見出し画像

刀剣博物館「日本刀の見方 パートIII〜刃文〜」の備忘録

画像1

2021年4月17日(土)~7月11日(日)に刀剣博物館で開催されていた「日本刀の見方 -パートⅢ 刃文-」に行ってきた際の備忘録です。

日本刀の見方 -パートⅢ 刃文-

「日本刀の見方」シリーズは「姿」「地鉄」「刃文」のそれぞれに焦点を当てて、日本刀の見方を分かりやすく解説してくれるという、私のような初心者には大変ありがたい企画展でした。

パートI「姿」、パートII「地鉄」は2019年に開催されており、パートIIIとなる「刃文」は昨年も開催されたのですが、コロナによる緊急事態宣言で博物館が休館となり、開催期間が短くなってしまったために今回「リターンズ」として再度開催して下さったようです。ありがたいですね。

なお、私は昨年の刃文展も見ているのですが、やっぱりもう一回見たい!!と思って刀剣博物館に足を運びました。昨年開催の時とは展示作品が若干異なっていましたが、日本刀の多様な刃文を楽しめる素晴らしい展示でした。

そして、昨年開催された時とは異なり、今年は土曜限定で「ライトダウン展示」がありました!!

展示室内の光量を落として、より刀の刃文がより際立って見えるようにするというものです。

画像31

画像31

上が通常ライティング時の清麿、下がライトダウン時の清麿です。ライトダウン時の方が刃中の働きがはっきり見えますね…!!


ここからは刃文に着目して展示内容の一部をご紹介させて頂きます。

【小乱れ】

不規則に小さく乱れた作為のない刃文で、平安〜鎌倉初期の刀に多く見られるそうです。展示では平安末期の古備前友成と伯耆真景が展示されていました。

写真は伯耆真景です。写真でもはっきり分かるほどの大板目肌がいかにも古伯耆という感じがしてとても好き。刃文の中まではっきり板目模様が見えるのがすごいですね…!!

画像14

画像15

画像16


【直刃】

読んで字のごとく真っ直ぐな刃文です。写真は備前の雲次の刀。備前といえば丁子乱れの印象が強いのですが、直刃の刀もあるんですね。刃文は直刃でも地鉄にしっかり乱れ映りが見られるのがやはり備前。

画像15

画像16


【丁子】

丁子のつぼみのような形の刃文…ということですが、そもそも丁子のつぼみを見たことが…ない…。うねうね乱れた綺麗な刃文です!!華やかな刃文なので個人的には大好きです。

写真は福岡一文字助真。刃文も華やかで地鉄の乱れ映りも綺麗です。部分的に蛙子丁子のように見える箇所も。

画像14

画像15

画像16

ちなみに、新々刀期(江戸時代末期)の備前の刀工、横山祐包の作も展示されていました。同じ丁子乱れでも、鎌倉時代の福岡一文字と比べると大分違った感じに見えますね…?

画像15

画像16

新々刀期の刀って、明らかに古刀とは違って地鉄と刃文の境がくっきり分かれているように見える物があるのですけど、何でだろう…地鉄が無地風だからそう見えるのかな…??


画像26

こちらは江戸時代前期の肥後守国康の刀。拳のような形の「拳型丁子」です。拳というより花びらのように見えて綺麗です。


【のたれ】

ゆったりとした波のような刃文です。写真は新刀期(江戸時代前期)大阪の津田越前守助広。お手本のような綺麗なのたれ刃ですね…!!のたれ刃は相州政宗が焼いたのが始まりだとか。

画像15

画像16


【濤乱刃】

激しい波のような刃文です。こちらも津田越前守助広の作。助広は濤乱刃の創始者です。水玉模様のような飛び焼きが本当に可愛……綺麗ですよねぇ。

画像24

画像25


【互の目】

連続した山型の刃文です。写真は南北朝期の美濃の兼友。

画像17

画像18


こちらは南北朝期の長船倫光。角張った形の互の目模様です。面白いですね…!!

画像19

画像20


そしてこちらは源清麿。これを見に来たと言っても過言ではないくらいの激推し。匂口が明るくてとっても綺麗です。

画像14

画像20


【尖り刃】

先が尖った互の目というイメージ。ギザギザした刃文です。美濃の刀工に多く、孫六兼元が有名ですね。

写真は新刀期(江戸時代前期)越前の武蔵守藤原兼中。美濃から越前へ移住した刀工の一人だそうです。綺麗な三本杉ですね…!!

画像16


こちらは室町時代の加賀藩の刀工、藤島友重の刀。解説では「角刃(つのば)」と紹介されていました。美濃と備前が混ざったような作風が藤島友重の特徴とのこと。

画像27

画像28

ちなみに、藤島友重の刀は石川県立歴史博物館の「大加州刀展」でたくさん見ました!!個人的にちょっと思い出のある刀工です。


【皆焼(ひたつら)】

皆焼と書いて「ひたつら」と読みます(何故…?)鎬地まで刀全体に焼きが入った独特な刃文です。

写真は長谷部国信「号 からかしわ」。絶対見たかった一振りです…!!皆焼は長谷部派や相州伝の刀に多く、へし切長谷部も皆焼ですね。

画像21

画像22

画像23


【絵画的な刃文】

こちらは刃文で富士山を表現している眠龍子寿実の作です。面白いですね…!!眠龍子寿実は新々刀期因幡国(鳥取)の浜辺派という一派に属する刀工で、その弟子の河村寿隆は信州に移住して山浦兄弟(清麿とその兄真雄)の師となっています。清麿が一時期「秀寿」と銘を切っているのは、師匠から一字を貰っているんですね(すぐに改名してしまいますが…)

画像29


刀の「刃文」に着目した大変勉強になる展示でした。こうして改めてまとめてみると、2019年に開催されていた「日本刀の見方 パートⅠ 姿」「パートⅡ 地鉄」についても振り返ってみたくなりましたが、当時は本当に初心者すぎてほぼ知識が無だったため、写真すらちゃんと撮れているかどうか…

もしも写真フォルダを掘り返してまともに使えそうな写真があれば、振り返り記事を書いてみたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?