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【日記】『胸騒ぎ』観てきた

※映画内容のネタバレが含まれます

『胸騒ぎ』を観たい

見に行く


 田舎の不便な所は多々あるが、明らかに大衆向けでは無い映画が上映されない(されても短期間)という点に関しては個人的には死活問題といっても過言では無い。
例えば近隣のイオンシネマなんかではクレヨンしんちゃんやドラえもん、ハイキューといったアニメ映画などは数ヶ月〜1年近く放映されていることがある。どういう仕組みなのかはよく分からない。とにかく近場で『胸騒ぎ』が上映していないことだけは明らかだった。
そんなわけで、車で1時間半ほどかけ県内で唯一上映していた映画館に足を運んだ。

台風が来ていたので道中大雨
やっていた。良かった。


映画のあらすじ

イタリアでの休暇中、デンマーク人夫婦のビャアンとルイーセ、娘のアウネスは、オランダ人夫婦とその息子と出会い意気投合する。後日、オランダ人夫婦からの招待状を受け取ったビャアンは、家族を連れて人里離れた彼らの家を訪れる。再会を喜んだのも束の間、会話のなかで些細な違和感が生まれていき、それは段々と広がっていく。オランダ人夫婦の“おもてなし”に居心地の悪さと恐怖を覚えながらも、その好意をむげにできない善良な一家は、週末が終わるまでの辛抱だと自分たちに言い聞かせるが——。徐々に加速していく違和感は、観る者を2度と忘れることのできない恐怖のどん底へと引きずり込む。

映画『胸騒ぎ』公式サイト 2024/5/30



『胸騒ぎ』を観た

感想と疑問

 胸糞とは聞いていたが、本当に後味が悪い感じに終わってしまった。『北欧ヒューマンホラー』とあったので何となく予想はしていたが(このジャンルは良い結末を迎えるイメージがあまりない)、小さな子どもが被害を受けるのは中々に堪える。SNSで見るように「とにかく胸糞好きにはオススメ」と言ったところだ。
 自分も好みなジャンルではあるが、本作に限っては「お、そうか……」という気の抜けたような感覚を抱いて見終わってしまった。
 というのも、この作中に出てくる登場人物の行動がいまいち理解し難いものであったからだ。


└ 疑問① デンマーク人夫妻の口下手さと行動

 登場人物の行動に「なぜだ?」と疑問を抱くことは度々あったが、特に気になった点は一度オランダ人夫妻の家を出た後、アウネスのうさぎのぬいぐるみを取りに戻った際のことだ。

 オランダ人夫妻に詰られるビャアンとルイーセは、黙って帰った理由について夫妻に対する不満を口にする。それもかなり馬鹿正直に。

 例えばここでビャアンが「仕事の都合で急に帰らなくてはいけなくなった」と言えばあそこまで角が立つこともなかったと思う。これは国民性の違いもあるのだろうか。

 ビャアンとルイーセ(とアウネス)は「善良な一家」として書かれているので、本音をぶつけることで関係の修復を行おうとしていたのかもしれない。そして違和感を抱きながらもオランダ夫妻の提案を受け入れる。

 とはいえ、オランダ夫妻の提案を受け入れたことに関しては、ルイーセにとっては昨晩泣き叫ぶアウネスを放っておいてセックスに興じていたこと、ビャアンにとってはその現場を見られていたことに後ろめたさがあり、その流れで受け入れたようにも見える。

 とはいえ、実質これが逃げる最後のチャンスだった。
 夫妻の家に戻ったのはアウネスの不注意によるものだとしても、滞在を決めたのはビャアンとルイーセである。終盤で聞く「差し出した」の言葉はオランダ夫妻にとっては正にそうだったのだろう。
 ビャアンが普段の生活における愛想笑い(”普通”でいること)に疲れたことを吐露するシーンがこの後にくるが、そこまで表面上を取り繕うことが可能な設定であれば、この場でも上手くやれたのでは……と思ってしまう。


└疑問② オランダ人夫妻の目的


 物語において悪役の生涯が本編中に描かれることはほとんど無い。例えば善悪の役割りがきちんと分けられているディズニー映画でも、悪役の過去が本編中に明確に描かれることはない。『エスター』や『X エックス』などは続編でその生涯や生い立ちを描いている。
 このオランダ人夫妻についても、極めて残虐な殺人と子どもの誘拐繰り返している動機は明確には描かれてはいなかった。なにか仄めかしがあるかと思ったが、自分の目と知識量では捉えられなかった。

