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【雑感】2023/4/24 J1-第9節 川崎vs浦和

チームがこの試合の後にそのままサウジアラビアへ向けて旅立つということで、勝って気持ち良く行きたかったところでした。ここまで怪我人を多く抱えて結果がついてこなかった川崎でしたが、この試合ではやはり彼らがここまで何年も積み重ねてきた「目が揃う」というものをとても感じる内容でした。

浦和も今季からはハーフレーンの奥を取りに行くということを第一優先として明確に打ち出しているわけですが、なかなか「今行けるんじゃない?」と思えるタイミングでもまだ人かボールが出ていかないということが多かったです。

それと比べると川崎はボール保持者がそこへ必ずボールを出せる状況ではなくても、感覚的には五分五分にも満たない割合でも、とにかくそのエリアへ誰かが走り込む、ボール保持者も通るかどうかは微妙だけど入れてみる、というイメージだったように見えました。

ハーフレーンの奥を取りに行くアクションの起こし方が、外から入っていくというだけでなく、特に宮代は中央から斜め外へ向かって浦和のSBの背中を取りに行く動きが多く、それによって浦和のCBをゴール前から遠ざけようとしていたのかなと思います。

6'15~のハーフレーン突撃。「目が揃っている」具合は流石。

浦和の方もCBがきっちりSBの背中をカバーしてシュートコースを出来るだけ狭くするとか、体を入れてマイボールにするとか、川崎が狙いたい場所へボールを入れても簡単にやらせない固さがありました。両CBだけでなく、明本も荻原もそこで強さを見せる場面が何度もあって、それによってなかなか決定的な場面は作られなかったと思います。


ただ、後半早々の失点シーンは家長が荻原とホイブラーテンの間くらいの位置から荻原の背後へ出ていくことで、ホイブラーテンをゴール前から遠ざけて脇坂の入ってくるスペースが空きました。脇坂のゴール自体はアクロバティックで凄いなという感じですが、そこに至るところではCBが1枚外に引き出されて、本来3枚でニア、中央、ファーを埋めておきたいところが1枚足りなくなってしまいました。

ホイブラーテンが左足を警戒して中へのコースを切ろうとしていて、そうすると進行方向は縦方向になりやすいので、荻原はクロス対応のためにホイブラーテンの代わりにニアのスペースを埋めに行っても良かったのかもしれません。


川崎の非保持は4-4-2でSHとSBが積極的に縦スライドしていく運用だったと思います。それに対して浦和は岩尾をアンカー役にして、2CBがしっかり開くことでSBは前目に押し出すというイメージ。こういう形になると浦和のCBの立ち位置が川崎のSHの正面になることが多く、川崎が2トップから追い始めた後に逆側のCBへボールを入れてもSHがそのままプレッシング出来るので、なかなかボールを前進させにくい形だったのかなと思います。

10'50~や44'10~のようにSHが縦スライドした背中(CHの脇)へボールを差し込むことが出来ればそこを足掛かりに前進できる場面もありましたが、CBが正面からプレッシングを受けた時に外のSBには川崎のSBが連動して縦スライドしてくるのでボールを受けても相手のプレッシングを背中から受けることになります。


また、中にボールを刺そうとしてもシミッチが前に潰しに出てきた時にまともにやられてしまうことが何度もありました。川崎は2トップが岩尾を消す選手とCBに出ていく選手で役割分担していて、もう片方のCBにはSHが出ていくわけですが、これによって川崎の方は2CHがそのまま浦和の2IH(小泉と敦樹)を見やすくなったとも言えそうです。

25分辺りから岩尾が最後尾に落ちて3枚になることもありながらあまり効果が無かったのも単純に+1を作っただけでは川崎のSHの縦スライドで解決できてしまう(構造的にあまり変化が無かった)ということだったのだろうと思います。

特に小泉はシミッチに背中から当たられると十中八九ボールロストしてしまったのは苦しかったですね。リンセンを投入して小泉が右SHになったのはシミッチからの離れることでボールを受けやすくしてあげたかったのかもしれません。


この状態の解決方法としては、例えば下図のようにSBが手前に引く、SHを縦並びにしておく、中央から斜めへ外に抜けるという三段構えもあるのかなと思います。これは恐らくマチェイさんの引き出しにあるものというか、以前の定例会見で話していた形です。

「レフ ポズナンにいたときにナーゲルスマンのバイエルン ミュンヘンからコピーしたものもあります。それは、サイドでトップ下がスペースを使うというものです。相手の左サイドバックを引き出して、そのスペースを突くというところです。リーグでその形から決勝点を挙げた試合もありましたので、私もかなり満足できたものでした」


浦和もリカルド体制で似たようなことをやったこともあるので、その時の図も出しておきます。

2021/9/25 FC東京vs浦和の図


浦和の同点ゴールは少し強引ながらもSHの背中のスペースを使えたことで相手の守備に穴を作ることが出来ました。ルヴァン杯では2試合に出ていましたが、リーグ戦ではこれがデビュー戦となった交代直後の早川が家長の裏のスペースへ入るだけでなくフリックで山根のプレッシングを外し、その流れから荻原へのスルーパスを出したのは未来を感じずにはいられません。

また、綺麗な形ではありませんが、先述のSBとSH(荻原と早川)が相手のSHとSB(家長と山根)を引き出して、そのスペースをトップ下(安居)が使うという形に見えなくもないです。

この試合では特に右サイドの明本が左利きなのでCBからSBのパスが出た時に前を向くのは難しかったのですが、この場面では左サイドで左利きの荻原がホイブラーテンからボールを受けたので利き足で前方向へボールを扱いやすかったというのも大きかったと思います。


リーグ戦はここで小休止。ACLへの期待はまた後日書くとして、リーグ戦については他クラブとは違うタイミングでテンションのピークが来ます。決勝が良い結果になっても悪い結果になっても、そこでテンションが落ち着いてしまうのは避けたいところですね。

何度も定例会見でACL決勝まではあまりメンバーをいじらないということを言っていたので、ACLが終わった後にレフポズナンで見せていたようなより前のめりなスタンスを強調していくのか、選手の特徴やバランスを尊重して今のスタンスの中でバリエーションを付けていくのか楽しみです。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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