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【雑感】2023/7/16 J1-第21節 C大阪vs浦和

リーグ戦の試合数はすでに半分を越えていますが、開幕から試合続きだった中でようやく約3週間の休息期間に入るのでここまでをざっくりシーズン前半として括っても良いと思います。

それに対する振り返りはこの休息期間に考えるとしても、この試合でどう見ても選手たちのコンディションが良くなかったこと、それでもなお試合に絡むことが出来る選手の数が少ないことということについては、この試合だけでなくもう少し俯瞰した視点から向き合う必要があるのだろうと思います。

現体制では攻撃の試行回数を増やすことを目指していますが、それはボールを失う回数が増える可能性も含んでいて、それによって4局面の回転スピードも上がるので前線の選手はより強度高くプレーすることが求められます。そうなると当然前線の選手は消耗しやすいので5人という交代枠を上手く使いながら選手の疲労度合いを分散させることが理想ではあります。


これはあくまでも現状から逆算した結果論での話にはなりますが、GWのACL決勝に向けて開幕当初からメンバー固定を明言し、さらにACLは外国人枠がJリーグよりも少ないこともあって起用できる選手も限られる状況の中でスタートしたことが、選手の試用回数を制限するだけでなく、試合に出る中でコンディションを上げていくサイクルを作りにくくしていたのかもしれません。

選手の試行回数というのは監督が選手を試すだけでなく、選手が課されたタスクにトライする回数も含みます。選手も言われたことをすぐに出来るようになるかというとそうでは無いので、PDCAを何周も回して精度を上げていく、それによって周囲の信頼を得ていくということが必要になります。


この試合でも控えにいる前線の選手はカンテ、早川、小泉の3枚で、相手ゴールに向かっていく迫力を増やすための手札は少なかったです。この状況にありながら、試合に絡める選手とそうでない選手がはっきり分かれていて、安定して絡める選手が15~16人程度しかいないことについては看過できません。

既に安部は獲得しましたが、彼のコンディションは未知数ですし、既に松崎が仙台へ移籍し、モーベルグもSNSを見る限りでは欧州に戻ることが濃厚という状況の中で、この夏の移籍市場で補強が必要なポジションというのはより明確になったように思います。


試合を通して浦和が良くなかったのかというとそうでは無かったと思います。1'25~のビルドアップでは2トップ脇まで開いたショルツからSH-FWのゲート奥で敦樹がパスを受けてターンし、そこから大久保が香川の脇、大外の酒井、そこからクロス、とC大阪の4-4-2のブロックの内側を経由して前進しています。

5'20~、5'50~にも敦樹がSH-CHのゲート奥にポジションを取ったところを上手く使って前進を試みていて、後者はそのままCK獲得まで至っています。

ただ、C大阪陣内でのスローインから加藤のボディフェイントによって引っくり返されてあっさり失点してしまったのはとても残念でしたね。失点シーンはショルツがサイドまで出ていって引っくり返されていて、ゴール前はホイブラーテンと荻原の2枚になって、2人ともそれぞれレオセアラとクルークスに背中を取られていたので、この状況になってしまった時点で難しかったなと思います。


失点以降も相手ゴールに近い位置でボールをプレーする場面は作れていました。20'10~のビルドアップでは左右にボールを動かしながら相手のブロックを広げて、岩尾が2トップ間をドリブルで割り入ってCH脇で内向きに体の面を作った大久保へパスを差し込めています。しかし、ここは大久保のトラップが乱れてハンドになってしまいました。

また、24'00~はC大阪陣内での相手スローインを奪って大久保からDFの手前の興梠へボールが入りますが、ボールコントロールがおぼつかないうちに突かれてカウンターを食らってそのまま失点。この場面は荻原が「興梠ならキープして逆サイドまで流してくれる」と思って駆け上がっているように見えましたが、それが裏目に出て荻原の背中にいたクルークスへボールが渡ってしまいました。

さらに、29'26~はC大阪陣内でのスローインから相手に奪われてもカウンタープレスをかけて回収し、岩尾からCHの間を通すパスを安居に入れますが、このパスが安居の右足(相手に近く、そのままターンするとゴールから遠ざかる方向に体が向く)に出されていて、パスを受けた安居もボールをコントロールしきれずに失ってしまいました。

