社員登用から1年、退職の意思を伝え言われた言葉「能力があるのにもったいない」について。

若いので、やりたいことがたくさんある。絶対にやりたくないことだって。

社員でいる限り付きまとうであろうノルマに、1年目にして音をあげた。

「本当にここのことは大好きです。人にも恵まれました。経営理念だってとても素敵で共感してます。でも、その全てを台無しにするくらい、保険のノルマが嫌なんです。ああいうモノの売り方は絶対にしたくありません」

私は、全社員に課される保険のノルマが達成できなかった。人に勧められるほど良い商品ではない。「あなたが言うなら」と買ってくれる知り合いもいない。

担当者は語る。「金利もどんどん下がってるし、もう目玉と言えるようないい商品も無いけど。それでも売ってください」人様の一生に寄り添う商品に対して。

「あんなん誰も出来んもんやって!」

上司Sは言った。

「気にせんでええって。簡単に辞めるとか言うたらあかんよ。頑張れとは言わんけど……能力があるのに勿体無いやん」

普段ちゃらんぽらんなようでいて、よく見てくれているんだな。ちゃんと管理職してるんやんけ。

もしくはこれまで同じように辞めてきた誰もにそう言ってきたのか。

そう、私には能力がある。

可能性だって。ようわかっとるやんけ。

じゃあ聞くけど、この組織はそれを評価してくれるのか? 活かせる環境を用意してくれるのか? 

私が非正規で働いていた頃、たった2年で何人もの若い人が辞めていった。同じフロアだけで2人。

全員を「保険ノルマ」という同じ物差しではかって追い詰めたおかげで、私のような将来有望な人材を失ってきたんだろう。お前らが気付くまで続くことになるぞ。

それがここの基準なら、変えろとは言わない。でも私にはどうしても無理なので。引き止めるな。日常事務だけやっていれば評価してくれる会社なんて世の中に無限に溢れている。

まだ、意思は変わらない。

「まずは自分で入るやろ。で、家で入ってるのも切り替えていく。みんなそうやって騙し騙しやってんねんって」

ああ、この人も被害者か。

保険はもう、必須の代物ではない。贅沢品だ。そういう考え方を知らないのだ。

「口ではやれやれ言われるけど、営業でもないのに誰も期待なんてしてへんよ。気にせんでええって」

本当に、人には恵まれた。それでも私は組織のあり方だけは気に食わないので。

「何やったら非正規に戻りたいです。まあ、考えといてください」

そう言って、とりあえずは終わりにした。




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