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白昼夢の詳細と日記

今日こそくたばるぞと思いながら起床する。
床に溶け込みそうな身体を引き摺って
青い錠剤と数杯のコーヒーを流し込み、
心臓の棘が丸くなるのを待つ。

鋭利な針先が少しだけ丸くなってきた頃
ぼんやりした頭で外へ出る。

職場近く、寂れた商店街、路地裏に並ぶ居酒屋の看板。
昼間の街は死んでるみたいで、通りを歩く幸せそうな家族連れや若いカップル、路上で寝ているホームレス、きっとみんな亡霊なんだ。

職場に行くにはまだ早いから、死んだ街を少しだけウロつく、見慣れすぎて飽きてしまった街。

ふと気づくと、路地裏ピンクの看板の上にぼんやりクラゲが浮いている。足元に目を移すと、マーチンの黄色いステッチあたりまで群青の水に浸っている。

水はその存在を認識されたと気付くとみるみるうちに水位を増し、街全体を自身の身体で覆った。

無数のクラゲ達、図鑑で見た熱帯魚、アロワナ、金魚、錦鯉、何故か小ぶりなジュゴンもいる。
みんな身体を半透明に透かせて、発光する縁取りを持ってる。綺麗な背骨が透けて見える。
いつのまにか、人間の亡霊達は誰1人いなくなってしまった。

商店街の真ん中に無数の穴が空いた岩が置かれて、いつか見たブーゲンビリアが咲いている。
通り沿いに植えられ、排気ガスを吸いきった椿達がブーゲンビリアに絡め取られようとしてる。

通りに並ぶ居酒屋のうち何軒かが、ぽっかり口を開けた蝦蟇に変わっている。いつか見た沖縄の記憶だなとぼんやり思う。

足元に半透明のアカハライモリ、大きな手を貼り付かせて頬のあたりまで這い上がってくる。右耳まで上がってピアスホールに入り込み、小さな声で話しかけてくる。
「あの子は元気?」

あの子が誰だか考えていたら、唐突に夢は消えてしまった。


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