
If I can stop one Heart from breaking — 心がひとつ壊れるのをもしも私が止められるのなら
If I can stop one Heart from breaking
I shall not live in vain
If I can ease one Life the Aching
Or cool one Pain
Or help one fainting Robin
Unto his Nest again
I shall not live in vain.
心がひとつ壊れるのを
もしも私が止められるのなら
私が生きるのも無駄ではない
命がひとつ痛むのをやわらげ
あるいは苦しみをひとつ静めることができるなら
気を失った鳥を
もう一度巣にもどしてやることができるなら
私が生きるのは無駄ではない
I shall not live in vain.
このフレーズの力強さにひかれました。
実際にこのフレーズが登場するのは2回ですが、
書かれていなくとも、詩全体にフレーズは響き渡っています。
フレーズ自体が強いというよりは、
詩の中で、だんだんこの言葉が力強く聞こえるようになってきます。
Ifの内容はむしろ、
心が壊れるのを防ぐ→鳥を巣に戻す、と
だんだん些細なものになっていきますが、
I shall not live in vain.
この否定系のフレーズは変わらない。
だからこそ、ここに小さいながら揺るぎない、本当の力を感じるのでしょう。
否定系なのもいいですね。
これが肯定的に、
私は有益に生きたことになる、
とかだったら、
静かに胸を打つ感動的な調子はなかったと思います。
生きることが無駄ではない、と言うためには、
何か、大したことをしなければいけないような気がしてしまいますが、
そうではないんだと、
そんな勇気をくれる詩でした。
僕も、誰かの心が壊れるのを防ぐのは無理でも、
せめてひとつ痛みをやわらげられるような、
そんな振る舞いを心掛けたいです。
『THE COMPLETE POEMS OF EMILY DICKINSON』
THOMAS H . JOHNSON, EDITOR