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香港慕情 エピソード.0

 最期に香港を訪れたのはいつだろう?
 少なくとも雨傘革命の前なのは確かだ。
 中国や台湾に行くようにもなったけれど、私が愛してやまないのは香港。
 第二の故郷だと公言して憚らないのは香港だ。
 この夏ようやく香港に足を運べるようになった。
 久しぶりに旅行記を書いてみようという気になった。
 これはその前の忘備録。
 私と香港の思い出を語るエピソード0である。

初めての香港(1996年)

 そもそもなぜ香港に行こうと思ったのか?
 それ以前の海外渡航歴は韓国に一回行っただけ。
 ジャッキー・チェンは世代なので何本か作品を見たけれどそこまでファンだったわけでもない。ブランド物を買いあさろうという気持ちもない。
 私を突き動かしたのは「本場で飲茶がしたい」という気持ちだった。
 横浜中華街の飲茶は美味しかったけど、お高い。本場ならもっとコスパ良く飲茶ができるのでは?という安易な考え(航空券代分出せば横浜でも十分食べられるだろう)に突き動かされた。
 もう一つは1997年の香港返還が迫っていること。
 歴史地理学者の卵である夫に「地理屋なんだからさー、返還前の香港くらい見ておいた方がいいんじゃないー?」と焚きつけて、地球の歩き方を手に飛行機とホテル、空港からの往復送迎のみのスケルトンツアーを申し込んだのだった。
 ちなみに、初めての香港旅行と2度目の香港旅行は旅行記にまとめてウスイホンにし、夏コミで頒布をしている。探せば残部が1,2冊あるはずだけど家の中で行方不明になっている。
 当時、香港についての知識といえば
・ジャッキー・チェンのいるとこ
・飲茶が有名
・なんでか今は英国領だがじきに中国に返還される
 というレベル。恥ずかしながら、我が国が先の大戦で占領していたことや英国領となったいきさつなどは後で知った。国というより、大きなアミューズメントパーク、大きな中華街に行くノリだったと思う。
 知識がないので、訪港して初めて「旧正月中は店がほとんどお休み」ということを知る。飲茶目当てで行ったのに、飲茶にありつけたのは帰国日の朝。旧正月真っただ中のツアーだったから格安だったとのちに気づく有様。
 しかし、旧正月真っただ中だったことが香港の「いつもと違う側面」を見せてくれたようで、人があまりで歩いていない街中、あちこちに貼られた新年を祝う(そして休業期間を告げる)赤いポスター、郊外の寺院で偶然出会った獅子舞、建物の入り口に置かれた赤いお年玉袋で彩られた金柑の鉢植え、ホテルのフロントに置かれた水仙の鉢から薫る芳香。
 それらはとてつもないインパクトで私の脳裏に刺さった。
 また来なければ、と心に誓った。
 

香港に狂う(1997年以降)

 当時、比較的休みがとりやすい仕事をしていた。
 旅行代金の跳ね上がるシーズンは仕事をして、料金が底値の平日に旅行をすることが可能だった。夜勤明けにそのまま成田から香港に行ける体力もあった。
 今でこそ、若い女性の気軽な海外旅行先は台湾・韓国になってしまったけれど、この頃は返還前フィーバーもあって香港は根強い人気で、ガイドブックや関連書籍も多数出たし、TV番組も多かった。コミケの評論島に行くと香港をあらゆる角度で楽しめる旅行記を出すサークルさんがいくつもあって、その情報収集力と行動力には随分お世話になった。旅行者でも香港トップの恒生銀行に口座を持てる、口座があると両替手数料がかからない、なんて情報を得たのも同人誌からで、パスポートを手に口座を作りにも行った。
 ノリのいい同僚にも恵まれて、複数人と複数回訪港した。とにかく中華は人数がいないと楽しめないよね!と、高級店もこのメニューなら怖くない、と書かれた旅行記同人誌に勇気をもらって、ちょっといい服をカバンに詰めてハードル高めのお店にも行った。上海ガニの季節だから!というだけの理由で出かけたりもしたし、マンダリンオリエンタルにこの値段で泊れるの?!とホテルステイを目的に行ったこともあった。
 香港仲間の同僚が当時麻布にあった「香港ガーデン」で結婚披露宴をするのでシノワズリブティック「上海灘」チャイナドレスをオーダーしたい、と言ったときはすぐさま旅程を組み、自分たちも香港のあちこちの店を見比べて一張羅を用意した。
 また、当時サービスが始まったばかりのヤフオクに香港限定のグッズを出品するとみるみる値段が吊り上がり、旅の後半は日本で高く売れるグッズの買い出しという要素も加わった。なにせグッズを売れば旅費が十分出るほどだったので。香港中のディズニーショップとサンリオショップの場所を把握し、更にヲタクショップまで網羅し、出始めたばかりのデジタルカメラでホテルで商品写真を撮影し、帰国後すぐに販売できる準備をしていた。
 香港から足を延ばして深圳、当時まだポルトガル領だったマカオにも行った。香港島・九龍半島以外の島にも行った。何度行ってもまだ行っていない場所があり、食べたことがないものがある。
 そんなこんなで一番激しいころは一年に7回、訪港していたのはもう狂気の沙汰というしかない。
 

