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His mind of man, a secret makes — 秘密が彼に人の心をつくる

His mind of man, a secret makes
I meet him with a start
He carries a circumference
In which I have no part

Or even if I deem I do
He otherwise may know
Impregnable to inquest
However neighborly —

秘密が彼に人の心をつくる
私は彼に会うのが怖い
彼の周りには円が描かれていて
そこに私の居場所はない

あるいは私があると思っても
彼の方では違うかもしれない
どんなに調べても分からない
どんなに近くにいても—


秘密と心といえばやはり、夏目漱石の『こころ』でしょうか。
ずいぶん前に読んだので、また読みたいものです。

心とは不思議なもので、
ひょっとしたら存在しないんじゃないか、
と思うこともあり、
しかし、
探せば証拠のようなものがそれなりに見つかるので、
やはりある、ような気がする。

彼は人への思いやりがある、
人への接し方がやさしい、
感情の起伏がある、
好きなものを愛している……など。

しかし、
どんなに探しても、
心そのものはどこにも見つからない。
だから、この探しものは終わらない。

それに、
分からないからこそ、惹かれることもある。
いや、むしろ、
人が本当に誰かに惹かれているとき、
相手が自分のことを思ってくれているかとか、
そんなことは気にしていないような気がします。

むしろ自分の居場所は絶対にそこにはない、
そんな円に、
瞳に、
ブラックホールのような引力に、
いつしか吸い込まれてしまっている。

そうやってみんな、恋に落ちたのではないでしょうか。

自分のものにせよ、誰かのものにせよ、
分からないところがまったくない心があったら、
人はそれを、
人の心だとは、思わないのではないか。
それを、知りたいとも。


『THE COMPLETE POEMS OF EMILY DICKINSON』
THOMAS H . JOHNSON, EDITOR

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