あの日の店員さんを、時々思い出す
ネットショッピングの機会が増えた今でも、お店に出向き、物を購入する機会が多々ある。
服や靴、初めて試す化粧品、本、家電などは、必ず自分の目でチェックしてから購入したい派だ。
レストランに飲み屋にカフェ。
飲食も当然、自ら店に足を運び、注文をする。
その他、病院や薬局、駅やホテルや空港などの公共施設、テーマパーク…など、書ききれないくらい色々な場所で、“接客”というサービスを、私たちは日々受けている。
過去に受け取ったそのサービス、それが例え何日前でも、何ヶ月前でも、何年前であっても。
時々、ふとした瞬間に思い出すことがある。
あの日、あれを私に売ってくれた店員さん。
あの日、お会計を担当してくれて、出口まで見送ってくれた店員さん。
あの人たちは今、元気だろうか。
*
*
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鏡に向かってリップを塗っていて、ふとあの日の彼女を思い出した。
お気に入りのこのリップを、あの日私に売ってくれた、お肌つやつやのかわいいBAさんは、今も元気だろうか。
私に、自分に似合うリップを提供してくれ、自己肯定感という、生きる活力の一部をくれた人。
どこかで、幸せに過ごしていて欲しい。
そう、切に願った。
私の肌診断をしてくれ、必死に肌悩みを聞いてくれたあのブランドのBAさん。
初めてベースを買いに行った日に、楽器について何も知らない私にアドバイスをくれた楽器屋の店員さん。
友達へのプレゼントを一緒に選んでくれた雑貨屋の店員さん。
地方でふらりと立ち寄った、こじんまりとした温かな飲み屋を営むご夫婦。
左右の足のサイズに違いのある私に合う靴の選び方を教えてくれた靴屋の店員さん。
カスタマーセンターに問い合わせた時に担当してくださったテレアポスタッフさん。
旅の際にお世話になったグランドスタッフさんやCAさんやホテルマンさん。
お世話になってきた病院の事務の方、看護師さん、薬剤師さん。
全員の顔立ちを、隅々まで思い出せと言われたら、申し訳ないけれど、それは出来ない。
そこまではっきりとは覚えていない。
それでも、あの日あの瞬間に受け取った、“接客”というサービスは、何故かどれだけ時が経とうとも、心の中に残り続ける。
私が仕事を通してサービスを提供した人たちは、数えきれないほどいる。
その人たちの中で、全員じゃなくていい、たった1人でもいい。
自分も同じように、誰かの中で残り続けていればいいな。
そしてこれからも、誰かの幸せにぶら下がるおまけとして、ふとした瞬間に思い出される存在になりたい。
“あの日担当してくれたお姉さん”、として。
そう思った。
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