魔都香港

 なにがそんなに私の心を狂わせたのか?
 香港の魅力的な要素は多岐にわたり、香港に狂う人によって惹きつけられる要素は微妙に異なると思う。台湾や上海、成都なども繰り返し行ったけどそのどことも違う魅力が香港にはある。
 ディズニーリゾートが好き、という人がランドとシーどっちも同じでしょ?とかUSJでもいいんちゃう?と言われていやいやいや、違うし、と思うのに近いかもしれない。
 香港には季節がある。旧正月も蒸し暑い真夏も、中秋節の頃も。市場に並ぶ果物の種類や駅の広告やショーウィンドーで季節の移り変わりを知り、その季節に合わせた人の暮らしの営みの変化が好ましい。
 そう、観光地としての魅力というより「そこで暮らしている人の生活が好き」なのかもしれない。特に「お年寄りの生活」に目が行ってしまうのは職業柄致し方ないとしても。
 ちなみに、これだけ通ったにもかかわらず言葉は話せないし理解できません。飲みたいお茶の名前すら通じなくて筆談する有様です。なのに、楽しいんだから困っちゃいますよね。
 唐突に今まで香港で買ってきたものを羅列していくと
・服(チャイナ系多数)
・パシュミナ(ストール・手袋)
・ポケットティッシュ
・調味料(クノール「鮮露」・李錦記の貝柱入りオイスターソースは鉄板)
・のど飴
・クッキー・中華菓子
・ドライフルーツ・ナッツ
・正月飾り・お年玉袋・中秋節のランタン
・食器・茶器
・内服薬(漢方薬ではない市販薬)
・布団とカバー
・ぬいぐるみ
・本
・絵葉書
・マスキングテープ
・茶葉
・バッグ(回郷袋も含む)
・インスタント食品・缶詰
・点心・マンゴープリン・エッグタルト(機内持ち込みがまだできてた頃)
・傘
・CD・VCD・DVD
 あたりでしょうか。布団はかなり頭がおかしいころですね。でもいまだに愛用してます。シルク綿でダブルサイズで大きくて適度な重さがあって温かいので買ってよかったものの一つ。
 ポケットティッシュについては語ると長くなりますが、今無印良品で販売している「携帯用ペーパーナプキン」が一番近いもので、これは初めて香港に行った時から「こんな便利なものが!」と愛用中。
 スーパーやドラッグストアのPBや、香港で一番有名なブランドtenpoのもの、クリネックスやネピアも出していて、季節ごとにサンリオやディズニーやそのほかのキャラクターものが有ったり、tenpoのはミントや様々な香り付きの物もあって、カバンの隙間にクッションとして入れるのも便利で毎回大量にカバンから出てくるという。
 今回は何を買ってきたのか、はまた次回以降に。
 と、こんな感じで写真も交えつつダラダラとつづっていこうと思います。
 
 

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