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しゃんとしないと、から逃げる/体感研究報告書


「しゃんとしないと、格好つけないと話せないよなぁ」


そんなことを思う時があった。というより、1年また1年と、どんどん話がしづらくなった。別に誰かに怒られたわけでも冷たい目を向けられたわけでもないんだけど、ただ自分が言葉を出す時に選んだり考えたりする時間が増えた。そのおかげで旧ツイート現ポストも減っては、その反動で対面や電話になると意味も深みのない話をべらべらと話す習慣がついてしまった。


今年になってそんな気持ちがまた一段と湧き上がる中で、いろんな人の日記やエッセイを読みながら、人が出てる文章っていいなぁと改めて思うようになったこの頃。(無論みなさん考えて言葉を選んでいることは大前提であり、そこにリスペクトはしています)なんだろう、お味噌汁を飲んで喉から胸の辺りがほんのりあったかくなる、そんな感じ。口で交わす会話の聴覚的な感覚と、文字という視覚的な感覚の間みたいな、そういったニュアンス。


例えばインタビューを記事化する時、重複した言葉や間のアバウトで迷う表現とか、言い間違いとかはだいたいカットしてまとめることがあるけれど、それは記事のような文字の塊の時に情報が整理されている方が見やすいし理解がしやすいという視覚的感覚の心地良さのために必要ことだと重々理解しているつもりだ。


ただ、「こういう感じ」みたいなふわっとしたものをアバウトに書けるゆとりみたいなものが単純に欲しくなったのと、正解不正解の前に自分の体と脳で体感することの詳細にもっと目を向けたい、でなければ仕事でも仕事じゃなくても死んでしまう気がしたので、重い腰をようやく上げてこのページを公開するに至っている。


思えば小さい頃から日記というものにたとえがたい神秘を感じてまっさらなノートを日記用に購入するも、三頁目くらいで飽きてしまうというのが常。基本的に外出はあまりしないし友達も少ないしで「書くことないなぁ」とすぐにブレーキがかかってしまうわけだ。


しかし先日とある取材でずっと日記を書き続けているという人たちの話を聞いた。秘密のノートの中で絶対に嘘をつかないことを条件に日記を書き続ける。内容は悪口ばかりだったけれど、自分と向き合うという習慣がついたというのだ。


確かに、と思った。全員が全員、その習慣が合う合わないとは限らないという話はさておき、対私においては、人のことを嫌だと思う自分を改めて見るのはしんどいし、何かができない自分を見つめることも厳しいものがある。



日記をつけるということは文字に残ってしまうので、そりゃ嫌でも向き合わなきゃいけなくなるよなぁ、なんて納得しつつ、自分と向き合うことから逃げてきたという事実が少し痛んだ。日記が続かなかった理由がなんとなくわかった気がする。

といいつつ、ここで「じゃあ日記をつけて自分と対話しよう!」と振り切ることがないのもまた私が知る私なのです。そこで、私生活を綴って自分を記録したり内側を知る、という手法ではなく(自分が読み手として好むのはこちらですが)自分が感じることと気になる、好きなものへの理由を探求するための記しとしてはじめようと、この「体感研究報告書」に至ります。その名の通り自分が体感する物事へ研究・報告する場としてnoteを使おうという、半透明な日記です。


ありがたくも興味のあることや好むネタを仕事として記事にさせていただく機会も多く、それは変わらず続けていきたいと思っていることも決して変わりません。そのためにも、自分の感性を研ぎ続けなければ、私が書く意味というか、新しい可能性は出ないよなと、改めて思っただけという話です。


程を気にしない、完全自由形。ですますで終わることもあれば、そうでもない時もある。そういうラフさをそのまま出せたらいいなぁ。だって私、誰のものでもないし。そもそも悪いことだと思ってないし。


私のリスペクトしている人が著書で「ネガティブを潰すのはポジティブではない、没頭だ」と書かれていて、なるほどなと思った。プライド、ブランディング、その他諸々。ああだこうだと頭で考えるうちに「しゃんとしないと」は私にとってネガティブとして毎日いろんなものを養分にしてむくむく育ってきたわけです。あまり意識はしていなかったけれど。


没頭になるのかわからなけれど、好きを煮詰めることが結局一番の薬だというのは肌感と経験でわかる。潰れるかはわからないけど、やなこったと反抗して逃亡はできる。2024年3月23日時点ではそれが一番ちょうどいい。


決意表明というよりは、あくまで体感したことの記録ということで、正解不正解はさておき自分がどう思うのか、楽しんでいけたらなって思います。



谷川俊太郎の「朝のリレー」が活版印刷されたチョコレート。文学をばきばきに割るという恐れ多さの傍ら、美しさが壊れていく背徳感。とても美味しくて秒でなくなりました。

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