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【雑感】2022/8/13 磐田vs浦和(J1-第25節)

台風で試合が開催されるのか自体が不透明だったり、開催が決まっても新幹線の遅延があったり、現地に向かった方々にとってもなかなか難しい遠征になったと思いますが、試合前の不安感を払拭するスコアでしたね。

チームのスタイルとしては磐田も浦和と同様、自分たちの保持から試合を作ることをベースにしていると思いますが、個々のボール扱いのスキルの部分は勿論、チームとしてどれだけお互いの繋がりを共有出来ているのかで大きな差が出たなと思います。


磐田の保持は3CBと両WBの位置は定めておいて、山本と遠藤の2人、大森と金子とファビアンゴンザレスの3人はそれぞれが流動的にポジションを取ろうとしていたように見えました。

2CHのところは、どちらかといえば山本が後ろ、遠藤が前に重心がかかったポジションを取ることが多く、ビルドアップでは山本の方が最終ラインに下りて、遠藤が中央からIH的に前へ絡もうとする動きが見えました。

ただ、そうなると「へそ」の部分(浦和の2トップゲートの奥)に誰もいなくてビルドアップ隊が中央へボールを入れる選択肢が最初からなかったことで、浦和が採用する4-4-2で中央を閉めたところからボールを外レーンへ追い出していく守備スタンスにとって都合が良くなったという面はあると思います。

浦和がロングカウンターで先制した場面も、山本が最終ラインに落ちて遠藤が右ハーフレーンでIH的にポジションを取っていたところから相手を浦和から見て左サイドへ追い出して、吉長→鈴木のバックパスが入った時も小泉が引き続き相手を外レーンに閉じ込めるために鈴木に対して内側のコースを切るように寄せたことでボールを奪うことが出来ました。

この場面以外にも、特に小泉が鈴木に対してバックパスを封じるコース取りでプレッシングを行っていました。そうなると、20'25~のようにピッチ中央から人がいなくなりがちな磐田のビルドアップ時の癖と相まって、鈴木がパスを出せるコースをしっかり制限できているので、浦和にとっては磐田がボール保持の時間を増やしてもあまり怖くなかったのではないかと思います。


磐田の非保持は数字にすると5-3-2になると思いますが、中盤3枚は遠藤と山本が中央、大森が左にいて、右は不在という左右非対称な形でした。試合開始直後はこの初期配置で空いている右のスペースをWBの吉長が縦スライドして埋めに行っていましたが、浦和が大久保を外レーン高めの位置からスタートさせたことで吉長が縦スライドしにくくなっていたと思います。

また、ビルドアップ隊が岩波、ショルツ、岩尾で磐田の2トップに対して優位を取れるので、岩尾が「へそ」の位置に立つことで金子とゴンザレスを中央へ寄せることが出来れば、金子がそのスペースへスライドしようとしても距離があるので、磐田はなかなかこのスペースを埋めることが難しかったと思います。

早速2'20にショルツがこのスペースから一気にペナルティエリア手前までドリブルで運んで行ったのが印象的です。この場面では大畑は前へ出て行って、磐田が広く空けている吉長の前のスペースでショルツがフリーになれていました。

また、15'13~のように一旦岩波がボールを持って磐田を浦和から見て右側へ寄せることで、左IH的に振舞う小泉がそのスペースでボールを受ける場面も作れていました。「誰が」は状況によって変えつつも、相手が空けているスペースを的確に使えていたのではないかと思います。

前半の飲水タイムあたりから金子のスタート位置が少し右寄りになってこのスペースを埋めようとしているようにも見えました。そうなれば、今度は岩尾が空きやすくなって29'40~はピッチ中央付近で大畑から横パスを受けて、逆サイドの外に張るモーベルグまで一発で展開したり、42'00~は岩尾のところまで山本が出てきたので岩尾がショルツに渡して、山本の背中を取った小泉へショルツがズバッとボールを差し込んだり出来ていました。

相手のアクションに変化があっても、自分たちの所定の位置があるからこそ、そのアクションによって空く場所の共有が上手くできていたのかなと思います。


前半のうちに0-3になったことで、磐田はハーフタイムで陣形を4-◇-2へ変更してトップ下へ移動した遠藤が岩尾をチェックするようになったように見えました。

また、かみ合わせで言えば、浦和のIH化する小泉、敦樹のところに金子と大森がハマるようになります。52'08~の浦和のゴールキックからのビルドアップで小泉を金子と大津で挟み込んだのは狙い通りだったのではないかと思います。配置の都合上、明本のところは浮きやすいですが機動力のある金子ならここが数的不利でも頑張れるということを期待したのではないでしょうか。


配置変更は非保持だけでなく保持でも影響があって、山本と遠藤のビルドアップでの役割分担(山本が後ろ、遠藤が前)は継続しつつ、最後尾の人数が1人減ったので山本が下りても浦和の中盤ライン付近に選択肢が確保しやすくなったので、後半の最初の方は磐田が押し込む場面が作りやすくなったと思います。

