【読書感想】迷宮 中村文則

現代小説を読むことは僕にとって呼吸をするようなものだ。

一言に読書と表現しても純文学小説を読むこと、学術書を読むこと、数学の本を読むことでは必要とされる技術や知識が変わってくる。

自分に分不相応な難しい本を読み続けていると息継ぎが必要になる。

私は息継ぎのために呼吸をするように読める現代小説を手に取った、

手に取った小説は中村文則の【迷宮】

一家殺害事件の生き残りの少女に狂わされていく主人公の物語。

事件は密室状態であり、迷宮入り。やがてその事件は司法論文の問題に掲載されるほどになる。(小説内において)

物語を通して主人公は事件の真相を生き残った女性から聞くことになるが、その真相は人間の深淵の部分、病んだ部分が人間が創作した話と思えないほど濃いリアリティで表現されていて私は文章から狂気を感じた。

だが、感じたのはリアリティであり、創作の領域を出ていなかった。

そうした領域は想像と現実を区別する明確な境界線として捉えられるべきものであり、その領域を読者に感じさせた中村文則の手腕と小説という媒体に対して脱帽せざる負えない。

随分と壮大な息継ぎをしてしまった。迷宮を読了した時、私はそう感じた。

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