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【雑感】2023/5/10 J1-第10節 浦和vs鳥栖

「ACLまではメンバーを固定する」という言葉はあったものの、現実的に考えれば今あるチームの軸を完全放棄する必要はないですし、ルヴァン杯はターンオーバーで臨んでいるものの結果を出せているわけでは無いので、メンバーを入れ替えるのはあくまでもより強いアクションが欲しい前線に留めておくというのは納得がいきます。


鳥栖の非保持は4-4-2をベースに構えつつも、相手がバックパスをしたり後ろ向きなアクションがあると見るや相手のビルドアップ隊を捕まえに行くというスタンスだったと思います。捕まえに行く時にはマンツーマン意識が高いので、担当する相手選手を自陣ゴール方向から真っすぐ出ていける位置に置いて対応するので、ボールを奪いに行く局面になれば縦方向に矢印を出せるようになります。

対する浦和の保持は、トップ下の安居が下がり目のポジションを取って、SH(特にシャルク)が内に絞ってきて4-1-2-3のような並びになることが多かったです。この並び方については対4-4-2にはおあつらえ向きというか、相手の2トップ、2CHに対して2CB+アンカー+2IHの5枚になるのでどこかが中途半端になるよねという盤面の構造を作ることになります。昨年夏にトップ下の小泉がそういうタスクでプレーしていたので見慣れているような光景ではあります。

縦方向に矢印を出したい鳥栖に対して、浦和の2CB+岩尾+2IHは少し手前に引く意識が強く相手をが出てくるなら裏が空くし、出て来ないなら手前で持てるし、ということを目論んだように見えました。

鳥栖が一旦4-4-2で構えた時に岩尾が2トップの間に立つような場面があったように、その状態の時に後ろから岩尾を捕まえに出てくる選手はいなかったあたりは札幌ほどの完全なマンツーマンでは無く、「ここだ!」というスイッチが入った時に一気に人を捕まえに行くということなのだろうと思います。そのため、20分を過ぎたあたりからは岩尾が最後尾に落ちて完全に3vs2を作ることも増えていきました。


また、鳥栖のCH2枚に対して敦樹、安居の2IHに加えてその周辺でカンテがロングボールも受けようと下りてくることもあって、中盤のエリアでも3vs2になるような形になっていました。さらには、裏が空いたときには西川からロングボールを前線へ入れることが何度かあって、カンテが見事にボールを収めてしまったり、シャルクが内側に入った分空いた外から前に出た荻原まで通したり、鳥栖をひっくり返せる場面は何度かありました。

中央の2ヵ所で3vs2を作ることが出来ると、相手の4バックに対して浦和のSB+SHの4枚という数的同数になるので、ひっくり返せればそのままチャンスになりますし、前のエリアでトランジションが発生した時には手前に下りたカンテ、安居がネガトラの先鋒隊になってボールを回収しています。23'50~は西川が大久保をめがけて飛ばしたボールが行きすぎましたが、その後すぐに相手の縦パスをカンテがカットしてチャンスを作りました。

ただ、そうして前線でチャンスになってもパスがズレたり弱かったりして受け手の状況が悪くなってしまうことが多々あったのは、この試合に限らず見受けられるものなのですが、こういうところで決めきれないあたりがここ数シーズンの得点数の伸び悩みを象徴しているようにも思います。パスが弱くなるのは芝の長さとか、まだ芝の具合が万全ではないとか、そうした要因もあるのかもしれませんが。


また、ACL決勝に向けて酒井が頑張りすぎてくれたこともあって明本が右SBになりますが、それによって右サイドはどちらも左利きになっています。そうなると、川崎戦でもあったように右サイドはハーフレーンを抜けて行ってもバチっとクロスを入れにくいので、大久保も明本もそうしたアクションには消極的だったように見えました。

さらに、先述の通り、敦樹は安居と一緒に手前にいることで河原と藤田を引き付けておくことが多かったので、右サイドのハーフレーン突撃に加勢するには距離がある、敦樹が到着する頃には相手も到着するので局面が詰まってしまうという難しさがありました。

