見出し画像

【雑感】2022/8/6 名古屋vs浦和(J1-第24節)

どの試合でも基本的には初見+その時に気になってチェックしたシーンをいくつか観返す程度なので、試合を観たらその日のうちに文章を書いてしまうことがほとんどだったのですが、今回はどうしても頭に上った血が下りて来ず、朝起きてから書いてます。

名古屋との3連戦の2戦目ですが、ルヴァン杯1stレグの方にここ最近結果を出している選手を多く起用した浦和に対して、名古屋はこのリーグ戦の方にレギュラー格というか、A面という感じのメンバーを揃えてきました。


ただ、名古屋の構造は1戦目とあまり変わらず、非保持ではベースが5-2-3で前3枚を浦和のビルドアップ隊に噛み合わせて、WBがSBへ、CHがIH化する選手を見るという意識だったと思います。

そこに対して浦和はCHが敦樹から柴戸に代わったということもあって、ビルドアップ隊の形成の仕方が変わっていたのと、「前向きに矢印を出すのが誰か」というのを把握した上で、その矢印の根元へ人とボールを送り込む準備はしてきたように見えました。

ざっくり図にするとこのようなイメージだったと思いますが、1戦目では名古屋のCFにアンカー役が見張られるという構図だったので、そこに対して柴戸と平野の2人が永井の周辺をうろついて、永井はどっちかを見るべきなのか、後列からレオシルバか稲垣が前に出ていくべきなのか、出ていくとしてもどっちに?というイメージで、名古屋の守備の基準点をぼやかそうとしていたように見えます。

また、CBのところは1戦目と同様にシャドーの選手、SBのところにはWBの選手がチェックしに出てくるので、関根、松崎の両SHか江坂がレオシルバ・稲垣の脇(シャドーの背中)をスタート位置にしつつ、シャドーかWBのどちらかが矢印を出したときにはその根元に入ってボールを受けるような役割だったのだろうと思います。

そして、これの構造が綺麗にハマって前進できそうだったのが11'15~のビルドアップでした。この場面はレオシルバが柴戸の位置まで食いついてきていましたが、柴戸は後ろ向きでボールを受けながらも重廣が岩波に向かって出した矢印を綺麗に裏返すボールを、その矢印の根元にいた宮本へ出しています。

この宮本に対して相馬が距離は遠かったものの自分の前にいるので潰しに行ったところがアフターチャージになったわけですが、宮本にボールが入った時に永井の背中からすぐに外れて3人目として平野がボールを引き取り、稲垣とその後ろの3CBに対して、浦和はボールを持った平野と、前線のユンカー、左右の大外に関根と松崎、平野と同じくらいのラインに江坂がいた状態でした。

結果的にはこれがこの試合で最も綺麗に相手の矢印を裏返して前進できた場面だったと思うので、ここでアドバンテージを取らずに笛を吹いてしまった飯田さんはちょっと勘弁して頂きたい。。細かく言えば宮本がファウルを受けた最初のところはアドバンテージを取っていたものの、平野と稲垣がガチャついた時にそこからボールがどう転ぶかまでは見届けずに止めてしまったのがとても残念でした。

しかも、アドバンテージを取り消して相馬のファウルに戻したのに、相馬のアフターチャージに対するカードも無かったので、浦和としてはただ主審にチャンスを潰されてしまっただけ。観返せば観返すほど受け入れがたい。。


意図的にボールを持てていた中で、飲水タイムの後にあっさり失点してしまったことと、永井、マテウスといったスピードのある選手を前線に擁していることから、浦和が保持した方がゴール前のスペースが空きやすいということもあって、浦和がボールを保持する場面の方が多くなったと思います。

ただ、そうした中で前半終了間際に岩波から対角気味に出したボールがはじき返されたところの対処でミスが生じて失点。結果的にはこの失点の仕方が後半も尾を引いたのか、ボールを奪われることを恐れたボール保持になっていってしまっていたように見えました。


前半途中での柴戸の負傷による敦樹投入に加えて、ハーフタイムで関根、松崎に代えて小泉とモーベルグを投入。浦和の保持での形は再びアンカー1枚の4-1-2-3気味になりましたが、小泉が平野の脇まで下りてきてボールを引き取る役割はこなしていたものの、相手の矢印を裏返してボールを受けているわけではないので、そこからさらに相手を動かす必要が出てきます。

右は敦樹、宮本、モーベルグ、左は明本、小泉、江坂がポジションを入れ替えながら相手の目線を変えようとしていたようにも思いますが、長谷川監督は、特に外側のエリアでは、その局面でロックした対面の相手を離さずについていかせる傾向があって、浦和はこのエリアにスピードでバグを作れる選手はいないので、役割をローテーションしても相手にそのままついてこられてしまうという展開になってしまいました。

リカルドが試合後会見で取り上げていた53'30~の明本が小泉とのワンツーで森下の背後を取って江坂にマイナスクロスを入れた場面はありましたが、敵陣でのFKで平野が森下との接触で負傷した流れからの3点目で完全に試合が決まってしまいました。


