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Strawberry Fields ForeverがPaul McCartneyに与えた影響とは?

John Lennonが書いた『Strawberry Fields Forever』…シングル向きかどうかは別として、世の中に与えたインパクトは大きかったはず。
でも、そんなオーラなんて物ともせず、完璧なポップソング『Penny Lane』をぶつけて来るPaulもやはり只者ではない。

1967年2月17日、ビートルズはこの2曲を両面A面シングルとしてリリースしました。
新たな幕開けに相応しいシングルです。

Paulは何に反応したのか?

さて『Strawberry Fields Forever』については、キーもコードもアレンジも違う2種類のトラックを半分にぶった切って繋げたというのは有名な話ですよね。
しかも、この無理難題を『貴方なら出来る』とプロデューサーのジョージ・マーティンとエンジニアのジェフ・エメリックに押し付けてスタジオを出て行ったJohn。
本当に無責任でイイ加減な奴ですが、そんな無茶振りも平然とやって退けるビートルズの有能スタッフには脱帽です。

この曲で、ビートルズ(John)として初めてやったことの一つが、曲か終わったように見せかけて再び始まるパターン。
Paul死亡説の理由の一つとなった『I buried Paul. (Cranberry Sauce説が有力ですが)』と喋っているところですね。
Johnにしてみれば、ふざけてやってみた程度だと思いますが、Paulは『やられた!』と悔しがったに違いありません。

意外性で人を驚かす。
人のビックリした顔を見るのが楽しい。
転んでも只では起きない。
そんなPaulのエンターテイナー気質にピッタリの手法でした。

余程気に入ったのか、Sgt. Pepper’s以降の後期ビートルズ、解散後のソロ、Wings時代に亘って、何度も繰り返しやってます。

一方、Johnはこれが最後じゃないかな。

Paulが実施した事例

この手法にはザックリ2種類のパターンがあります。
勝手に名前を付けましたが
『ソング型』『アルバム型』です。
また、そのどちらの要素も持つ『折衷型』もあります。

『ソング型』は、一曲の中のエンディングで意表を突くパターン。『Strawberry Fields Forever』や『Hello Goodbye』がこのパターンですね。

『アルバム型』は、アルバム内の曲の配置で行うパターンで、アルバム最後の曲(または最後に相応しい雰囲気の曲)が終わった後で小品を入れるケースです。

ここからはレコード時代の事例をいくつか紹介しましょう。

①Sgt. Pepper’s inner groove(1967年)

典型的な『アルバム型』です。
アルバム『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』のB面ラストに入っている名前もない「雑音」ですね。
『A Day In The Life』の長いエンディングの余韻に浸っていると唐突に割り込んできます。靄がかかった空想の世界から現実の世界に引き戻される感じ。Paulの狙い通りです。

オリジナルUK盤は、音溝が無いDead Wax部分に溝が刻んであり、しかもループになっているためエンドレスで続きます。

因みにオートリターンのレコードプレーヤーでは、ループせずにアームが戻ってしまいます。

僕はこれを聴きたいためにオートリターンではないプレーヤーを使ってます。しかし他のアルバムを聴くときは落ち着いて聴いてられないというデメリットがあります。特にシングルを聴くのには不向きですね。

アメリカ盤はinner grooveはカットされて一切入ってません。
日本盤はDead Wax部分ではなく通常の溝の部分に入っているため適当なところで切ったバージョンになってます。
CDはフェイドアウトします。

各国で扱いが異なるのは不思議です。

そもそも、このInner Grooveってどうなんでしょう??
初めて聴いた時は驚きますが…。
アメリカ盤のようにアルバムを聴き終えた満足感の余韻を味わっていられる方が良くないでしょうか?

②Helter Skelter(1968年)

『ソング型』です。
フェイドアウトして曲が終わった…と思ったらフェイドインして来るパターン。『Strawberry Fields Forever』と同じパターンです。
いや、もっと複雑... と言うかクドイです。
3回も終わったと思わせて、リスタートしています。
最後はリンゴの叫び声「I got blisters on my fingers!」の後でフライパンで叩いたような音で締める凝りよう。
Paulらしい執念、粘り腰、サービス精神を感じます。

因みにモノミックスはステレオミックスと違いエンディングの復活も1回のみで、自然と言えば自然です。

③Her Majesty(1969年)

