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【雑感】2023/8/18 J1-第24節 浦和vs名古屋

ナイトゲームにも関わらず30度を超えて湿度も高いという厳しい気候環境での試合だった上に、後半はほとんどの時間を自陣の深い位置で過ごすことになったのでかなり体力的にダメージがあったと思います。

それでも結果だけは掴み取ったということ、試合終盤はスタジアム全体が腹を括って結果を掴み取りに行ったことというのは、この試合がリーグ戦の残り試合の意味づけを大きく左右するものだったことを多くの人が理解していたということだと思います。ここでひとまず踏みとどまれたということは良かったですね。


前半はどちらかというと浦和の方が名古屋の人を捕まえに来るプレッシングに対してポジショニングを調整しながらボール前進しようとしているように見えました。名古屋は5-2-3の形がベースなので、浦和が4-1-2-3のような形になるとスタートポジションがそのまま噛み合う状態になります。一旦それを図で整理しておきます。

浦和は非保持は4-4-2ですが、保持では岩尾がアンカー役になり、久しぶりの出場となった小泉と敦樹がIH化することで4-1-2-3のような形になるのはお馴染みです。ただ、IHが2枚いる中でも小泉がより下がり目で岩尾の脇まで下りることもある、敦樹は前目で右側だけでなく左側のハーフレーン付近まで移動する、というところがこれまでの試合とは少し違うポイントかなと思います。

トップ下については出来るだけ前でプレーすることを求められているというのはキャンプ段階から言われていたことで、小泉の特性とのギャップについて周囲も本人も懸念していましたが、この試合でのタスクは彼にあったものだったように感じます。


左は小泉が下りることで空いた中央のスペースにSHの関根が絞ってきて、むしろ関根がトップ下のように振舞う、そして外側は明本が出て行くというローテーションのような形が多かったです。小泉が下りることで稲垣が引き出せればそのスペースへ関根かカンテが入ってきてロングボールを当てて、そこでボールを後ろへ擦らすことが出来れば一気にプレッシングをひっくり返すことが出来ます。

29'40~西川から関根にロングボールを入れて、関根と競るために藤井が出てくるので、関根が先に触ってボールを流すと藤井がいなくなったスペースに敦樹が飛び出して行きました。


そして、右サイドは酒井がショルツの脇あたりまで引くことで森下から距離を取ってオープンにボールを持ち、森下が遅れて出てきたことで空いたスペースへ大久保が入り、大久保に対応するためにズレる河面が元々いたポジションへ誰かが出て行く、という形を目指していたのかなと思います。

11'40~は河面がいなくなったポジションへカンテが流れて行って酒井から直接ボールが出ており、15'30~は酒井から森下の背中を取った大久保へパスが出ると河面が遅れて寄せてきたことでイエローカードを出させています。

ただ、こうしてズレを作ってボールを前進させたものの、名古屋の選手たちは自分の担当にしっかりついていくのでフリーな状態は長続きしないのと、そこで1vs1を外して突破できるほどの力量差は無かったのでチャンス自体はあまり増えなかった印象です。

カンテのゴール以外のチャンスで言うと、シュートブロックなどからコーナーキックを得ることはあって、その中で小泉のシュートが内田にギリギリで阻まれたというシーンくらいだったと思います。

これは前節のカンテのゴールの時の明本のようにボールを持っている選手を追い越したりする選手が前線にいなかった影響もあるかもしれません。明本はこの試合ではSBだったので、相手ゴール前に入っていくには時間がかかりますし、カンテ、関根、大久保あたりも自分が1人目でのアクションを起こすタイプの選手ではないですからね。


フットボールは「何もしない」という選択が出来る競技なので、相手ゴールに向かわない、相手ボールに向かわないということもルールの中で許容されています。なので、周りの変化に合わせてプレーをする選手ばかりになると何も起きない状況が発生する可能性があります。

だからこそ、周りがどうこうではなくて自分がどう動くのかという部分に集中できる、それを愚直に繰り返すことが出来る選手が必要で、最初の1手があると何かしらの変化は起きるので、それに合わせて周りの選手が判断できるようになっていくこともあるはずです。

これはこの試合の雑感という文脈の中で書くことでは無いのですが、浦和はフットボール本部を作って、自分たちの中での評価基準をもって選手を獲得してきた結果として前線には「周りの変化に合わせてプレー出来る選手」ばかりになっていることは大きな課題だと思います。

本人のボール扱いの技術や精神的な実力があるというのは勿論ですが、早川が重宝されているのは明本と同じように「まず自分から動くプレーが出来る選手」だからなのだろうと思います。

