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ゴールがみえなくてもスタートすべきこともある:差別の是正から多様性の確保へ

女性役員比率の向上

政府は、東証プライム市場へ上場する企業に2025年をめどに女性役員を最低1人、女性役員比率を30年までに30%以上とする目標を方針として盛り込みました。いずれもまだ努力義務ではあります。

グローバルノースの末端に含まれる国としてまだ「そんな」程度なのかと思えてしまうかもしれませんし、なぜ意思決定の場に多様な声を入れるべきなのかというゴールを示すべきだという意見もあるかもしれません。

米国でも最初は「そんな」程度だった

その昔、米国においては、人種・民族的マイノリティ、女性及びその他の歴史的に差別を受けてきた集団について、その機会を増進するためのいわゆる「アファーマティブアクション」により、黒人や女性をあえて積極的に企業に採用することが進められました。

一例としてベル研究所での対応を挙げてみましょう。

ベル研究所ではその当時、いわゆる「白人」の研究者が多く、ほんの少し中国系などが入っている程度だったそうです。そのときにこうした動きへの対応が迫られました。さて、どのように対応したと思いますか?

答えは「黒人女性の秘書」を積極的に採用したそうです。なぜなら、そうすれば人種の比率向上、女性の比率向上、両方を満たせるからです。

いまから考えれば、そんな「ハック」的なやり口は批判されるかもしれません。でも、米国ですらスタートはそんな程度だったということです。

多様性の科学

サイドは「多様性の科学」において、問題空間において、適切な多様性を担保することの必要性を説いています。

四角で示した「問題空間」があるとして、その中にある知識空間をもった人を四角の中の小さな円で示しています。問題空間の広さに対して、人の知識空間が十分でなかったり、どこかの部分に偏っていたりしたら、問題解決を行うのが難しいということになります。

経営という「見えない問題」に向けて

人は目の前に見えている課題に手をうつことはある程度できるかもしれません。

つまり、問題空間が定義できていれば、そこにアプローチできる多様な人を適切に配置していけば、問題に対処できる期待を高められます。四角のなかに、円をうまく敷き詰められればいいということです。問題空間が定義できているのであれば、やみくもに多様性を求めるのはいろいろなコスト(人件費もコミュニケーションコストも)増につながってしまうかもしれません。

しかし、いま企業経営にとっては、見えている問題に対処する力よりも、見えていない問題を探す力、見えていないものを見えるようにする力が必要な気がします。

多様性を担保するというのは、問題を探す探索空間を広げることでもあるのでしょう。

例えば、個人的な経験としても、均質性の高い組織において「何か関心のあるトピックを集めて」とお願いしてみると、複数の人が「日経新聞」の「同じ記事」を拾ってくることがしばしばあります。

それではきっと見えていない問題を探せていないのでしょうし、見えているものを見ているに過ぎないのでしょう。

世界を「みる」力を高めるにあたっても、いろいろなマインドを持ち、いろいろなスキルを持った人間の協働が求められるのだと思います。

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