このスタジアムのピッチ状態が良くないとか、相手の間にポジションを取りながら相手のリアクションを見て空いている場所から前進したいけど人を捕まえに来る相手だからなかなか「間」自体が生まれにくいとか、浦和にとっては難しい要素がいくつもあったと思います。

ただ、名古屋は、というよりは長谷川監督はボールを転がしての前進はあまり構築しないし、技術よりもフィジカルの優位性を強調するスタンスの監督であり、そういうチームのホームに乗り込んでいって、その部分にまんまとやられてしまったのはとても残念でした。色々な要素のせいにしたくもなりますが、そもそも自分たちの力不足というのも突き付けられましたね。


普段のトレーニングを全く見ていないので想像でしかありませんが、紅白戦で控え組が相手役になるとしても、自分たちが普段やっているスタイルと対極にあるチームの再現は難しいので、基本的には自分たちと近いスタイルのチームへの対応力が養われやすいのではないかと思います。

加えて、浦和には名古屋のようなフィジカル要素を押し出す選手は少数派なので、試合の出場機会が少ない選手ほどそうした相手に対する耐性は持ちにくいようにも思います。

そういった点から、普段と違う状況が何度も訪れて、それが失点にも繋がってしまうと、精神的に落ち着きを取り戻す、普段と同じプレーをするということの難易度は高くなってしまうのは理解は出来ます。だからと言って、それは仕方ないね、といって片付けて良い訳ではないですが。


以前も書いたような気がしますが、プレーをする中で戦術とメンタルは掛け算の関係性にあって、「どちらが必要なの?」という二項対立ではなくて、両方あってこそ高いパフォーマンスが発揮できると思っています。

残念ながらこの試合では、戦術、言い換えればチームの構造の部分できちんとした準備が出来ていたけど、それを実行しようとするメンタルが欠けてしまった、相手にそがれてしまった、という印象を持ちました。この試合では3点とも、浦和が用意した構造を上回られたのではなく、名古屋が強調したい個々のフィジカル要素で精神的にも上回られてしまった、といったもののような気がします。


ショルツが戻って来られない限りは岩波と知念の2人がCBで出続けるしかないので、知念にはすぐに次の出場機会が来ると思います。中3日でどれだけ精神的にも回復できるかは分かりませんが、キャリアの中でミスをしない選手は1人もいませんし、多かれ少なかれそのミスが試合の結果に繋がってしまう経験をする選手ばかりだと思います。

こういう時に昨年DAZNで配信された清水のドキュメンタリーの中でロティーナが選手に伝えていた言葉を思い出します。

「大事なプレーは次のプレーだ」
「チームメイト、審判、監督など、前のプレーに怒っていると、今、そして次のプレーというサッカーにとって一番重要な瞬間を見逃すことになる」

その瞬間のプレーだけで見ればミスになってしまっても、一歩引いてもう少し時間軸を長めにとった視点で見れば、あのミスがその後のプレーの礎になっていて、あれがあったから強くなれたんだ、みたいなことはどんな分野、どんな人にもあるはずです。ミスをミスのまま終わらせるのではなく、それを糧にしないといけません。

思い返せば、昨年のホーム湘南戦でビルドアップでのミスが失点につながって辛い経験をした彩艶は、そこで歩みを止めずに名古屋との1戦目でもビルドアップで臆せずスペースにいる見方を見つけてボールを届けることが出来ていますし、岩波も何年もの間、ビルドアップでのポジショニングや視野の取り方、ボールを持った後に運べない、などなど、色々言われてきたものの、少しずつ克服してチームの中心選手になれている訳です。

誰かの、何かのせいにするのではなく、自分自身に矢印を向けるという中動態的な姿勢こそが「浦和を背負う責任」を育むことだと思いますし、クラブはそのための環境作り、編成をしていて、今いる選手たちはどの選手もそれが出来る素養があると信じています。

自分のプレーに対して自分が応答するということであり、それは過去の自分が行ったプレーを現在の自分と切り離さなず、自分のものとして受け入れることになります。
こうしてプレーモデルに基づくチーム作りをしていくことで、その中で成長していく選手には自然と自分のプレーに対する責任感が育まれるのではないかと思います。裏を返せば、自分自身に矢印を向けることが出来る選手は成長し結果を残しやすく、そうでない選手は取り残されていくのではないかということにもなるかもしれません。

手前味噌の引用

なので、見ている側も「ミスをしたからあいつはもう使えない」と切り捨てるのではなく、ミスをしても次のプレーで成功できるためのチャレンジを後押ししてあげたいですね。いろんな選手がインタビューで言っている通り、我々の声や感情は選手たちにも届いているのですから。


1戦目で大事を取って交代したモーベルグは一応45分出場できましたが、2試合で4名も負傷交代するというのはとても厳しい現実。しかも、この試合ではCH2枚どちらも負傷交代となり、本当ならお休みさせて3戦目に備えたかったであろう敦樹を投入せざるを得なくなったというのは、名古屋との3戦目はもちろん、その次の週末にあるアウェー磐田戦までを見据えてもかなり苦しい状況ですね。

それでも、次の試合は埼スタが日常へまた一歩戻ることが出来る大切な日です。選手たちが苦しい状況になってもこれまで以上に大きなサポートが出来るはず。強い気持ちで打ち克とう。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?