スピリチュアルな思考に騙されず考える方法「批判的思考」+7
クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+1,+2,+3,+4,+5,+6)
前回は原因推測の落とし穴の1つ、「相関の錯覚」について説明しました。今回は、「前-後論法」について説明していきます。
こんな前-後論法には気をつける
たとえば、2020年の東京都知事でAさんが知事に決まり、2年経ったとしましょう。そのときAさんはこう主張します。
「わたしが知事に就任したため、プラスチック袋の使用が減り、環境問題が改善しました!」
数字で確認しても、Aさんが就任してからスーパーやコンビニでは、マイバックの使用が増えているとします。この共変関係を使って、Aさんは自分が環境問題を改善したと言っているのです。
このような「以前はこうだったけど、ある出来事があって変わったよ」と過去と今を比較する説明は、日常的に多く使われています。使いやすい論法ですし、説得力もあるように見えますね。
しかしこの前-後論法は、因果関係を示す上でたいした強みになりません。この論法は、以前お話した「第3変数」を思いっきり無視しているからです。
同時に発生した他の原因は?
もちろんAさんが都知事に就任してから、マイバックの使用を啓発しまくっていたとしましょう。であれば原因の1つとして考えられるかもしれません。
しかし実際の原因を探る上では、「第3変数」の存在をキッチリ確認する必要があります。他の要因が排除されて初めて、前-後論法は使えるのです。
大事なのは、Aさんが都知事に就任したときに、同時に発生した他の出来事がないかを探すこと。そしてその出来事が、真の原因になりえないか分析しましょう。
この例で言えば、以下のような同時発生の原因が起こっていたと仮定します。
都知事選と同じタイミングにスーパーやコンビニでのレジ袋が有料化され、環境改善を後押しする制度が生まれています。つまりAさんが都知事になるのとマイバックが増えたのには、強い因果関係は存在しないのです。
このようなツッコミができる時点で、Aさんの原因推測はまちがっています。
自然発生による原因も見落とさない
話をガラッと変えて、違う例で考えてみましょう。
たとえば、「わたしが祈り続ければ雨が降るのだ〜!」と主張するおばあちゃんがいるとします。このおばあちゃんは、10日ほど祈り続けた結果、街に雨が降ったそうです。
この雨は、おばあちゃんの力でしょうか?いいえ、自然の力ですね。
この話は笑い話ですが、本来は自然に発生するはずの現象を他の原因とすり替えてしまう事態は多々あるでしょう。
他の例で言うと、
「なにもしなくても女の子が寄ってくるんだよね」と福士蒼汰さんが言えば、それは当たり前の話です。彼は芸能人でイケメンです。そりゃモテます。しかしそんな彼が、「なにもしなくてもモテる3つの方法!」なんてYou Tube動画を出したとして、説得力はあるでしょうか。
「第3の変数」がすべてをもっていく因果関係は、探してみるとたくさんあります。
まとめ
「前-後論法」の教訓は、以前お話したように、人は「目立つモノ」や「突発的な出来事」を原因とみなしがちだということです。おかしな前-後論法がまかり通るのは、まさに相関の錯覚が原因と言えるでしょう。
影響力のある著名人でもこの論法はよく見かけるので、騙されないように考えていきたいですね。いつでもクリティカルシンキングを忘れない意識で。
【考えてみよう】
「親がすばらしいからこんないい子が育ったんですね!」系の教育称賛テンプレートをよく耳にしますね。親の教育が子どもの未来を決めると言い切るような発言です。
この発言に、同時発生の原因や自然な原因が存在しないか考えてみよう。
動画解説はこちら↓↓↓
クリティカルシンキング「原因推測の落とし穴:「前-後論法」+7の解説
読んでいただきありがとうございます。これからも読んでもらえるとうれしいです。