フットボール本部体制について、土田SDと西野TDのキャラクターやフットボール観の違いはあるように見えますが、それも組織でやっている以上必要だと思っています。補強も土田SD主導っぽいものと西野TD主導っぽいものがありますが、大切なのは色んなことが出来るチームなることであって、似ている選手ばかりになってしまうと、相手からすれば人が変わってもやってくることは変わらないから対策しやすくなってしまいます。

もう今季の補強期間は終わってしまったので選手補強について何か言っても仕方ありませんが、そうしたキャラクターの幅が増えるような選手補強をしてくれると良いなと思います。ただ、無闇にいろんな選手を連れてきてしまってはチームとしての軸がなくなってしまうので、その軸がブレない範囲でという塩梅が難しいのですが。


話を試合に戻します。

浦和の非保持は4-4-2がベースではあるものの2トップが縦関係になって左右どちらもSHとSBが縦スライドしていくというのが共有事項としてあったように見えました。

噛み合わせの話で言えば3-4-2-1と4-4-2はズレが出来やすいので、それを解消するためには守備側のアクションが必要です。カンテ、小泉が中央に立った状態から、関根、大久保が藤井、河面に対して縦スライドして、野上、森下のところには明本、酒井が出て行くというのが多かったです。

明本、酒井が縦方向から出て行くので野上、森下のパスコースは内側になりやすく、そのまま内側にボールが出てくればCBかCHのところで回収できるという展開は何度も作れていました。


ただ、39'08~のように浦和がSH、SBを縦スライドさせた背後のスペースへシャドーの選手が流れて行って、そこへ直接ボールを出すという場面が次第に増えていきました。

ハーフタイムで名古屋は酒井を下げて前田を入れたことでCFに永井を移しています。54'00~の名古屋の決定機は浦和の守備ブロックが整っていなかったという点もありますが、CFの永井がショルツとホイブラーテンの間に飛び出して行こうとするアクションがあって、これによってDFとMFの間が広がって、そこへ野上が流し込んでいます。

この辺りで一気に試合は名古屋攻勢、浦和守勢に傾いていった印象です。前半のように名古屋のビルドアップに対してSH、SBを縦スライドするのではなく、大久保がWB化して酒井の脇まで下りることで幅を使われてホイブラーテンを引き出されても最終ラインの人数を確保する、酒井に中央でのクロス対応をしやすくするように変わっています。

後ろに5枚を割いた上で前向きなアクションが起きない展開になれば、ボールを「奪う」という局面は作りにくく、ボールを「拾う」ことが出来た時にチームとしての矢印が前に向いていない状態です。何度も大久保が長い距離を運んでも、なかなか周りの選手がついていけなくて、それによってボール周辺で数的不利になってしまってボールを取り上げられてしまう、そうすると再び自陣にボールが返ってくる、という悪循環が続きました。

64分に関根を下げて荻原を投入し明本を1列前にすることで非保持での前向きなアクションを取り戻そうとしたのかなと思いますが奏功せず、次の交代は77分の飲水タイム明けまで引っ張りました。結果的には最後まで無失点で切り抜けることは出来たので、カードの切り方は正しかったのかもしれませんが、見ている時には「このままあと30分もサンドバッグになるのはしんどすぎないか?」と不安になっていました。


試合後のDAZNのインタビューでスコルジャ監督は「フィジカル面でチームとしてベストな時ではないので、賢く、しっかり組織された守備でプレーをした」という言い方をしました。

フィジカルについての状況は外からは分かりませんが、前節、前のめりになったところを裏返されて失点したこと、チームとしてはアルヒラル戦のように大久保を落として5-3-2、5-4-1のような形になっても耐え切れたという成功体験が相まって、下手に前に出るよりも耐えるという方向に舵を切ったのかもしれません。

87分、名古屋のCKが始まるところでの「We are Reds」と「Pride of URAWA」はスタジアム全体が今日はこの方向で勝ち切るんだという風に腹を括ったように感じました。最後には岩波を入れて完全に5バックにしたというのも、あくまでも4-4-2からの変化の中で対応を続けてきた現体制の於いて、この試合を如何に勝ち切るかを示した象徴的な采配だったと思います。


ただ、この勝利は今後のリーグ戦でまだ夢を見られる可能性を繋いだだけであって、自分たちの立ち位置を上に押し上げたものではありません。火曜日には再びアジアの闘いへ名乗りを上げるための大事な試合があり、その後は中2日での湘南戦が待っています。ここから再び勝利の道へ戻っていきたいですね。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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