磐田が押し込む状況が続いたので、浦和はなかなかビルドアップで前進することが出来なかった中で、60'10~の自陣深くから江坂がドリブルで一気に陣地回復したのが大きなターニングポイントだったと思います。

陣地回復のために一旦ロングボールを蹴りだして全体で押し上げようとすることも選択肢としてあったと思いますが、押し上げる前に相手にボールを蹴り戻されてしまえば再び自陣に閉じ込められてしまうので、ドリブルすることで人とボールが一緒に相手陣地へ向かって行けたのはとても良かったと思います。

結果的に、この江坂のドリブル対応をした鈴木が出血してしまい、磐田が10人になっている間に4点目、畳みかけるように5点目を奪えたので、ハーフタイムでの変更で自分たちのやりたいことを作れる時間を作れていた磐田側に大きなダメージを与えることが出来たのではないでしょうか。


4点目の場面も、5点目の場面もペナルティエリアの角のところでボールを持っている選手をきちんと追い越して裏のスペースへ出ていく選手がいて、ゴールライン際から折り返すボールを入れることで相手が自分たちのゴールに体を向いてプレーすることを強要しながら、ファーサイドまでボールを飛ばすことでさらに体の向き直しも強要したというのは得点の仕方として理想的だったと思います。

磐田側の対応が後手になっていたのもありますが、相手が上手く対応できない状況を作れればきちんと得点を奪い切れるというのは、いかに下位チームから取りこぼしなく、出来れば得失点差を稼ぎながら、勝ち点を積み上げられるのかが求められるリーグ戦ではとても大切なことです。


浦和はハーフタイムで松尾、モーベルグ、大畑を交代させたことに加えて、負傷から戻ったばかりの酒井とショルツもコンディションを考慮してここで交代。酒井→馬渡の交代はこれまでもあった流れですが、ショルツ→安居の交代で敦樹を左CBにしたのは驚きでした。

水曜のルヴァン杯で安居が攻守両面で上手くプレーできていたのもあるでしょうし、その前のリーグ戦での知念のミスというのもあって、敦樹の推進力をショルツのそれと同じようなイメージで活用するオプションも考えたのかもしれません。

互角や相手の方が上というパワーバランスの相手であれば、撤退守備での強度を考えてCBを本職としている選手の起用になると思いますが、ある程度相手を押し込めるて自陣ゴール前での守備の場面がほとんど発生しないような相手との試合であれば、相手は自陣に引いてブロックを固めるのでパスだけでの打開はかなり難易度が高く、ブロックを動かすためにはドリブルも使って相手の目線をずらすことの必要性も高くなります。

この試合は磐田がドン引きする状況はなかったので敦樹をCBにしてどれだけやれるかを計れる場面は少なかったうえに、最後は足を攣ってしまって敦樹自身がいなくなってしまったので、このオプションをリカルドがどう評価したのかは分かりませんが。


磐田が中盤の選手を前に食いつかせるほど、その背後で江坂がフリーで受けて、ターンして、前へ展開して、というやりたい放題な場面がいくつもありましたが、その形だった6点目の起点はもちろん、73'10~など、安居の存在感もこの2試合でようやく高まってきましたね。選手たちからは安居の能力を評価する声があったものの、昨年からの実績という点で出場機会は少なかったですが、平野と柴戸の負傷によって回ってきたチャンスをがっちり掴みに行っている感じがあります。

彼もまた味方同士のつながりを認知して自分が2人目にも3人目にもなれるポジションを絶えず取れていて、ボールもしっかり足についているし、パスはきちんとしたスピードで蹴れているし、ネガトラの反応も早いし、勿論このチームで半年トレーニングして成長している部分もあるでしょうけど、他のJ1中位のチームならレギュラーになっていてもおかしくないプレーぶりです。


名古屋との3連戦での負傷であったり、そもそも川崎戦から5連戦で疲労があったり、コンディション面での不安要素はあるものの、そこさえクリアできていれば相手を見ながら自分たちで繋がってプレーできるという自信を深められているように思います。

8月の「残り3試合」はACLです。スタジアム自体が酷使されることになるのでピッチ状態がどうなるのかは心配ですが、まだ本来の姿は取り戻していないものの、久しぶりに大きな熱量を爆発させて素晴らしい雰囲気を作った埼スタで3試合できるのは大きなアドバンテージになるはず。

中2日での3連戦ですが、チーム全体で選手を入れ替えても質を落とさずにプレーできるというのが今の浦和の最大の強みなので、連戦こそ我々にとって優位な状況が生まれるのではないかと思います。

既に天皇杯では敗退していて、リーグ戦でのACL出場権も難しくなっている状況の中、来季もACL出場をするための近道はACL制覇です。浦和レッズが最も熱く闘う舞台であるACLには毎年出たい。必ず勝ち取りましょう。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


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