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【雑感】2022/9/14 浦和vsC大阪(J1-第26節)

これだけ決定機を作れなかった試合も久しぶりでしたね。C大阪は直近の鹿島、柏以上に攻守両面が整備されていて、もし自分が浦和サポでなければこの試合に対して面白い試合だったという感想を持ったかもしれません。


C大阪の非保持は縦横がかなりコンパクトな4-4-2で、各選手の距離が近い分、誰かがズレた後のスペースや誰かの背中に対するスライドが早く、浦和はなかなか守備ブロックの内側でボールを持てる場面が作れませんでした。

浦和はここ最近定番の4-1-2-3の形から少し変えた3-1-5-1か4-1-4-1のような配置でビルドアップを行うのに対して、C大阪は2トップが中央を閉めてヘソの位置にいる岩尾へのコースは封鎖し、2トップの脇はSHが縦スライドすることで内レーンも通させない、SHが縦スライドしたらその背後はCHの横スライドと後列のSBの縦スライドが連動していて、各選手がハードワークを効率的に行っていた印象です。


そのため、アンカー役であったり、ハーフレーンがスタート位置の選手が手前に引いたりするときに横や斜めからのボールを受けて、横ターンして逆方向へ展開するということはとても難しかったと思います。C大阪のFW-MF間のスペースを使えないので、逆サイドへ展開する時も一旦後ろに下げてからやり直しになって、そうなると守備ブロックのスライドも間に合うのでなかなか組織に穴が空かない。。という状態が多かったように思います。


ただ、9'45のように浦和がゴールキックなど手前の位置からビルドアップを開始してC大阪がそれに対してプレッシングに行こうとすると、どうしても中盤でブロックを構えるよりもFWとDFの距離は空くので、それによってFW-MF間で前向きな選手を作れたりはしました。

オフサイドラインはどんなに高くてもハーフラインまでなので、前線が前へプレッシングするほど最終ラインとの距離を狭めることは難しくなります。相手ゴールからの距離は遠くなるものの、中盤だと30メートル程度で10人にブロックを作られてしまうけど、このように相手に手前へ出てきてもらうことでブロックを引き延ばしてブロックの中にもスペースを作ることが出来ます。

ただ、意図的にこうした場面を作れたかというとそうではなくて、前半に浦和がチャンスの蕾を作れたのは5'03や22'00のような左側で大久保が毎熊と奥埜の間でボールを受けてターンした時くらいだったのかなと思いますし、ここから前進してもその先でパスがズレて相手の最終ラインを突破するところまでは行けませんでした。


大久保の2つのターンのシーンはいずれも知念からの縦パスで、知念は柏戦の先制点もそうでしたが、オープンにボールを持てた時にはブロックの内側に縦パスを入れたり、相手SHを越える位置で待つSBにボールを届けることが出来ていたりします。

しかし、相手がプレッシングに出て行こうと構えている場面(特にサイドからバックパスをして反対のサイドへ展開しようとする時)には、ポジション修正が少ないのでなかなかオープンにボールを持てない場面が散見されます。失点直後の25'06に岩尾からパスを受けた後にボールを奪われた場面も、縦スライドする気満々の毎熊に対して手前に引かず、正面からも外れずという位置でボールを受けたので苦しくなってしまいました。

思い返せば2020年や2021年初めごろの岩波も、同じようにビルドアップ時の細やかなポジション修正が上手くいかなくてプレッシングを受けると詰まってしまうということが多々ありました。試合を重ねるごとに、そして特にショルツという素晴らしいお手本が来てから岩波のビルドアップ時のポジション修正がとても良くなった印象です。


25'06の場面に話を戻すと、知念は実際にボールを受けた場所よりも数メートル自陣ゴール側(手前)に引いてボールの移動中に毎熊が間に合わないくらいの距離を取るか、数メートル外側に出て毎熊の正面を外れた位置で岩尾からのパスを待てると良かったかなと思います。

ボールを前進させるにはボール保持者が後ろを向くよりも前を向いてボールを持った方がやりやすいですし、それを邪魔する相手が目の前にいない方が良いです。なので、いかに前を向いて、相手が目の前にいない状態でボールを受けられる準備が出来るのかでビルドアップの質は変わると思います。前に行きたいなら一旦手前に引いたり、外側に逃げたりすることも大事です。


このポジショニングで言うと、C大阪は松田陸がとても上手かったと思います。ビルドアップ時は松田陸が最終ラインに残ることが多く、それに対して浦和は左SHの大久保が松田陸まで縦スライドして出ていく、その大久保が出て行ったスペースにSHの毎熊が入る、その毎熊に明本が出ていく、その明本が出て行ったスペースにFW1枚(時には奥埜)が流れていく、という展開が何度もありました。

