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【雑感】2023/5/14 J1-第13節 浦和vsG大阪

水曜の鳥栖戦は監督が「より多くの選手を入れ替えていればよかったと、試合後の今は思っています。」「土曜日の試合に出た選手たちが今日の試合で悪かった、とは思いません。それぞれがベストを尽くしたと思います。しかし我々は、結局は人間です。」と話したように、結果的には色々な面でACL決勝にピークを持って行ったことの反動がどうしても出てしまったという見方になるのかなと思います。

そこから「決勝が終わりましたので、チームに変化をもたらしやすい状況になったと思います」という言葉通り、メンバーも配置も変化を加えてきました。具体的には興梠とリンセンが2トップになったこと、小泉をSHにしたこと、安居をCHにしたことが挙げられます。

また、試合を通してCHがなるべく最後尾に落ちないようにしていたことが印象的でしたが、これはG大阪の方が非保持でプレッシングにはあまり出て来ないので、その分ショルツとホイブラーテンがオープンにボールを持ちやすかったことも影響しているかもしれません。


G大阪の非保持はIHの宇佐美を前に出して4-4-2のようにはなりますが、2トップのゲートは開いていることが多く、2CBからヘソの位置にいる岩尾か安居に対してボールを出し入れすることは難しくなさそうでした。

2CHは岩尾と安居のどちらかがへその位置にいればOKというイメージだったように見えます。加えて、岩尾は安居がへその位置にいる時には左ハーフレーンの前方にも移動することが何度もありました。

昨季の序盤であれば、岩尾が左のハーフレーンにズレたとしてもあまり前に出ていかないので後ろから運ぼうとするショルツの前を塞いで窮屈になってしまうという場面がありましたが、この試合では岩尾が左にズレた時に前に出ていくのでホイブラーテンが運ぶスペースは確保されたままになっていました。

ただ、岩尾がへその位置に入った時には安居があまり前に出ていかず、明本もスタート位置は岩尾、安居と同じくらいの高さだったことと、2トップの分担として興梠が手前、リンセンが奥になっていて、興梠は左側でプレーすることが多かったので右側は人数が不足しやすい状況だったと思います。

ボールの移動と人の移動では前者の方が速いので無理があるかもしれませんが、岩尾と安居のうちボールサイドの方はハーフレーンを前に出ていく、逆サイドの方はヘソの位置にいるというバランスが理想だったのかなと思います。


G大阪の先制の後に浦和はSHの左右を入れ替えて左に関根、右に小泉として、右SBの明本もビルドアップでのスタート位置が少し前になったように見えました。小泉にしろ、明本にしろ早い段階でハーフレーンの高めの位置を取ることでリンセンの近くにも人を置けるように、ということを考えたのかもしれません。

G大阪が非保持で4-4-2で並ぼうとするときにファンアラーノは中盤ラインの中で一人だけ少し前を覗くことが多く、安居が早めにハーフレーンへ進出するか、右側はリンセンがハーフレーンを下りるといったアクションを起こしてファンアラーノの背中を取れると、運んでいくショルツを底にした菱形がSB、SHと作れて前進しやすくなったのではないかと思います。

前半はラッキーなPK獲得の場面もそうでしたが、左は人数が足りていてハーフレーンの奥を取りに行くアクションが何度かあったものの、右側は人数が足りずにその回数が少なかったという差があったように感じました。


ハーフタイムで浦和は小泉とリンセンを下げて敦樹と大久保を投入し、安居をトップ下にした4-2-3-1の配置に変更し、ここまで多くの試合でやってきた並び方に変更しました。

ただ、トップ下が小泉ではなく安居だったことが影響したのか、これまでは小泉が左IH、敦樹が右IHの位置を取って4-1-2-3のようなバランスになることが多かったですが、安居はあくまでもトップ下の位置でプレーしていて、左のハーフレーンに関根が絞ってくる、荻原が早い段階から外レーンの高い位置を取るというバランスになっていて、その分前に人数をかけやすくなっていたのかなと思います。

45'40~のビルドアップでは安居がトップ下の位置にいることと、大久保と関根の両SHが内に絞ってきたことでショルツの縦パスを起点として前線4人が連携して左外でフリーになっている荻原へ展開しました。関根から荻原へのパスの方向と強さがイマイチだったので決定機とはなりませんでしたが、こうしてCHの1枚が前に出る、CF+トップ下+両SHの4人が連携する、というのはシーズン前にレフポズナンで予習した試合でも見られた現象でした。

