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プレステ2発売の直前に。

娘と買い物に来た。

娘がおもちゃコーナーでリカちゃんを見つけて、「欲しい欲しい」と言っている。

子どもの欲求は恐ろしく、何かを欲しいと言われる度に「買わないよ!」と言っている。

あまりにひどいと怒ることもある。

 なぜそんなに色んなものが欲しいんだ、とーーー

 家におもちゃが沢山あるじゃないか、とーーー

 これだけ買ってあげても満たされないのか、とーーー

父親になると、そんな目線になってしまう。

だけど、このやり取りをすると、自分が「父親」を演じているのだと気付かされる。

なぜなら、自分も子どもの頃、

「あれも欲しい、これも欲しい」

と言っていたからだ。

歳月が経てば、自分と同じことを言う娘を叱っているのだから、大人とは都合の良いものだ。


子どもの頃、物欲はたしかになかなか満たされなかった。

全く買ってもらえなかった訳ではないが、物欲がありすぎたのかもしれない。

お小遣いもお年玉もほとんど無かったから、両親にねだるしかなかった。

色んなものを欲しいと言ったと思うが、そのなかでもはっきりと覚えているものの1つが「プレステ」だ。

プレステは、欲しい欲しいと言い続けて買ってもらうことが出来た。

このことは今でも特別な思い出だ。

小学校3年生の日曜日だった。

ごく普通の週末、いつものようにイオン的なお店に家族で出掛けた。

いつも呪文のようにプレステが欲しい、プレステが欲しいと言っていたので、その日もいつものノリで母親に「プレステ欲しい」と言ってみた。

すると、母親から
「お父さんに言ってみたら?買ってくれるかもしれないよ」
と言われた。

いつもの母親なら

「またそんなこと言って!買わないって言ってるでしょ!」

と怒るところだった。

でも、その日は怒らなかった。

「あれ……?ちょっと待てよ……なんかいつもと違う……?」

と感じた。

母親がそんな感じで言うことも少ないし……

と思い、父親に、

「プレステが欲しい……」

と言ってみた。

すると、少しの間があった後に、

「そうだなぁ、安くなってるし買おっか。」

と、あっさりOKが出た。

なんかあっさり過ぎて、実感が湧かなかったのを覚えている。

その瞬間からトントン拍子で話が進んだ。

家族でゲームソフトを選び、

メモリーカードやコントローラーの意味が分からず、

父親が店員に聞きながら選んで、購入した。

嬉しかった。

本当に嬉しかった。

早く家に帰りたくてしょうがなかった。

ついに、ついに我が家にプレステが来る!!

そんなワクワクが止まらない感覚だった。

でも、ーーー

同時に「申し訳ない」という、少し複雑な感情があった。

父親が発した「安くなっている」という言葉。

それもそのはず。

買ってもらったのは、僕が小学校3年生(1999年)のとき。

その頃には発売から歳月が経ち、プレステ2が発売されると既に噂になっていたような時期だ。

だから、本体価格がかなり値下がりしていた。

でも、ソフト、コントローラー、メモリーカードを合わせれば合計2万円、3万円したはず。
(正確な金額は覚えていない…)

あれだけ欲しかったものを手に入れたのだが、

「高価なものを買ってもらってしまった」

という申し訳なさがこみ上げてきた。

当時、父親は、貧乏という意味で

「お金がない、お金がない」

と言っていた。

どれだけお金が無かったのか、僕には分からない。

でも、いつも「お金がない」と言っていた。

何かを欲しいとねだるとき、子どもながらに「お金がないからダメって言われるんだろうなぁ…」、そう言われることが分かりながらねだっていた。

プレステを買ってもらったときも、そう言われるだろうなと思いながら言ってみたところがあった。

でも、あの日は買ってもらえた。

いや、買ってもらえてしまった。

嬉しかったけど、お金を使わせてしまい申し訳なかった。

プレステはやっぱり楽しかった。

ワクワクが詰まっていた。

だから、プレステ2が発売されたときも欲しくなった。

でも、ーーー

僕がプレステ2を買って欲しいと言うことは無かった。

もし買ってくれたとしても、また「買わせてしまった」と思うから。

だから、我が家には初代のプレステしかない。

noteを書くにあたって、そんなことを思い出しながら、当時のことを父親に聞いてみた。

あの時、安くなっていたとは言え、なぜ高価なプレステを買ってくれたのかーーー

父親からの回答は、

「忘れてしまったなぁ~」

それだけだった。

本当に忘れてしまったのかな。

でも、当時は色々思ったはずだ。

 ゲーム以外にもおもちゃ沢山持ってるのに。とか、

 プレステ(ゲーム)って何?とか、

 目悪くなるのに。とか、

そんな風に思っていたはずで、積極的な理解は出来なかったはずだ。

それでも買ってくれた父親には感謝しかない。

そして、今、

目の前でリカちゃんを欲しい欲しいと騒いでいる娘がいる。

さて、どうしようかな。

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