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【雑感】2022/6/26 神戸vs浦和(J1-第18節)

ユンカーによる大崎強襲からの決定機で試合が始まりましたが、残念ながらユンカーは6分足らずで負傷交代してしまいました。トレーニングも全体へ合流して間もなかったでしょうし、金曜の定例会見でリカルドがノエビアスタジアムのピッチの質について触れていたように、踏ん張りが思うように効かないとか、神経質になって変なところに力が入ってしまうとか、そうしたことももしかすると治ったばかりの箇所へのダメージを強めていたのかもしれません。


リカルドvsロティーナということで、大方の想像通りのロースコアゲームでしたね。お互いにピッチ上から不確定要素を減らしながら相手を意識したプランをきちんと設定するタイプの指導者ですが、前半は神戸が上回り、後半は浦和が押し返したという感じでしょうか。ただ基本的にクローズドな展開が続いたので、優勢/劣勢というのが分かりにくい試合だったように思います。

神戸のビルドアップに対して浦和はアンカーポジションを取る山口を江坂と明本が消してから運んでくる大崎、小林に対して横から追いかけていくとで縦に進むことは許容しつつも相手を外へ外へ追い出していくいつも通りのプレッシングを行いました。

神戸はこのアクションを事前に理解していたのかなと思います。というのも、小林が明本の脇から運んでいくときに幅を取る酒井高徳は浦和のSHを越える位置でボールを受けます。

これまでの試合であれば浦和のSHは幅を取る相手選手を自分のライン上に置きながら運んでくる相手の縦のコースを切るのがベースポジションで、自分の脇に置いておいた選手へボールが入ったら真横から寄せてさらに縦に進ませるか、斜め前に入っていかせてSBとCHが待ち構えて潰すことが出来ていました。

高徳のポジショニングによって大久保のラインを越えると、ハーフレーンから汰木が背後に抜け出して行ったり、高徳と縦関係になって自分がカットインするスペースを作ってからボールを受けたりすることで何度も前進していきました。縦へ進むことはある程度許容する浦和のプレッシングに対して、浦和が進ませてくれるところ(本来はそこから先はいかせないようにしたいところ)でもきちんと前方向の選択肢を作れていたと思います。

さらに、時間が経つとイニエスタが左に流れてきて高徳、汰木もそれに合わせてポジションを動かしていたことと、岩尾か柴戸は手前に立つ橋本へ出て行ってまずは中を使わせないための対応をするため、宮本、大久保のところで苦戦を強いられてしまいました。

それだけでなく、左にボールがある時には武藤が大畑の視野外から裏を取りに行くアクションを何度も起こしていたので岩波はそれが気になったのか、自分の前へ下りていく大迫に対してもついていくことが出来ず、20'50のようにFWとMFが前へプレッシングに出て行ってもMFとDFの間が開いてしまってそこへボールを落とされるという場面を何度も作られてしまいました。


また、浦和のビルドアップに対しても神戸は大迫とイニエスタを中央で縦並びにして、汰木と武藤がハーフレーンに現れる浦和のビルドアップ隊へ向かって縦スライドしていました。

いわゆるポジショナルプレーというか、相手の守備ブロックを広げてボール前進させるためには各選手の距離をある程度広げながらボールを持つことになり、浦和のビルドアップ隊はもちろんその原則に沿ってポジションを取るので2CBが中央レーンに固まるなんてことは基本的には発生しません。そのため、ハーフレーンで構えるSHの前には高確率で浦和の選手が現れます。


さらに、浦和の右側は宮本が幅を取って高い位置に出ていくのでショルツの外側で横サポートに入る選手はおらず、汰木がショルツへ外を切るほど極端な方向をつけなくても、まっすぐ縦方向に出ていけばショルツはそのまま運ぶことはできないですし、パスも前方向であれば中へボールを差し込むか、高い位置を取った宮本の方へ飛ばすかくらいしか選択肢が持てません。

そのため、浦和の方はボールを持ってもなかなかオープンな選手を作れずにすぐに相手に寄せられてボールを離さざるを得ず、神戸の保持での配置とアクションに上回られて後手に回る時間が多くなりました。

それでも、18'10に柴戸が右ハーフレーンでヒールフリックして大久保をオープンにした場面であったり、34'00に柴戸が大迫の背中で橋本を引き付けながらワンタッチで大久保にボールを渡した場面など、柴戸が汰木から隠れないポジションでショルツからボールを引き取れた時には縦スライドした汰木の背中のスペースを使いながら前進することも出来ました。


前半で守備で汰木に振り回されてしまったり、攻撃でも突破口を見いだせなかった宮本に代えて、ACL以来のメンバー入りとなった酒井が後半の頭から入りました(リカルドの試合後コメントを読むと後半からの投入はある程度予定していたもののようにも思えましたが)。

