仕事でツライ日、扇風機に向かって頭をたれる

最近は、さすがに35℃を超える日もあって、ニュースでもエアコンをつけるように警告しているし、エアコンがないと動けないけれど、もう少し涼しい頃だと、私と夫は扇風機だけで過ごすことにしている。息子はすぐエアコンをつけるけれど。

それは、東日本大震災の後、節電要請のあった頃からの習慣で、当時は今と違って毎日出社が当たり前だったし、平日は、本当に暑い時間帯は会社の冷房に助けられていた。とはいえ、勿論、夜も相当暑かった。当然食欲もわかない。会社も、朝一はまだ冷房がきいてなくて生温いのだけれど、席に着くと、外よりは涼しくて急におなかがすくのが常だった。そのぐらい暑い暑いと思いながら過ごしていた。

それでも、なんとかひと夏をのりきっていたのは、扇風機のおかげだった。私は、エアコンはできるだけ使わないけれど、扇風機はずっとかけっぱなしで、寝る時も食事時も机でなにかする時も、傍らには常に扇風機がある。 うちには、ミニ扇風機や送風機なども合計すると家族の人数分+3台の扇風機類がある。一人一台のマイ扇風機に加えて、食卓脇、トイレ、洗面所に各一台だ。エアコン生活の今でも、食事時は温かいものを食べる時など、汗ばむこともあって、すぐに扇風機をつけてしまう。

思えば、もう、何年になるか。。。不思議と、昔からお世話になった扇風機のことはなんとなく覚えている。物心ついた時にお世話になっていたのは、羽が緑で、ずんぐりむっくりしていたと思う。背面のレバーをひっぱって首振りのオンオフもできたと思う。なんとなく思い出せるのは、いかに、扇風機の前に座っていたか、ということなんだろう。私が子供の頃は、冷房というものが世の中に出てきた頃で、父が「職場でエアコンを買おうかと同僚から相談されたが、おとうさんが”そんなのは要らない”って言ったから3人が買うのをやめたんだよ」とハナをふくらませて話していたのを思い出す。(そんな父は、今は夏も冬もエアコンをつけていない日はないぐらいエアコンのお世話になっているのだが)                     だから、うちにはエアコンはなくて、ずーーっと扇風機だった。

たしかに、当時は、気温が30度になったら「すごく暑い」と言われて、30度を超えたとニュースで言われていたような気もするし、窓を開けて寝ていたら明け方は寒くて目がさめるぐらいだった。夜も、母親にうちわであおいでもらっている間に寝ていたような記憶がある。

そうか、わたしが扇風機が好きなのは、この頃の母親のうちわの風の思い出と無意識のうちにリンクしているせいなのかもしれない。

でも、それがなくても扇風機は偉大だと思う。

工事がいらない。機能にもよるが安価なものからある。最悪、こわれたら、その日のうちに新しいものを設置もできるし、うちのように、家族全員がマイ扇風機を持つこともできる。そして、スイッチをいれるだけで、すぐに涼しさが得られて、幸せになれる。

扇風機にあたりながら飲むビールのおいしさよ!「あー、この一杯のために生きてるーーー」なんて言葉が自然とこぼれ出る。

夏になるたびに、扇風機はなんと偉大な発明なのだろう、と思う。そして、扇風機が人の暮らしに与えるインパクトの大きさを思うと、ちょっとぐらいの身の回りの仕事の成果の優劣なんて、些末なことに思えてくる。

「自分は仕事できる」と思ってエバッている人に、上から目線で何か言われたりした日。扇風機の恩恵を授かりながら、「でも、アイツがエバってる〇〇だって、扇風機の偉大さに比べたら大したことないもんねーーーだ」などと思ってみると、ああら、不思議、留飲が下がっていくではないか。

人類の偉大なる発明、扇風機の恩恵に浴することのできる自分は幸せーーーまで思ったら完璧だ。ついでに、扇風機開発チームの開発秘話を勝手に想像してみたりする。プロジェクトX風に。試作機のできたシーン。でも、なんだか課題があって(たとえば、連続運転してるとモーターがやけて止まってしまうとか?)、それを誰かが部品を探し出して、12時間連続運転ができるようになって、、、とか。当時は、全然性能的には劣っていただろうけれど、本当にみんなが肩を抱き合って喜んで、昼夜問わない開発のさなかに協力してくれた守衛さんに最初に一台を進呈した、とか。         なんだか、扇風機のアナログさは、そういうロマン(?)をかきたてる。

。。。いや、自分でも若干、錯乱しているというか、無茶なことを言っている気もするが。

それでも、わたしはこれからも、仕事で、ちょっとつらいことがあった日、夏場だったらお風呂上りにビール片手に扇風機にあたり、「あー、この一杯のために生きてるー」と言おう。そして、扇風機に感謝し、頭をたれよう。そして、ちょっと、勝手に開発話とか想像して、元気をもらおう。


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