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規制が無ければどんどん運べる(2021/6/23 柏vs浦和)

ショッキングな敗戦から中2日で、体力あるいは心に疲労の残っている選手を外して、スタメンを9人入れ替えた試合でした(と書いている間に彩艶の欠場は違うところにも理由があったことを知りましたが)。

シュートの場面はほぼ決定機だったともいますが、前線の選手たちがそれをことごとく外したものの、宇賀神と柴戸という意外な2人が決めてくれました。チャンスの数や試合全体の内容からすれば妥当な結果、あるいはもう少し楽に勝ち点3を取れても良かったかなと思える試合でしたかね。公式HPの記事で知りましたがアウェイ柏戦での勝利は2016年以来なんですね。


柏は前節の広島戦では攻撃は4-4-2、守備では広島の3-4-3の陣形に嵌めるように3-4-3で並んでいましたが、浦和が2-3-5あるいは3-2-5で行うビルドアップに対して4-4-2でそのまま対峙しました。これによって浦和は相手の1stラインはあっさり越えることが出来、その先でどう突破していくかということだけが問われることになりました。


4月の鹿島戦で4-1-4-1を採用したあたりから、柴戸が出場するときは彼をアンカーに固定することが多かったですが、前節の終盤に柴戸が金子に代わって入った時もそうだったように、2ボランチはポジションを固定することなく流動的に相手を見てポジションを取っていました。出ている選手が同じでも、相手によってバリエーションを持てるようになってきているのかなと感じます。

ビルドアップの基本形はデンを右側に置くところだけは固定して、岩波、柴戸、敦樹は2トップの間や脇をポジションを入れ替えながら使い、2トップの脇に入った選手がドリブルで運んで越えていくシーンが何度も見られました。

また、2トップの間や前でボールを持つ柴戸と岩波はその場で止まって相手を引き付けてから脇に立つ選手へパスを送っており、これもまた2トップ脇に立つ選手が運んでいくためのお膳立てにもなっていました。焦らず、止まって相手を引き付けることが出来るようになっているのは大きな進歩だと思います。

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浦和のこの並び方は一般的にも対4-4-2の常套手段になりつつあるものだと思いますが、柏がこれに対して明確なプレッシングを設定していなかったように見えます。少なくとも2トップは中央を使わせないようにするという程度の役割でプレッシングに出て行く回数はほとんどなかったように思います。

SHについては、右のクリスティアーノは自分のポジションで構えていることが多く、浦和が侵入しようとしてきたところでボランチにドッジとヒシャルジソンというボールを刈り取る力を発揮する選手がいるので、彼らの能力を活かしたいという思いはあったのかなと想像はします。

左SHの瀬川は何度か外側で低めの位置にいる宇賀神へプレッシングへ出ていくことがありましたが、27'40には瀬川が宇賀神まで出ようとした背後のスペースへ武藤が入り、デンがそれを逃さずに強いパスを出しています。ここから武藤が興梠へ浮き球のパス、興梠の落としを汰木がシュートという決定機になりました。

最終ラインで確実に前を向いてボールを持てる状況かつ、相手を動かせるポジショニングを取ったことで、相手のアクションに対して後出しじゃんけんの選択をすることが出来た場面でした。


前半の飲水タイムになるまでは、柏の中盤ラインより前に関根や汰木だけでなく興梠や武藤が下りてくることが何度もあり、柏の方は先述の通り2トップによるプレッシングはほとんどせずに入ってきたところを潰しにかかろうとしていたため、自分の前に浦和の選手がわざわざ出てきてくれるのは好都合だったと思います。8'25に武藤がドッジにボールを奪われたりしたのはその象徴的なシーンだったのかなと。そのため、最初の25分間については五分五分の展開とも言っても良いのかなと思いました。

柏は4-4-2のままか、ヒシャルジソンが最終ラインに下りながらビルドアップをしますが、プレッシングを受けたら割と早めに前線へ蹴り出していました。主な出し先としてはアンジェロッティがデンと競ろうとしたり、クリスティアーノが山中と競ったりということで、浦和の4バックと柏の2トップ+両SHのマッチアップの中で、どこなら勝てそうかな考えればそこの2か所だろうなと思うので、競り勝てる、あるいは跳ね返されない場所にロングボールを入れて、そこへすぐにサポートするというのが共有されていたのだろうと思います。

ただ、飲水タイム以降、特に興梠の下りて行く回数が減って、むしろ裏を狙おうとする意識が強くなったように見えましたが、そうして柏の中盤が前向きなアクションを起こす場面が作りにくくなって浦和のボール保持の安定が増していくと、柏がボールを拾ってもすぐに浦和は配置バランスが良い状態から早く寄せることが出来ていたため、なかなか前にボールを出せなくなったり、出せても浦和の方が先に対応できていたりと、序盤で柏が掴みかけていたボール前進の方法は出せなくなっていきました。

加えて、浦和の保持が安定すればするほど最終ラインから山中までのロングボールが面白いように届き、山中からのクロスやMFとDFの間を斜めに貫こうとする鋭いパスが出始めます。左SBが明本ではなく山中だからこそ、彼のキックを活かしてチャンスを作ろうと出来ていましたし、それを活かせるようなポジショニングを汰木が出来ていたのは非常に良かったと思います。