大久保、明本に対して松田陸、毎熊、FW1枚で3vs2を作って、松田から明本の背後へボールを飛ばしたり、浦和のCBやCHのスライドが速ければその逆を突くように斜めのボールを差し込んだりするのですが、すべては松田がオープンにボールを持てなければ始まりません。で、松田は18'25~のように大久保の縦スライドがボールの移動中には間に合わないくらいの距離にポジションを取れています。

それでも、浦和の方は柏戦と同様、CBとCHのスライドが速かったのでこうした展開ですぐに崩されてしまうということはありませんでした。それだけに、相手陣内とはいえ、FKを与えた後に自分のポジションを空けているのにも関わらずリスタート出来る場所にボールを置いてあげて、まんまとそのスペースから前進されてしまった先制点は勿体なかったなと思います。

他にもカウンターを受けそうになった時にファウルで一旦潰しておいても良いのでは?というところでそのままプレーさせてしまっていたのも気になります。クリーンにプレーするのは大切なのですが、そうした細かい部分でこの試合の重みというか、勝つためのこだわりというところがあまり見えなかったなというのが前半の印象でした。


ハーフタイムで宮本、関根の右サイドコンビとシャルクを下げて酒井、モーベルグ、小泉を投入しました。宮本と関根は断続的に一定の質でプレーを続けられるのですが、その中でスピードで変化をつけたり、大きく展開をつけたりするプレーがあまり無かったので、ここの交代は仕方なしかなと思います。

宮本と酒井を比べるのは少し酷かもしれませんが、酒井はコンディションはまだまだ上がっていないように見えましたが、それでも最後尾で岩尾がオープンにボールを持ったらモーベルグの内側を駆け上がって相手のSHやSBを引き付けてモーベルグのスペースを作るようなアクションは良かったと思います。

モーベルグもボールを受けた後に2人、3人に囲まれても、ドリブルで逃げながら相手の目線を引き付けて他の選手を空けることもしていて、それによって後半はC大阪側のブロックが後ろ重心になり、それによって前半はなかなか使えなかったFW-MFの間のスペースを使って逆サイドへ展開できる場面もありました。


ただ、相手を押し込むということは、相手ゴール前に相手が集まってしまうということでもあるので、そうした狭いスペースでどれだけ速く正確にプレーできるのか、もっと言うと小さなスペースやちょっとした重心のズレを見逃さずに仕掛けられるのか、という部分が問われることになります。

前半も中盤に作られたブロックを攻略するにあたって、その狭いスペースの中でもボールを受けて、ターンしたりドリブルで外したり出来るくらいの技術があれば当然違う展開になったと思います。

ある程度いるべき場所でボールを受けられているというのはチームとしての成長ではあるのですが、ではボールを受けた時にどれくらい速く正確にボールを扱えますか?というところも成長しないと、この試合のように時間とスペースが少ない展開では決定機が作れなくなっていきます。

後半に入ったメンバーの方がボール扱いの技術や速さという点では長けていると思いますが、いかんせんまだコロナや怪我から復帰したばかりでコンディションが追いついていないのか、パスがしっかり転がらない、トラップが浮いてしまう、といった技術ミスも目立った気がします。


コンディションはまだ良い方のはずの前半は試合に挑むにあたってのテンションが足りていなくて、逆にコンディションが足りていない後半の方は高いテンションで臨めていたという感じでしょうか。今のままだとただ上手いだけで終わってしまうよね、ACLで勝ち上がるには上手いだけじゃなくて強さもないとだめだよね、というのは昨年からずっと言われ続けていることですが、改めてこのチームにはそうした強さがまだまだ足りていないなと感じる試合でした。


8月の月報の最後にも書きましたが、昨年も同じくらいの残り試合数で上位チームとの対戦が連続し、勝てばその分だけ差を縮めることが出来るという状況の中で勝ち点を積み上げきれずにリーグでのACL出場権獲得を逃しました。

そして、この敗戦によって今年もACL出場の可能性がある3位、4位に到達することが絶望的になりました。この事実に向き合うのはとてもしんどいですが、自分たちの結果次第で上位チームとの差を詰められる可能性がある3試合で勝ち点4。

「ACLも含めて○戦負けなし!」と言うコメントがDAZNの中継内にありましたが、後半戦で見れば11試合終わって勝ち点21ですから、優勝を狙うならこれがぎりぎりのラインですし、上位チームとの直接対決で勝てない限りはなかなか優勝を狙うことすら難しいです。

ここから先は自分たちがどれだけ勝ち点を積み重ねても、広島、C大阪、鹿島、柏の4クラブが揃って大崩れしてくれない限りは彼らの勝ち点を上回ることが出来ません。それだけこの試合の敗戦は重たいということです。