これが『折衷型』です。

小品ながら独立した曲でアルバム内の配置によるものですから、基本的には『アルバム型』のパターンです。
B面はメドレー形式で一気にThe Endへ。
3人のギターバトルを経て『はい、お仕舞い。お疲れ様でした!』とドラマティックにアルバムを締めた後の『ジャ〜ン、Her Majesty’s a  pretty nice girl...』と始める典型的な『アルバム型』の手法です。

しかしアコースティックのオマケみたいな曲なのにエンディングをブチっとカットしてしまう点は明らかに意外性を狙った手法で『ソング型』の要素も待っています。

そのため『折衷型』と思っています。
サービス精神旺盛なPaulらしいですね。

④The Back Seat Of My Car (1971年)

アルバム『RAM』はビートルズ解散後のソロ2作目。Paulのアルバムの中で僕が一番好きなアルバムです。
Pepper’s以降Paulはアルバム内の曲の構成を一層意識するようになっています。
コンセプトアルバムではないですが、各面の始まりや終わりを意識しB面終盤に盛り上がる曲を配置したり、曲をメドレーにしたり、repriseを入れてみたりと工夫を凝らしています。

このアルバムでは、
▶︎『Uncle Albert / Admiral Halsey』がメドレー
▶︎『Ram on』はB面にもrepriseを入れてる。しかもエンディングに、後のアルバムでリリースする『Big Barn Bed』のフレーズWho's that coming 'round that corner?をチラ見せしてる。
▶︎B面ラストは超盛り上がる曲『The Back Seat Of My Car』で大団円を迎える。
という内容になってます。

この様なアルバム構成の中では『The Back Seat Of My Car』で典型的な『ソング型』の手法を使ってます。

3分40秒辺りから一気にギアアップするところは何度聴いても鳥肌モノ。
そして最後の最後は、やはり素直に終わらない(終われない?)Paulのスタイルで締めくくってます。

⑤Band On The Run
(1973年)

ここまで来ると「絶対あるだろう!」と思ってしまいますが、期待通り『アルバム型』でやってくれます。

アルバム自体はA面から淡々と進んで行きますが、B面の最後から2曲目『Picasso's Last Words 』でA面収録曲の『Jet』『Mrs Vandebilt』を変奏曲風に組み込んで何か起きそうな兆しを覗かせます。

そして、ダイナミックなラストナンバー『Nineteen Hundred and Eighty Five』へ。曲の後半でR.シュトラウスの『ツァラトゥストラはかく語りき』風に最高の盛り上がりを見せて終了に....,,

で、やっぱり、Band on the run... Band on the run... Band on the run...

凝りない人です、Paulは。

⑥Crossroads(1975年)

アルバム『Venus And Mars 』はWingsの中で最も充実したアルバムだと思います。
曲のクオリティ、アレンジも申し分無いし、アルバム内の構成も良く考えられてます。

オープニングは『Venus And Mars』と『Rock Show』のメドレーで、静から動への展開がカッコいい。
そして『Rock Show』のエンディングでお決まりの『七転び八起き』パターンで再開します。
ピアノで始まるこのパートのグルーヴが最高です。ワクワクします。

アルバム構成で言えば、
A-1 『Venus And Mars 』
B-1 『Venus And Mars (Repise)』
が配置され、B面後半は『Listen To What The Man Said』から切れ目なくメドレーの『Treat Her Gently / Lonely Old People』に繋がって終わりを迎えます。

安心してください。
しっかり最後にオマケが入ってますから。

今回はこの『Crossroads』の紹介を。
『Crossroads』はイギリスで1960年代半ばから長く続いたドラマで、そのテーマ曲をカバーしたものです。
残念ながらこのドラマを観たことがないのでオリジナル曲も全く知りませんでしたが、「アルバム最後に打って付けのドラマティックな曲だ」と思ったものです。
Paulが言うには『Lonely Old People』に絡めて冗談で選曲したそうです。

後にオリジナル曲を聞いた時は、そのギャップに驚きましたが、逆にPaulのアレンジのセンスを感じます。

終わりに

『Strawberry Fields Forever』がPaulの創作意欲に火を付けたことで、エンタテイナーPaul McCartneyの遊び心が溢れる多くの傑作が生まれました。Johnの功績ですね。
最高です。本当に良かったと思います。

まだまだ彼のお遊びはありますが、今回はこの辺で。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。








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