決定機は作れるもののなかなかゴールまでは至らないという時間が続いて60分にユンカーと小泉を投入。ただ、この日はユンカーの日ではなかったみたいですね。投入直後や佐々木のキックが小泉に当たったところの決定機など、ここまでのユンカーなら決めていそうな場面でも、この試合ではゴールに出来ませんでした。

小泉については、投入直後にペナルティエリアの角からバックステップで相手との距離を取ると、右足でトラップして左足で敦樹に壁パスを返したり、62'47にこぼれ球を上手く懐にボールを入れてキープしてから山中へパスを送り、そこから宇賀神の素晴らしいゴールが生まれたりと、入って3分ではっきりと違いを見せつけてしまいました。


浦和の方が前半から何度も大外の山中を使う攻撃を見せていながら、柏がそこへの処置としてCBの山下を入れて3-4-3へ陣形を変えたのが結果的には浦和の先制の直後になってしまいました。この後から浦和のビルドアップに対して人でハメやすくなって、ボールを奪うまでは行かなくても柏にとって怖いエリアにボールが入る回数は減りました。

そればかりか、浦和の守備は4-4-2なので、3-4-3で立てばそのまま配置にズレが生まれてボールを運びやすくなりますし、84'10は正にそのズレの恩恵を受けて浦和のプレッシングを突破しています。関根が左CBの大南へ出たことによってWBになった古賀が空いたため、大南→戸嶋→古賀→瀬川→追い越して前に出た大南とパスが繋がっています。ハーフレーンの戸嶋と瀬川は浦和の選手に寄せられているもののワンタッチでボールをはたくことで潰されずにパスをつなぐことが出来ています。

噛み合わせの具合で試合の流れを掴もうとすることが多いネルシーニョ監督にしては、嚙み合わせの悪さによって上手くいかない状況を63分まで放置していたのは少し意外でした。もしかしたら、試合前のアップで仲間が負傷して瀬川にスタメンが変わったことで、出ている選手で出来ることというのが変わったのかもしれません。

ただ、瀬川も以前はSBもやったことがあったりしたので、WBとして考えられていないのか?という疑問はあります。柏を継続的に見ているわけではないので、柏サポの方は心当たりがあるのかもしれませんが。



さて、この試合のビルドアップで一番良かったシーンとして記録しておきたいのは33'10~の場面ですかね。是非、DAZNで観返しましょう。

関根からのボールをフリーで受けた岩波はクリスティアーノの方へ向かってドリブルを開始。クリスティアーノは自分の方へ向かって運んでくるので迂闊に動くことが出来ずその場に留まって構えて、クリスティアーノの奥には山中がいるので峻希はそちらへのパスを警戒して外側へ動きます。ヒシャルジソンがスライドを完了させクリスティアーノのサポートに入りますが、後ろにいる興梠が下りる動きを見せたところでサイドステップをしています(興梠の動きを感じて動いたのか、後ろから声がかかったのかは分かりませんが)。

さらに、この興梠の下りる動きに高橋もつられていたので、クリスティアーノとヒシャルジソンのゲートが広がり、さらにその奥の汰木がフリーになった瞬間に岩波から縦パス。汰木はターンして前向きになると興梠へめがけてパスをしますが、残念ながら興梠のかかとに当たってしまい決定機まではいきませんでした。

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決定機まではいかなかったものの、この一連の岩波のアクションは本当に良いプレーだったと思います。槙野と出る時には右CBがほとんどで、景色というかボールを持った時に使える角度が違うので同じようなプレーが出来ないこともまだありますが、彼が成長しているというを感じるには十分な場面だったと思います。

また、得点になったのは結局ユンカーと小泉が入ってからでしたが、その前にも決定機は何度かあったわけで、興梠と武藤も決して悪い出来だったとは思いません。勿論、得点という分かりやすい結果が出ていれば、評価が寄りしやすかったのだろうとは思いますが、チーム全体としてこのくらいの規制の相手であればチャンスは何度も作れるというのは自信にして良いと思います。


良い内容かつ、相手がそれへの対抗策をほとんど繰り出してこなかったので、取り立てて文章に表すようなことは少なかったかなと思います。ただ、次は5月に痛い目を見た福岡との対戦です。

明確なプレッシングとゴール前の守備、そこから攻撃へ転じるスムーズさは前回対戦でも見られましたし、あれからもそのスタイルが落ちることなく結果が出続けているので非常に楽しみな試合になります。

いよいよリーグ戦の1巡目が終わって、19試合で勝ち点31なので、1試合平均の勝ち点が1.6。例年の34試合であれば勝ち点54くらいのペースなので、そう考えるとリカルドや強化部が目指しているACL圏内(ここ数年だと勝ち点60ちょっとが目安)にはまだ足りないですね。

ここからは前回対戦を踏まえての戦いになります。個人的にリーグ戦は2巡目になってからの方が駆け引きの要素が増えてきて面白さが倍増すると思っていますし、課題に対する回答を用意できるのがリカルドの良さなので、ここからチームがどのように成長していくのかだけでなく、リカルドが前回対戦から何を感じて、どう対抗策を打っていくのか、しっかりと観て行きたいですね。


今回も駄文にお付き合いいただきありがとうございました。

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