静的な配置で言えば4-2-3-1というこれまでもやってきたものでしたが、安居を残して小泉を下げたというのは、キャンプの頃から言われていた「今季はトップ下は出来るだけ前でプレーする」という方針を表現する上で象徴的な決断だったかもしれません。前節のミスも含めて小泉と安居の序列は入れ替わったとも言えそうです。これはこれからの数試合を観て分かっていくことだとは思いますが。

また、前半の右サイドでSB、SHのみになってしまうという現象に対しても敦樹が一発回答を示したと思います。その分岩尾はヘソの位置に定位することが増えたのですが、トップ下の安居が左IHのようになることもあり、関根、荻原と近い位置でもプレーするので前半のように片側は人数が足りているけど、もう片方は足りないという状況にはなりませんでした。

左の外から鋭いボールを中に入れるというのは、山中がいた時にもやっていたように、荻原が左SBで出るのであればそのノリをやらない手はないと思いますし、何度かその形からチャンスを作れていたので早くこれが実際にゴールという結果に繋がって自信を付けられると良いなと思います。


個人的にはリカルドもそうでしたが、スペイン寄りのフットボールが好みなのでポヤトス体制がどうなるのか気にはしています。序盤から割と早めにロングボールをジェバリに入れていて、先制点もそこでボールを拾ったところから取れていましたが、手前から繋ごうとするときに浦和の2トップがヘソの位置の山本を消すとたちまち繋げないという状況は気になりました。

G大阪は静的な4-1-2-3の配置をベースにビルドアップしていましたが、SBのポジショニングからは浦和のSHをどうしたいのか分かりにくかったです。浦和はSHを前に出してプレッシングをかけることも今季は多くやっているのですが、SHを前に出させてそれを利用したいのか、その場に留まらせたいのかが曖昧だったのかなと思います。

CBのうち右の福岡は自分でボールを運ぶこともパスを出すことも苦にしていなさそうですが、左のクォンギョンウォンは長短どちらのパスも精度が高くないので、せめて左SBは手前に引いてあげてクォンギョンウォンの横サポートをしてあげても良いのかなと思いました。


11'30~のG大阪のビルドアップでも両SBが浦和のSHの脇のあたりにいるのですが、CBが運ばないのであればパスをしてもボールの移動中に浦和のSHに寄せられてしまうのでCBからのパスが出て来ない、その結果ジリジリと横パス、バックパスを重ねて結局ボールを捨ててしまうことになりました。

例えば黒川がもっと手前に引いてクォンギョンウォンからの横パスを前向きに受けられるポジションを取っても良いかもしれません。SBが手前に引くことで相手のSHを引き出す、SHとSBの距離が伸びるのでそのエリアにWGが入る、そこへ相手のSBが出ていこうとしたらIHがその背中を取りに行く、という構図は4-3-3vs4-4-2の常套手段です。

あるいは、最初から前目にポジションを取ってファンアラーノと共同で明本と2vs1の局面を作っても良いかもしれません。いずれにしても、どこで、誰が前向きにボールを持つことを目指しているのかが分からない、どこのor誰のアクションを起点にして相手を困らせようとしているのかが分からない、というのがこの試合のG大阪で一番辛かったポイントかもしれません。

ポヤトスさんは徳島の時もそうですがピッチを広く使いたい、そのために選手の距離もあまり近づけないという印象があって、そうなるとビルドアップ隊は簡単にはサポートを得られないので自分で解決しなければいけない場面が増えやすいです。

この試合では途中で倉田を入れて4-4-2に変更し、手前の人数を増やすということで解決を図ったのだろうと思いますが、既にスコアが3-1になっていた上に、浦和からボールを取り上げることが出来なかったので状況を好転させることは出来ませんでした。


浦和目線で言えば、勿論PK判定は適切だったのか分からないですし、西川がギリギリで防いだシュートもありましたが、これだけ保持も非保持もチームとしてプレーできていない相手であればもっと余裕を持ったスコアで勝てても良かったのかなと思います。

それでも、多少実験的なこともした上で連敗せずにきちんと勝ち点3を積み上げられたことは良かったですね。カンテがボールを収められることを周りが理解できて来ていたり、シャルクも周りに自分を使ってくれる選手がいれば前向きにアクションを起こしていけたり、組み合わせ方で解決できそうだなというヒントが見えた試合だったと思います。

この先はカップ戦、未消化のリーグ戦が入ってくる7連戦で、より一層チーム全体でどこまでやれるのかが問われることになりますが、そうしたヒントを上手く拾いながらしっかり勝ち点を重ねて国内タイトルを獲りに行きたいですね。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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