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もう無いと思っていた帰省

2024年、6月6日。

この日僕はふと、祖父母の顔が思い浮かんだ。
おじいちゃんと仲違いしてから、
半年が経とうとしていた頃だ。
(その背景は、下記のリンクからご覧下さい)

親戚のいとこに「どうか仲直りしてほしい」
と言われたことばが、脳裏にずっとあった。

ずっと「帰らないとな」と思いながらも、
なかなか重い腰が上がらずにいたが、
日が経つにつれ仕事が忙しくなり、
プライベートも暫く連続で
空いてる日がないことが分かったので、
土日どちらもの休みがあった今週(6月8、9日)
に大阪に帰ることを決行した。

仕事終わりにおばあちゃんに電話し、
「明日(金曜日)新幹線でそっち帰る」と言い、
アポを取り付けた。

なぜこのタイミングで重い腰が動いたのかは
自分に聞いてみても分からなかったが、
あまり深いことはなるべく考えないように、
金曜日の仕事終わりに直で品川へ行き、
大阪に帰ることにした。

新大阪に着いたのは22:30だった。
以前行ったときよりも地域開発が進んでおり、
徒歩3分の最寄り駅が完成していた。
僕はその気新しい匂いを感じる駅に降り、
家に着いた。

マンションの廊下を歩いていると、
最奥でおばあちゃんが既にスタンバっていた。
「待ちわびすぎでしょ」と思いながらも、
ものすごい懐かしみと嬉しさを感じた。

軽く世間話をし、
家に入ると奥のソファにおじいちゃんがいた。

案の定、おじいちゃんは気まずそうにしていたが、
とりあえず「お久しぶりです」とだけ言い、
晩ご飯にありつけた。

相変わらず野球部の合宿並のご飯の量だったが、
なんとか全部食べてひと段落した。

その後僕もソファに座り、
あの件の切り出すタイミングを伺いながら
20分が経ったが、
「半年前は、ごめんね」
と僕の方から声をかけた。

おじいちゃんは拍子抜けしたのか、
「…あぁ」
とだけ返ってきた。

本当は自分の気持ちを伝えたりとか
おじいちゃんの本心を知りたかったが、
話はそこで終わってしまった。

けど、それでいいと思った。

背景はどうであれ、
あのときはお互いの意見や気持ちが
バチバチにぶつかって、譲れなくて、
仲違いしてしまった。

その出来ごとだけを捉えながら、
「もう二度と会わねぇ」と意志を固めていた。

あれから自分も勉強して
色々考えるようになって、
考え方が変わってきた。

僕はあのとき、相手を理解しようとせずに、
自分の気持ちだけをぶつけていた。

いくら自分にとって傷つくことばを
向けられたとしても、僕はおじいちゃんのことを
理解する必要があった。

おじいちゃんはなぜ僕に向かって
「お前には家族愛がない」と言ったのか。

僕はそれに対して逆上するのではなく、
まず「なんでそんなことばを僕に言ったのか」を
理解しなければならなかった。

僕には僕の正義があって、
おじいちゃんにも勿論それがあって、
当時の僕は、
相手をまず受け入れる、理解する
ということができていなかったから、
言われたことばだけを受け取り、仲違いした。

おじいちゃんも本当は、
あんなことばを孫に向けたくなかったと思う。

だけどそれを言ってしまったくらいの背景がある
ことを、理解する必要があった。

なにより、
お互いわだかまりが残ったまま死なれたら、
その時こそ俺もおじいちゃんも
この解決できなかった関係を悔やむだろう。
そんなのは嫌だと思った。

ことばを伝える前も今も、
別に当時の後悔も申し訳なさもない。
けど、まず理解する、ということに気づけたから
今回帰る意思が出来たんだなと、
後々になって思った。

頑固者で素直じゃないから、
謝りのことばが返ってこなくても、
本心では申し訳ないと思っているだろうから、
あそこで話が途切れても、それでいいと思えた。
不器用なりの謝り方を心で感じたから、
それでいいと思った。

だから今回で、
まず相手を理解する、ということが
どれだけ大切なことかが分かった。

おじいちゃんを、恕すことができた。
もう無いと覚悟してたけど、
またこの景色をみることができた。


6月9日。
帰る時間になり、
おばあちゃんが駅まで送ってくれることになった。
おじいちゃんは最後までぎこちなかったけど、
玄関越しに奥にみえる手を振り返した。

歩きながらおばあちゃんが
「あと何回来てくれるんやろうねぇ」
と呟いた瞬間、涙が止まらなくなった。

僕とは違い、おじいちゃんとおばあちゃんは
残りの命を数えられるほどの歳になってしまった。

どうしようもない悲しみが、
数年後僕に襲ってくることを一旦押し殺して
「会えるうちにたくさん会っておくよ」
とおばあちゃんに言った。

「生きていくためには必死に頑張らんとね」
僕はおばあちゃんから貰った生きる勇気を
ちゃんと心にしまって、またがんばろう。


明日からまた仕事だ。

またねおじいちゃん、おばあちゃん。
お金貯まったらまた行くからね。

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