酒井の起用できる試合数が限られてしまう、馬渡もなかなかめどが立たないということであれば、左利きが縦に並ぶことに対する解決策は早く見つけないといけないだろうと思います。


鳥栖は保持も特徴的で、ビルドアップ隊が4バック+2CHで担いつつ、そこに2トップも積極的に下りて絡んでくることが多かったです。両SHは外レーンで高めに張るので、鳥栖はゴール前に人がいない状況もありますが、9番タイプの選手がいないのでそこは割り切って、人数をかけてでもボールは前に進める、その上でセットプレーなり、アクシデントなりでゴールを狙うという算段だったのかもしれません。

浦和はいつも通り4-4-2で構えて中を閉じつつ外回りにさせるという対応はしつつ、鳥栖のSBに対してSHを前に出す、SHの背中に入ってくるFWについてはCHがスライドして中へ入れさせないという対応をしっかり行っていました。鳥栖は出来るだけ左右に振ることで浦和のスライドが間に合わない状況を作って、29'39のように2トップの背中で河原にボールが入ればチャンスを作れるし、スライドが間に合えば中に入れたボールを浦和のCHが回収するという展開でした。


鳥栖の1点目はトランジションではあったものの、FWはボール前進に関与するためにゴールとは離れたところにいて、外からSHが入ってきてフリーでシュートを打てるという彼らの構造がいくらか反映されたものでした。問題視されるのは2点目の方だと思うので、そちらを掘り下げてみようと思います。

74'38にホイブラーテンから西川へパスが出ます。この時に鳥栖の選手は西川へ誰もプレッシングに出ていないので西川はオープンな状態。そこへ岩尾が下りて近づいていくことで結果的に河田を引き連れてしまうことになりました。

西川から岩尾を通過して安居へ縦パスを入れて、岩尾はレイオフの落とし先になりますが、安居の背中から来ている手塚からすると安居→岩尾のパスには角度が無いので安居を消しながら岩尾まで二度追い出来ます。

岩尾→小泉のパスに対して手塚に消された安居が即座に振り向いて小泉のレイオフの落とし先になろうとしていたのは良かったのですが、ここで小泉の落としのパスが上手くいきませんでした。

西川→安居→岩尾、岩尾→小泉→安居と2つのプレーはいずれも縦方向のパスの出し入れになりましたが、鳥栖の非保持での矢印の出し方も縦方向なので、鳥栖の選手たちからすると素直にアクションを起こせたのだろうと思います。

また、岩尾も安居も縦方向に下りてプレーをしたことで、レイオフの受け先になる時に角度がつけにくかったのかなと思います。岩尾は下りようとするとしても本田ー河田のゲートを越えてまで下りなければ安居からのレイオフを河田の背中に出ながら受けられたかもしれないし、いっそ西川の脇までしっかり下りてしまえれば西川を右側に押し出して安居のレイオフの受け先にさせて、本田に対してショルツと2vs1のような状態が作れたかもしれません。

基本的に、縦パスを受けた選手に対しては真下ではなく横、あるいは斜め下の位置で角度をつけておかないとこうして苦しくなりやすいので、そのあたりはもう少し丁寧に出来ると良かったですかね。


2か月近く負けていなかった上に、最高の勝利を掴んだ直後だっただけに敗戦の精神的ダメージが大きいですね。ただ、負けてこれだけ腹が立つというのはそれだけ負けないことに慣れてきたからでもあると思います。

得られると思っていた結果との差が大きいほど辛さも大きくなる訳ですが、本気でリーグ戦も勝ち取りに行くのであれば、「負けても仕方ない」というマインドで保険をかけて試合に臨むようなことはあってはいけないと思います。常に「今日も絶対勝つ」と信じること、辛くなる可能性を恐れないことが必要です。適切なロジックもそれを実行するためには技術だけでなく、信じてやり切るハートが必要です。

試合はすぐにまたやってきますが、今のチームは簡単には気落ちしないことを信じて次の試合に向かいたいですね。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。


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