チーム内でコロナ陽性者が出てしまって思うようなメンバーが組めない、コンディション維持のために選手を入れ替えたりトレーニングの強度を調節することも難しい、という事情はあります。しかし、順位表にはそうした言い分による情状酌量の余地はなく、ただ無機質に34試合のスコアによる評価を受けるわけで、それはどのチームにも平等に課せられています。悔しいですが、今の浦和の力はそれまでということです。

勿論、ここから勝ち点を積み上げて最終的には昨年より上の5位とかまでいけるかもしれません。残り試合で可能な限り勝って欲しいし、内容を高めるトライはし続けて欲しいです。ただ、この試合で勝てば景色を変えられるというプレッシャーのかかった試合に勝つのと、そうしたプレッシャーから解放されて肩の荷が下りた中で勝つのとでは価値が違うように思います。


「勝者のメンタリティ」という言葉は個人的にはあまり使いませんが、これってつまるところ、「多少戦局が苦しくても、それでも尚前を向いて、今できること、やるべきことをやり続けることが出来る精神性」なのかなと思っています。

それって、言い方は悪いですが、生ぬるい試合で勝ったからって培われる訳ではなくて、やるかやられるかのギリギリのところで勝ち抜くという体験をしない限りは得られないだろうと思います。そして、そうした試合を日常的にやっているチームとそうでないチームでどんどん差が開いていきます。

幸いにも今シーズンはまだそうした試合が残っています。来週のルヴァン杯でやり返せるのか、この試合と同じく、さらには昨年と同じ相手に同じ場所でやられてしまうのか。そうしたヒリヒリする舞台で闘えるかどうかはまだ自分たちに委ねられている状況です。

来年2月の決勝は、当然頭の隅に置きながらそこに向けてどう高めていくかというものはあるとしても、流石に先過ぎるので、今は来月にまだヒリヒリする試合を闘えるのかどうかという点に絞って、そこで成果を上げてもらいたいです。

8月にあった名古屋との3連戦も上手くいかないところから修正して3試合目で成果を上げることが出来ました。この敗戦を無駄にしないために、まずは次の湘南戦でしっかり勝ってルヴァン杯へ向かいましょう。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


◆寝起きの追記

この試合ではこれまでから少しだけ配置をいじりましたね。左はSHの大久保が内に絞ってIH役になり、SBの明本が外担当。右はこれまでと同様SHもSBも外をスタート位置するイメージ。非保持で2トップのところはこれまでは1人がCF、もう1人が左IHに変化させていましたが、この試合ではシャルクと松尾をそのまま2トップにしていました。どちらかと言えば松尾がトップ下気味になって中盤をダイヤモンド型にしたとも言えます。

配置の変化量で言えばそこまで大きくないようにも思いますが、松尾がCFで無いことで裏へのアクションが減ったり、左が高い位置を取ろうと出来るのが明本だけではあるものの彼のスタート位置はあくまでもSBなので裏抜け担当にするには距離があったりしました。

C大阪のコンパクトな陣形を広げるには、当日中に書いた知念のところのように手前に引いて相手から距離を取って確実に後方でオープンな選手を作る細やかさが足りなかったことに加えて、こうした裏へのアクションのそもそもの量が足りなかったのかなと思います。

また、C大阪はプレッシングのスイッチはSHの縦スライドですが、逆に言うとSHが動かなければブロック全体の動く量も減るので、浦和からすると各々がスタート位置についただけでは相手が動いてくれないのでそこからどのようにアクションを起こすのかが見つけられなかったのかもしれません。

相手が動いて穴を作ってくれればそこへすぐにアクションを起こしていけるのは今のチームの中での標準装備になりつつありますが、自分たちからアクションを起こして相手に穴を作る作業はまだ出来る選手とそうでない選手に分かれている印象を持ちました。

リカルドのチームは相手を見てプレーをする、もう少し噛み砕くと初期配置で相手にアクションを強要して、それによって相手が起こしたアクションを利用するのが起点な分、こちらが初期配置を取っても相手がなかなか動いてくれない時には難しさがあります。

C大阪とのアウェーゲームの後に平野が「あまり上手くビルドアップ出来るとかえって相手が最初から構えてしまってスペースが無くなっちゃう」というようなことをコメントしていた記憶がありますが、ACLでもBGパトゥム、全北現代はそうした傾向があったように思います。

自分たちの思惑に乗っかってくれる相手にはやれるけどそうでない相手にはやれない、ということではリーグ戦を勝ち抜くことは出来ないので、相手が動かないなら、の次のアクションを早くチームの標準装備に出来ないと厳しいなと思いました。

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