湘南戦、鳥栖戦では明らかにミドルシュートの意識が増して、シュートが打てないならゴールに近い所へ向かっていくという好戦的な姿勢がありました。ミドルシュートを打つためにはペナルティエリアに近いエリアで前向きにボールを制御下に置いている必要がありますが、そのためのパス、トラップが上手くいかなかったので、そうした好戦的な姿勢を現象につなげることがなかなか出来なかった印象です。


お互いに4-4-2がベースでしたが、ビルドアップで浦和は2CBをしっかり開かせて間にGKかCH1枚が入って来るという形が多かったですが、C大阪の方はCBはあまり開かないのでCHもあまり下りて来ない、外側を使う時はSBを手前に留まらせるという形が多かったです。

浦和のようにCBが開く(距離が遠くなる)ということは、間に相手が入れば横パスが通しにくいのでボールの移動先は同サイドに制限されやすくなります。C大阪は2トップが縦並びになって4-4-1-1のようになることもあり、浦和のボールの移動経路をピッチの左右どちらかに限定しようとしているように見えました。

浦和の方はそれを防ぐために前半は岩尾が下りて中継点になって左右に相手を揺さぶろうとしたり、開いたCBは相手のFW脇でオープンにはなりやすいので対角にロングボールを入れたりする場面はありました。31'57~ではショルツが対角にボールを入れていましたが、彼がこうしたボールを出していた記憶はあまりないのでちょっとびっくりしました。

ロングボールはボールの移動時間が長い上にボールの移動元から移動先まで基本的にはボールの移動方向が変わることはないのでその間に相手もポジション移動できる時間があります。なので、キャンプからサイドチェンジする時にも短いパスを素早く繋いで展開するということが要求されてきていました。ただ、そこで多くの選手がボールに触るのでミスの可能性が増えるし、この試合ではまんまとミスもしたわけですが。


一方でC大阪の方は2CBと2CHの4枚に時折両SBが絡んできた時に各選手の距離がほぼ等間隔になっていて、さらにCHの喜田と香川はボール扱いをミスすることがほとんど無かったので浦和が意図的にボールを取り上げることが出来た場面はあまり無かったと思います。

SBとSHは時に右の毎熊とクルークスのペアは内外を状況によって使い分けていたり、加藤がフリーマン的にボールに近い所へどんどん顔を出しに行ったりしましたが、全体として前線4人に流動性が合って、そこにSBが前に出てきながら絡んできて、という具合だったのはロティーナの頃から積み上げてきたポジショナルな要素が見えました。小菊さんのチームが表現する方向性は個人的には好みです。


後半も浦和は引き続き2CBが開いてビルドアップをしていましたが、ショルツがボールを持った時に周りの選手が前へ出ていく意識が強くなったようには見えました。60'25~、62'33~はいずれもショルツが2トップ脇でオープンにボールを運んでいますが、周りの選手はそれに押し出されるように前向きに動いていました。

また、大久保がPKをもらった場面ではホイブラーテンが2トップ脇でオープンにボールを持ったところから対角へロングボールを飛ばしてペナルティエリア付近で敦樹とのワンツーをする場面に至っています。

試合の最終盤にはショルツを前線に残してパワープレー要員にするなど彼におんぶにだっこな試合になっていて、1失点目が彼が加藤に入れ替わられたところが起点だったり、PKを止められたりしても文句は言えないくらい色々背負わせすぎているなという印象です。

特にPKについては、これまであれだけ落ち着いて決めてきた選手なわけですから、落合博満の言葉を真似るならば、ショルツが蹴って止められてしまうなら他の誰が蹴っても止められてしまうのだろうというくらいに割り切った方が良いと思います。


C大阪は逃げ切り体制として4-5-1へ配置変更しました。非保持では2トップ脇を運ばれることは許容しつつ、そこからボールを差し込む場所を埋めてしまうという狙いだったのではないかと思います。

また、保持では中央に人数が増えるのでより手前に人数をかけてボールを持てた時には簡単に奪われないようにしたかったのかなと思います。4-5-1に変更してからはビルドアップでは香川が左手前に下りてボールを受けることが多くなっていました。


アウェーの鳥栖戦では勝てたので今年は鬼門を突破していける年かなと思ったりしましたが、甘くはなかったですね。ただ、こういう時に勝てないのって浦和っぽいよねーということは考えたくなくて、それを打破するために打てる手は何があるの?ということを考えるための休息期間にしたいところです。

なかなかリーグ優勝出来ていないので今のままでは優勝できないし何かしらの上振れや成長は必要なのですが、これが出来たら優勝できる可能性が上がりそうだってものを考えた方がワクワクするじゃないですか。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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