ろ向きのパワーがある状態でボールを受けるのでその後すぐに前を向いてパワーを出し直すことは難しいですし、ポジションを下げた分だけ前から人がいなくなりやすいです。

ハーフタイム明けのように相手の組織の内側を通って逆サイドまでボールを展開できると相手はラインアップすることが難しい上に、自分たちは後ろ向きのパワーを出さずに次のプレーへ移行するので前に人が残った状態で前へのパワーを出しやすくなります。前半の停滞を一気に解消させたこの交代策は見事でした。


また、2点目は大久保の強みが発揮されたものだったと思います。右のハーフレーンで左利きの選手が縦パスを受けるときに利き足は相手ゴールから遠い方になるので自然にプレーする(利き足である左足でトラップする)と、プレスバックしてくる相手に近い方にボールを置くことになるので一旦相手よりも自陣側に逃げるか、外側に向かってターンするかのどちらかになりやすいと思います。

ただ、この場面では大久保は右足でボールを受けて体の真下にボールを置いています。それによってボールを相手から遠ざけるだけでなく、すぐに左足で中へ向かってドリブルを開始することが出来ています。大久保は体の真下にボールを止めることが上手いのでターンに必要なスペースが小さく済むだけでなく、右足で止めてもすぐに左足でプレーし直せるのが強みの一つだと思います。それだけでなく、ボールを受けるときにボールに対して正対するのではなく、ボールを次にプレーする方向が視野に入るように半身の状態で待てるのも良いポイント。

そして、このゴールの場面は大久保がドリブルをしている間も髙橋が絶えず古賀と立田の間からゴール前のスペースを狙い続けたことで両CBを引き付けて大久保が侵入するための花道が作られたことも見逃せませんね。


柏は保持では左上がりの3-4-2-1のような配置になっていたものの、前半の浦和と同様に相手の組織の内側でボールを持って矢印の逆を取るプレーがほとんどありませんでした。

なのでサイドの高い位置からクロスを上げたり、SBの背後を取ってそのカバーに来たCBを引き出すことは出来ていたものの、浦和の方は選手間の距離が保たれたままプレーしていたので、ホイブラーテンの出たスペースを岩尾が下りて埋めることでクロスを弾き返すというのが何度もありました。

浦和の非保持の強みは簡単には組織の内側にボールを入れさせない、ボールが入ってきたとしても逆サイドの選手のスライドでボールをもとのサイドへ押し返す、というのが再現性高く出来ることだと思います。なのでクロスが入ってきてもCBやそのカバーに入った選手が待ち構えた状態で対応できていることが多いです。


さて、この試合で勝ったとは言え、リーグ優勝するためには残り試合を全勝した上でどうなるかという立場であることには変わりません。次はアウェーでの鹿島戦、そしてその次がホームでの神戸戦です。ここでしっかり勝ち続けることで初めて本当に優勝を争える状態になれると思います。

ただ、まずはその前に中3日でのACLのGS首位通過のライバルになるであろう浦項とのホームゲームですね。ここで勝つかどうかでACLの雲行きも大きく変わると思います。

終盤での過密日程は強いチームにのみ与えられた勲章です。今季の残り試合はリーグ、ルヴァン杯、ACL、CWCを合わせて最大で12試合あります。この状況を楽しみながら全勝出来るように頑張りましょう。

今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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