【雑感】2023/3/31 J1-第6節 柏vs浦和
優勝争いに絡むラインの指標として勝ち点=試合数×2というものがあります。6試合消化で4勝で12ptとなりそこの指標に到達しましたが、内容も伴ってこのラインに来たのは久しぶりですね。
柏は、というよりもネルシーニョ監督は、非保持ではプレッシングエリアで相手との噛み合わせを良くすることで後列の選手がボールの雲行きを読みやすくしてあげるということを目指している印象があります。
浦和はそこへの対策として、柏の5-3-2の配置に対してビルドアップでは最初から岩尾がCB間に下りて、小泉もトップ下から中盤へ下りる3-2の配置になることで、2トップに対して3枚にすることで誰か1人が空くか、岩尾が下りる分柏の選手が1人ついていけばその背中で敦樹か小泉が空くということを目論んだのかなと想像します。
また、小泉が下りて空いたスペースには関根と大久保がそれぞれ絞ってきて興梠と3枚で流動性を作ったり、それぞれサイドでSBとSHが入れ替わったり相手に捕まえられないようにズレを作ろうとする雰囲気はありました。
ただ、前半の柏は浦和の最後尾が3枚になるところに枚数を合わせずフロートと仙頭の2トップが中央を埋めたところから外に開くショルツとホイブラーテンに対して横方向に追いかけることで左右を分断し浦和の前進経路を制限していました。
柏のビルドアップは右CBの古賀が最後尾にいたり、外に開いたりして変化を付けますが、基本的には初期配置の通り3-1の配置でスタートしていました。そこに対して浦和は2トップの片方がアンカーの高嶺を見ておいて、両SHがそれぞれ左右のCBへ縦スライドするというのがベースだったと思います。
柏の方は前線のアクションが斜め方向になっていることが多く、それによって左右CBから外へのコースを囮にして内側へ縦パスがズバッと入る場面もありました。
どちらかというとボールが浦和陣内へ入っていく場面が多かったように思いますが、浦和はCBが簡単に外に出ていかなかったり、外に出なければいけない時にはCHが下りて中央を埋めたりしていたので、シュートコースが開けるような決定的な場面を作られるところまでは至らなかったのかなと思います。
浦和としては予想外に柏が人をかみ合わせて来ないので上手く前進できていなかったのかなと思いますが、35分を越えたあたりから岩尾が最後尾に下りずに2トップ間に留まったりもするようになり、それによって小泉のポジションが少し前目になり始めたように思います。
そして、43'40~の興梠の得点への経緯も、右からの前進が詰まって左へリサイクルしますが、この時も岩尾はへその位置に留まっていて小泉が柏の中盤の背後にポジションを取れています。これによってWBの戸嶋を引き付けることが出来て、外から上がっていく明本がその背後へ抜け出せたのかなと思います。
WBがいなくなったので柏の最後尾は4枚になり、外側でボールを受けた明本に古賀が対応しに行けばこれまでの対4バックベースでの試合と同様にSB役とCB役の間を抜けて折り返すという形を実行しに行きます。頑張って折り返した関根も、キックフェイントをかました上でゴールを決めた興梠も見事でしたし、ハーフタイムまではいかない間にチームとしてピッチ内で違うパターンを表現してゴールを決め切ることが出来たのは良かったと思います。
後半に入ると柏はサヴィオを前に出して5-2-3のような並びになるようなアクションを起こすようになりました。浦和が岩尾と小泉を下して3-2の並びになるところへ噛み合わせを良くするということを目論んだのだろうと思います。ただ、このアクションは浦和が事前に準備してきた対策にハマりに行っているような印象を受けました。
51'45~、52'35~と連続して縦スライドしたサヴィオの脇に顔を出した小泉がボールを受けています。これまで浦和の2列目は大久保が中央になるのが多かったですが、相手の矢印を観察しながらその背中を取ってビルドアップの出口になれるのは関根や大久保よりも小泉の方が得意なので、昨年の4-3-3的な配置のようなイメージをこの試合でも持っていたのかなと思います。
柏が5-2-3のような形へ変化していくので、浦和は柏の2CHの両脇をビルドアップの出口にして前進していけるようになり、それによって得た手ごたえが2点目にも繋がったのかなと思います。
サヴィオがホイブラーテンを捕まえるというところを起点にしつつ、細谷が岩尾を越えて西川まで寄せていったので、そこから仙頭と山田が違う人を捕まえに行く必要が出たところで山田の背中に敦樹が入って前進することが出来ました。
あえて相手にハマるような配置を取ることで相手にアクションを起こさせてその背中を取りに行くというのはリカルド体制でもやっていたことなので、個人的にはその頃の成功体験が活かされているのかなという気がします。昨年も一昨年も柏とのホームゲームで人に食いつくという柏の特徴を利用した展開で結果を出していたことからそういう風に思うのかもしれません。
とどめとなった3点目のボールを前進させていく過程でも、ホイブラーテンまで縦スライドしていくサヴィオの背中で安居とボールが合流していたところが起点になっています。相手より先にボールに触れていて、明本と上手くワンツーが出来たので安居が高嶺に寄せられてもしっかりボールをキープして前進できたのが良かったですし、ハーフライン付近で安居とワンツーした明本がそのままゴール前、しかもファーサイドまで走り込んだのが素晴らしいですね。
相手のWBを引き出した後のスペースにシャルク、大久保が入ってきて相手をニアに引き付けることが出来ていましたが、それだけ前線に人数をかけることも出来ていたということだと思います。きちんとゴール前に人数をかけることが出来ているというのも効率良く前進できているという見方が出来るような気がします。
結果的には、柏としては望ましくないと思われる噛み合わせの良くない前半の方が浦和は苦しんでいて、柏が本来志向しているような噛み合わせが良くなるように修正した後半の方が浦和は前進しやすかったという気がします。柏目線では皮肉というか、とても厳しい感情になりそうな内容だったのではないでしょうか。やりたいことが出来た方が上手くいかないっていうのはプレーしている選手も精神的にきついのではないかと想像します。
仙頭、小屋松を筆頭に柏に個人戦術が備わっている選手はいて、そうした選手たちが上手く判断できた時には前半のように相手を困らせることは出来ているので、敵ながら見ていて苦しい気持ちになります。浦和としては柏が修正しなかった方が難しい展開が続いたかもしれません。
柏のサブには細谷と武藤という運動量が出せる選手がいるのでフロートと仙頭のところを入れ替えてしまえば運動量がリフレッシュ出来て前半のような展開がもう少し続くのかな、そうなると嫌だなと見ながら思っていました。
浦和としては直近のルヴァン杯の清水戦で何度も思惑通りボールを前進できているのに1点しか取れずに引き分けていたので、同じ轍を踏まずにきちんと追加点、ダメ押し点を取って試合を終わらせることが出来たのは良かったですね。
水曜にルヴァン杯川崎戦、次の週末に名古屋戦なので、この2試合はターンオーバー気味になりそうですかね。そこに向かっていくにあたって今季初めてメンバー入りしたシャルクが得点に絡めたり、岩尾に代わって入った平野も85分に相手3人の中心に入って西川からボールを受けて、相手がひとしきり寄ってきてからボールを離すなど「らしさ」をしっかり表現していました。ルヴァン杯はここまで2分でそろそろ勝ち点3を取っておきたいので、そこに向けてチーム全体でポジティブな空気になれそうな試合だったと思います。
ただ、先述の通り相手が難しい状況だったからこそ得られた結果だという面もあると思いますので、その辺りは過信せず先の試合に向かっていってもらいたいと思います。
今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。
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