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【雑感】2023/7/1 J1-第19節 鳥栖vs浦和

遅ればせながら、今週ようやくジョアン本part1を読みました。そこには「相手GKを分析すると勝率が上がる」「なぜなら相手のゴールを守っているのはGKだから」といったことも書かれていました。で、この試合を観て、岩尾の試合後インタビューを聞いて、「言ってたのこれじゃん!」ってなりました。


試合自体は浦和の方が決定機やそれに近いものは何度も作れていて、これは水曜の湘南戦からの延長線上で、自分たちが目指していること、自分たちで共有していることの中から作れていたように思います。特に相手が4バックだったこともあって、SBの背中やCBとSBの間(ハーフレーンの奥)でボールと人が合流する形というのが何度も観られました。

カンテの同点ゴールも敦樹がそのスペースへ飛び出していきましたが、それよりもクロスを上げた酒井がオフサイドかつファーサイドでクロスを受けた大畑がふかしてしまった33'43~の方が綺麗だったのでそちらを取り上げておこうと思います。


前提として鳥栖の非保持は人(相手選手)を捕まえる意識が強いように見えました。そのため、攻撃側の選手のポジショニングによって守備側の選手の位置関係がコントロールしやすくなるのではないかと思います。

この場面では左SHの岩崎は酒井を、左SBの菊池は大久保を担当していましたが、酒井と大久保が横並びになると岩崎と菊地も横並びになります。ボールを持っていた敦樹が誰にもプレッシャーを受けていない状態で、岩崎と菊地はゲート(パスの通り道/パシージョ)を作った状態になりました。

酒井がこのゲートの奥へ向かってアクションを起こし、敦樹もしっかりゲートを通すパスを送ったことで相手SBの裏、ハーフレーンの奥で合流することが出来ました。

そうすると鳥栖の方はCBの山崎が酒井に対応するために外へ出ることになりますが、浦和はゴール前にCFのカンテと左SHから絞ってきた髙橋が2トップのような関係性でスタンバイしているだけでなく、2人がクロスしながらニアと中央にポジションを取りに行ったので残ったCBのファンソッコと逆サイドのSBである福田がこの対応に追われてしまい、大外で大畑がフリーでシュートを打つことが出来ました。

結果的には敦樹がパスを出した時点で酒井がオフサイドポジションにいたので大畑のシュートが枠外に行ったことが咎められることはありませんでしたが、完全に意図して崩した形での決定機だったのでオフサイドだったとしても枠には入れておいて欲しいなという場面でした。


決定機の数自体は減りましたが、前節のミドルへの意識マシマシによる好戦的な感性はそのままに、湘南戦では相手が5バックだったのがこの試合では4バックになったことでハーフレーンの奥で人とボールが合流しやすくなったように見えました。

特に酒井がボール保持者の外側を回ってから斜めにハーフレーンの奥を取りに行くパターンで何度もチャンスを作りました。75'55~も大久保を外から追い越していて、ゴール前には興梠がニア、関根が中央、荻原がファーにいるという先ほど図にした形と同じような場面を作ることが出来ています。

鳥栖が非保持は4-4-1-1のように構えたところからスタートして浦和のビルドアップ隊に人を合わせに来ることが無かったので、その分ボールが持てればある程度押し込みやすかったのかもしれませんが、出来ればもっと保持からの流れでボールを持つ時間を増やして押し込む場面を増やせると良かったとは思います。

ミドルシュートを多く打つけど枠に行かないからゴールキックになってしまったり、クロスが相手に当たったらそのままコーナーキックになってしまったりすることが多かったので、高い位置でのネガトラ、即時奪回という局面が生まれにくかったのかもしれません。

ただ、チームとして目指す場所へ進めている感じとか、そこに対して迷う局面が減ったことは良い状態になってきていると思います。続けていきましょう。


試合全体としては鳥栖の保持vs浦和の非保持の時間帯が多くなりました。それの大きな要因としては鳥栖がビルドアップに人数をかけたことと、浦和がそれに対して人を合わせて対応することが無かったということだと思います。

