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Who has not found the Heaven — below — 地上で天国を見つけられなかった者は —

Who has not found the Heaven — below —
Will fail of it — above —
For Angels rent the House next ours,
Wherever we remove —

地上で天国を見つけられなかった者は
天上でも見つけられないだろう

天使は私たちの隣に部屋を借りている
私たちがどこへ引っ越しても


「引っ越し問題」が出てきました。

今いる場所に不満や閉塞感を感じて、衝動的に引っ越したくなることが僕にはけっこうあるのですが(実際に引っ越したこともあります)、しかし、そのたびにいちいち引っ越していたらキリがないし、環境というより自分に問題があるんじゃないかという反省的な視点もそれはそれで失いたくないので、「今いる場所、そこが問題ではないのだ」というような意味の言葉をいくつか、戒めとして心に刻んでいます。
今回のディキンソンの詩も、「ここでダメならもっといい所に行ったってダメだろう」的なことを言っているので、仲間に加えることにしました。

You can’t get away from yourself by moving from one place to another —
あちこち行ってみても、自分からは逃げられない

たとえばこれはヘミングウェイで、けっこう気に入っているやつです。かつてはこういう、簡潔で現実的な言い回しが、直接胸に響いていました。
今はディキンソンの、可能なかぎり簡潔でありつつ、比喩的で、読んでいると頭をマッサージされているような感触のする、詩の表現のほうが好ましく思えてきます。

天使とは、自分の中にいる子どもの自分のことでしょうか。
子どもは今を楽しむもの。
ここよりいい場所があるんじゃないかとか、将来いい場所へ行って楽しむために今やるべきことは……なんて、小難しく考えたりしません。

大人になると小難しく考えないことこそが、むしろ難しくなってくるわけですが、人生に天国を求める気持ちは大人になっても失われず、そして、その天国を見つける鍵は、子どもの心が持っている、というのもまた、変わらない、真理ではないでしょうか。

最後に引っ越し問題の締めくくりにふさわしい、僕の好きな言葉を。

「人は、自分のいるところにけっして満足できない」

サン=テグジュペリ『星の王子さま』
河野万里子訳 新潮文庫 

『THE COMPLETE POEMS OF EMILY DICKINSON』
THOMAS H . JOHNSON, EDITOR

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