考えるときにこれを見落とすから騙されやすくなる「批判的思考」+9
クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+1,+2,+3,+4,+5,+6,+7,+8)
前回は原因推測の落とし穴の1つ、「平均方向への回帰」を説明しました。今回は、前-後論法を使うときの注意点としての「欠落したケース」について説明します。
こんな落とし文句には気をつける
たとえば、「1ヶ月続けただけで効果絶大!話題のダイエットグッズが今なら半額セール中!」と書かれたチラシを「クレヨンしんちゃん」のしんちゃんのお母さんが見たとしましょう。
みさえは、「あら…これなら痩せられるんじゃない!?」とウキウキしながらチラシを観察しています。書かれている内容によると、1ヶ月試した被験者は、体重が5キロも痩せてスリムになったそうな。
この前-後論法を信じたみさえは、さっそくダイエットグッズを購入して次の日からやり始めました。しかしこのダイエットグッズ、やり込むのがめちゃくちゃ大変。1日15分だとしても猛烈に疲れるし、これを30日間続けるのはさすがに無理…
ということで、すぐに収納の奥へ消えていきました。
途中で脱落した人の意見は聞いた?
ダイエット効果を謳うチラシの前-後論法が危険なのは、途中で脱落した人たち、つまり最後までやりきらなかった人たちの話が入っていないのです。みさえの例で言えば、やりきった人の美談のみを鵜呑みにして、やりきれなかった人のマイナス意見を無視しているのです。
プラスの意見だけが目に付き、マイナスの意見を聞かない(探さない)ので、まちがった原因推測をやりがちになるのです。この考え方は以前に説明した「ブックエンディング」の考え方に似ています。
良い結果と悪い結果の両方を想像して思考に幅をもたせ、その幅で起こる結果にたいしての対策が必須。想像した未来には、幅があるからです。
3日坊主になるかも…と1度でも考えれば、データの妥当性を確認できる情報を探し始めるはずです。失敗した人の特徴や原因など。
選択肢はこれだけか?と考えてみる
「ブックエンディング」の考え方は、欠落したケースを探す1つの手段です。ほかにも欠落した情報を探す手段があり、今まで説明してきた「平均方向への回帰」や「同時発生の原因」などがそれにあたります。復習も兼ねてすべてを使ってもう1例考えてみましょう。
たとえば、素行の悪い息子を更生プログラムに参加させようとする親がいるとします。親はよさそうな更生プログラムをいくつかリストアップし、どれにしようか考えています。
1つ気になったプログラムがあり、100人の親子が参加して70人がそのプログラムをやりきったと書かれていました。やりきった子は、素直でやさしい子に生まれ変わったと。
その親もこの前-後論法を信用して、ここでプログラムを受けると決めました。しかしほんとうに目に見える数字だけを信じてよいのでしょうか。みさえの例と同じく、都合の良い数字だけを見ているので、原因推測がまちがえやすいのです。
このように結果の原因を分類分けして細かく考えるだけでも、ほんとうに更生プログラムが必要か考えるきっかけになります。選択肢がプログラム一択ではなく、「話し合い」や「様子を見る」も加わりますから、広い視野を持ちつつ思考できるのです。
まとめ
原因推測の落とし穴を細かく説明してきました。原因を推測するときのぼくたちの思考回路は、欠陥が多く不良にる傾向にあるようです。ただその欠陥も意識的な努力をすれば改善が見込めます。良質な思考を続ければ、失敗の数も減っていくでしょう。
まだまだクリティカルシンカーには程遠いですけど、これからもより良い思考をする努力を続けていきたいですね。
【考えてみよう】
3ヶ月コミットすれば必ず10キロ痩せる!を謳うパーソナルジムがあった。このジムに入会しようか迷っているがなんだか怪しい気もする。このジムに参加者の中には続かなかった人もいるはず。それらの人を考慮しつつ参加するか考えてみよう。
動画での解説はこちら↓↓↓
クリティカルシンキング「原因推測の落とし穴:欠落したケース」+9の解説
読んでいただきありがとうございます。これからも読んでもらえるとうれしいです。