 思いついた一つが、子どもに恵まれない夫婦であったから子どもが欲しかったというものだが、もし仮にそうであれば、まるで壊れたパーツを取り替えるように子どもを取っかえ引っ変えしないだろう。
虐待めいた仕打ちや、危害を加えることもそうだ。とても子どもに愛がある”親”の行動ではない。(この辺りはデンマーク夫妻との対比で分かりやすい)

 であれば、考えられるのは単純にお金が目的ということだ。オランダ人夫妻はバカンスに訪れている家族に狙いを定めていることはラストに再び映し出されるプールなどのシーンで予測できる。
 こうした観光ツアーに参加する者は、ある程度生活に余裕(時間的も金銭的にも)がある者だと私は考えている。(あくまで日本に住む私の感覚なので違うかもしれないが)

 デンマーク人夫妻は都会に住み、生活水準としては不自由のない良い暮らしをしている。
 こうしたツアーに参加する富裕層を狙い、人当たりの良さで仲良くなり、夫妻は殺害、持ち物の財布などから金銭を奪い、子どもは次のターゲットの警戒心を解くために喋れないようにして我が子として扱う。
 オランダ人夫妻の夫であるパトリックが本当は無職であること、敢えて「医者」と言っていたことも、これまで殺害してきた家族の標準的な職業に合わせたのかもしれない。


└疑問③ オランダ人夫妻の杜撰さ

 ここまでこじつけてはみたものの、オランダ人夫妻のやり方はかなり杜撰に感じる。

 人気のない田舎とはいえ、死体の処理はどうしているのか。小屋の写真はかなりの枚数がある。これまでの夫妻も今回のデンマーク夫妻と同様の殺害方法ならその処理に多大な手間がかかるだろう。(映像としてのインパクトはあるため、雰囲気重視だったのかもしれないが)

 オランダ人の夫妻は恐らく次回以降アウネスを我が子として扱うが、親と子の国籍が異なるという点について懸念は無いのか。そこまで見た目の違い感じないものなのだろうか。

 そもそも、普通に怪しまれないのだろうか。
 例えば今回のデンマーク夫妻に関しては出立前に知人(友人?)にオランダへ行くことを伝えている。長く連絡が取れなければそういった近隣のものが不審に思うのではないのか。また彼らはご丁寧に住所が示された手紙を送っているため、怪しまれたらすぐにバレてしまうのではないか。とても小屋にあった枚数分の犯罪を上手く隠し通して行えたとは思えない。


└全体の感想

 他の感想でも見かけたが、登場人物の行動が不可解なので聖書など何かしらに沿っているのかとも考えたが、そういった話は見つからず、上記の疑問は未だに上手く消化しきれないでいる。

 自分の馬鹿さ加減が露呈するので、あまり細かいことは気にしない方が良いのかもしれない。また有識者の考察や感想が出るのを待とうと思う。


帰宅する


 ひとまず目的は達成したので帰宅することにした。
 パンフレットは売り切れていたため、代わりに別の映画のパンフレットを購入した。

実はまだ観れていない映画のパンフレットである


 そういえば映画のパンフレットは海外にはないみたいな話をどこかで見かけたのだが本当なのだろうか。

ミッドサマー!

 なんとこの次は『ミッドサマー(ディレクターズカット版)』が上映されるそうだ。堪らなく見たいが、雨足があまりにもえらいことだったのでやむなく撤退した。

 ここ何年かは夏至祭に合わせ新宿やそこらでよく上映しているイメージがある。都内に住んでいた頃一度だけ夏至祭に合わせて見に行ったが、毎年全国で恒例上映にして欲しいと思っている。

 そういえば北欧ホラーによくあるズーンとした不気味な野太いBGMがすごく好きなのだが、未だにあれが何の楽器なのか(そもそも楽器ではないのか)分からない。

 帰り際にフライヤーを見ていると口の中がぽっかり空洞になっている(=舌がない)ことに気づいた。見終わったあとに「なるほど」となるデザインで結構好きだった。

原題は『Speak No Evil』らしい。
『胸騒ぎ』という訳もある種的を得ていて好きだが、ストーリー的には原題の方が意味合いが伝わりやすい気がする。

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