酒井は汰木にドリブルで抜かれる場面はありましたが、保持やネガトラでの力強いボールキープと奪取では宮本との違いが顕著でした。郷家に倒されてもファウルを取ってもらえずに不満を表してイエローカードをもらってしまいましたが、単純なプレー強度と言うだけでなく、そうした姿勢の面で勝負へのこだわりというか、熱さを見せてくれたのも真面目で黙々とプレーする選手が多い今の浦和にとってはとても大切な振舞いだったと思います。


ハーフタイムでの変更は酒井を投入したというだけでなくて、前半に神戸が行ったプレッシングへの対応策もありました。早速47'00にはマリノス戦に見られたように積極的に縦スライドするSHの背中へ岩波からズバッとボールを入れるようになりました。

また岩波とショルツの距離も近づけるようにして、酒井も大畑もビルドアップ時に最終ラインに入ったり前に出たりとスタート位置を固定しないことで神戸のSHのプレッシングを迷わせようとしているように見えました。これはもしかしたら柏戦の後半に平野がショルツと岩波に対してもっと狭まるようにというジェスチャーをしていた場面に対する答え合わせかもしれません。


こうして上手く神戸のプレッシング原則を利用してボール前進できていた後半の頭の方でチャンスを作れると良かったのですが、橋本も山口も「あっ」と思った時のリカバリーが早く、すぐにゴール方向を塞がれてチャンスになりそうだけどそこまでいかないというもどかしい状況が続きました。

特に明本や松尾が左側からペナルティエリアへ入っていっても大崎が力強く対応できていたので、良い場所にボールは入ってもそこでボールを受けることが出来なかったですね。

それでも、前半に比べて確実にボール前進出来る回数は増えており、相手を押し込んでネガトラの即時奪回が増えたり、CKや直接狙える距離でのFKも獲れるようになっていきました。モーベルグのFKは1回目はコースが甘かったものの、ほぼ同じコースで迎えた2回目は見事に縦に落ちるボールを枠内に落としてくれました。

決定機らしい決定機はお互いに無く、内容としては引き分けが妥当だったのではないかと思いますが、2月の対戦は浦和が勝つべき内容だったので2試合トータルで見て浦和が4ポイント、神戸が1ポイントというのは内容と一致しているのかなと思います。まあ、2月の試合で3ポイントを取れなかったダメージがその後の試合にも響いたので「対神戸の2試合トータルで」という考え方に意味があるのかは何とも言えませんが。。


得点になるFKを獲得した場面では、明本が大崎と接触したところでPKを取ってもらえずに不満げにしていた中で平野が素早く切り替えて橋本の進路を縦方向へ誘導した流れでボールを回収し、マイボールになるとすぐにボージャンと武藤のゲートの奥に顔を出して岩波からの縦パスを引き取ってターンし、江坂にボールを預けたらそのまま今度は橋本と山口のゲートの奥へ移動して縦パスを引き取ってターンするという、約20秒間の「平野劇場」は見事でした。周りに神戸の選手が多くいる状況でファウルを犯してくれたので、そこは少しラッキーだったという面もありますが。

ただ、5月のLineNewsの記事で平野自身が「2ボランチのひとりが前線を助けられるように入っていって(中略)前の厚みを増やしていきたい」と話していましたが、これはまさにその言葉通りのプレーだったと思います。


また、この試合で見逃せないのは明本の対応力ですね。スタートは右SHでしたが、ユンカーの負傷交代によりCFへ移動。さらに後半途中から松尾と入れ替わって左SHへ移動し、その次は大畑を下げてモーベルグを投入したので左SB、さらに松尾が下がったタイミングで再びCFへ戻って、モーベルグが得点した後には5-4-1の左WB(見方によっては4-4-2の左SB)と、1試合で5回もポジション変更を行い、どのポジションでも彼らしく走り、闘い続けました。終了間際も裏のスペースへボールを入れられてもきちんと拾ってから相手に当ててマイボールにしており、このタフさには感服です。


内容が良くてもなかなか勝てなかったのに、内容は決して良くない中でも勝てたというのは評価が難しいところではありますが、1年間のリーグ戦を勝ち抜いていくためにはこうしたゲームでもより多くの勝ち点を拾っていく必要があります。そういう点で相手に攻め入られても最後の危ないところはきちんと蓋をするということであったり、流れの中で決定機が作れなくてもセットプレーから点をもぎ取ることが出来るかどうかはとても大切です。

勿論、「勝ってしまう」ことで本来反省すべき点を見ずにそのままにしてしまう、結果によって自分たちの力量を勘違いしてしまう、ということは大いに起こり得ます。ただ、良くも悪くも「とにかく結果を出すことが優先」ではなく「継続的に結果を出すために内容を高めていく」という手法でチーム構築している今の浦和では、そうしたことは起こりにくいのかなと思います。

次の試合もシーズン序盤に退場者を出して勝ち点を落としたG大阪との対戦になります。またしても相手の出方をきちんと見て設定できるタイプの指導者が率いるチームですが、こちらのカードもきちんと結果を出してあの時に取るべきだった勝ち点を取り戻してもらいましょう。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。

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