これを検討する前に原因を推測してはいけません「批判的思考」+6
クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+1,+2,+3,+4,+5)
前回までで原因を推測するための3つの基準を説明しました。しかしこの3つ以外にもクリアしなければいけない問題があります。今回は、原因推測を間違えやすい4つの落とし穴の1つ、「相関の錯覚」についてお話していきます。
こんな共変関係には気をつける
相関の錯覚とはつまり、共変関係が存在しない部分に相関関係があると錯覚したり、相関関係が過剰にあると勘違いしてしまうことです。
相関関係があると思いこんでしまうと、その共変関係を参考にまちがった原因推測をしてしまいます。
たとえば、「わたし雨女なんだよねぇ〜」は相関の錯覚の典型例です。その女性が外に出れば、雨が降るわけですよね。つまり彼女は、天気を操っているわけです。
実際は存在しない相関のはずが、自分の直感や思い込みによって状況を判断してしまっています。
もう1つ例を出しましょう。「縁結びスポット巡りをしたわたしなら、理想の男性を見つけられるわ!」です。
この考え方は大変興味深く、相関の錯覚が迷信やジンクスを作り出すきっかけになっているとわかります。縁結びスポットを巡るのはモチベーションアップとしてつかえますが、だから理想の男性が見つかるとは言えませんよね。
気の持ちようをコントロールしているに過ぎません。
自分が望むものを見る危険
前提として、出来事の原因を探るときに先入観や気分に左右されずに分析するのは、ほとんど不可能でしょう。たいていは、自分が経験した出来事や印象に残っている思い出を参考に原因を推測しがち。
共変関係を探すとき、人は「ふつうより目立つ」だけで原因と決めつける傾向があると以前説明しました。同じように、人は自分が望む原因を見つけようとし、その原因を高く評価するクセがあるようです。
そして相関の錯覚が厄介なのは、この錯覚が体の良い言い訳に使えることです。誰にでも「ぼくは〇〇だから、△△ができないんだ」のような1文で悩みを抱えた経験があるでしょう。
この「〇〇」と「△△」は相関の錯覚であるケースがたいへん多い。僕の例で言えば、「ぼくは内向的だから、コミュニケーションが下手なのかもしれない」と思っていた時期があります。
が、この原因推測は間違っていますね。そもそもなにを根拠にコミュニケーションが下手と言っているのかも疑問ですし、「内向的=コミュ力が低い」と思い込んでいるのもダメ。
自分の変えられない部分を理由に、「だからこうなんだ」と自分を納得させるのはカンタンですけど、納得させる前にきちんとクリティカルに考える習慣は必要です。
実際には相関関係がないのに、あると思いこむなんてもったいないのです。
まとめ
迷信や信仰が生まれるきっかけが相関の錯覚なのであれば、これらがなくなる日は来ないのかもしれませんね。どんな人間でもフラットに思考するのはむずかしいですから、おかしな誤解を生んでしまいます。
しかし日頃からクリティカルに考えて自分の考えに疑いを持てれば、相関の錯覚を起こす失敗も減らせるはずです。だからこそ、日々良質な思考を心がけるのが大事なのだと思います。
【考えてみよう】
とある公園の「あひるさんボート」に乗ったカップルは、高確率で別れてしまうジンクスがあるとする。自分はボートに乗りたいのに、恋人はこのジンクスを信じてボートへ乗ることを拒否している。
相関の錯覚が起こっていないか、考えてみよう。どうしてこのジンクスが生まれたのだろう?
動画の解説はこちら↓↓↓
クリティカルシンキング「原因推測の落とし穴:相関の錯覚」+6の解説
読んでいただきありがとうございます。これからも読んでもらえるとうれしいです。