鳥栖のビルドアップは4バック+2CH、さらにはGKやトップ下の堀米まで使った最大8枚で行うというのが大枠だったように見えます。CBが開けば間にGKが列を上げて入って来る、2CHは必ずしも浦和の2トップの背中に留まるわけではなく手前に落ちたりIH化したりする、トップ下から堀米が落ちてきてIH化したり、SBとSHの間へ入ってきたりするというのが多かったです。


浦和は基本的にいわゆるゾーンディフェンスというか、人(相手選手のポジション)よりもボール(と味方選手のポジショニング)を基準に非保持をしているように見えます。これだけ鳥栖の選手が手前や外側に人数をかけているので、そこに対して人数を合わせてお付き合いしなければ単純に数的不利になるし、ボールの移動先を限定することも難しいのでなかなかボールを取り上げることは難しくなります。

それでも、浦和の方は4-4-2のブロックの内側を締めておいて、ボールが外回りになるように対応できたことで、ほとんどの場面でクロスやチャレンジのパスに対して待ち構えた状態で対応できていたように見えます。これは、ACL決勝1stレグでアルヒラルにボールを散々持たれながらも決定機を作らせなかった構造に似ている気がします。


鳥栖の右SBの福田はCHの河原、手塚のポジションに応じて内側に入ってきたり(元々CHの選手なのでその位置でプレーすること自体は苦ではないはず)外に開いて長沼を内側に絞らせたりと、どこかに定位するということでは無かったと思います。

特に20分を過ぎたくらいからは福田が外の高めの位置を取ることが増えて、これによって左SHに入った髙橋が4-4-2の構造を維持できずに一人だけ最終ラインに吸収されるくらいにポジションを下げることが多々ありました。

45'30~は髙橋が福田の動きに翻弄されたことで、恐らくこの試合で唯一、鳥栖が浦和のブロックの内側を通ってのボール前進に成功した場面になったと思います。


後半途中に左SHが関根に代わると、関根は福田のポジショニングに惑わされることなく4-4-2の隊列をしっかり維持していて、それによって単純にファンソッコがボールを持っても目の前に関根がいる上に福田までの距離が遠いのでパスを出すことが難しくなったり、左サイドからのリサイクルでも関根がその対応で前向きな矢印が届く位置にいるので同サイドへ戻さないといけなくなったりしました。

ボールを持つ時間の長さ自体はそこまで変化が無かったっかもしれませんが、ボールを持つ位置は前半よりも手前になることが増えたのではないかと思います。64'40~の鳥栖のビルドアップは関根の対応もあって1分近く鳥栖がボールは持ち続けるものの、自陣から前進することが出来ずに最終的には朴がボールを蹴り出して浦和が回収しています。

関根がファンソッコに縦スライドしてから朴まで二度追いした時には、安居が代わりに関根のいた左SHのポジションへ移動していて、関根がそのまま2トップの位置に入れ替わっているスムーズさもこのシーンの大きな見応えポイントでした。


ここ最近SHでもプレーするようになった髙橋に今のチームのベストメンバーとしてプレーする関根の非保持の振る舞いを求めるのはフェアではないような気もします。ましてや、今の4-4-2の非保持で構造を維持するキーポイントはSHの振る舞いです。

髙橋については、最初に取り上げた攻撃の場面のように右から前進することが出来れば、そのサイドからのクロスに対して髙橋も中央に入ってきてカンテと2トップのような関係性でゴールへ迫れます。

実際に31'00~は大久保のクロスに対して髙橋がヘディングで合わせる場面もありましたし、相手や時間帯、自分たちのコンディションによってFWタイプの選手をSHに置くというオプションで少なからず手ごたえを得たのではないかと思います。本当はリンセンをこのポジションで起用した時にもこういう形をもっと作りたかったのだろうと思いますが。

保持では色々なキャラクターが欲しい、非保持ではみんな同じようなプレーをして欲しい、というのは難しい要求ではあるのですが、フットボール本部体制で呼んでくる監督の下でプレー時間を増やすためには非保持で上手に振舞うことは必須なのだろうと思います。みんな頑張れ。


さあ、停滞感が漂いそうなところで踏ん張って順位表の見栄えはキープできています。踏ん張りながら光明も見えてきました。夏の小休止までさらに勝ち点を伸ばしていきましょう。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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