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「Let go」 Inner MBA 体験記 #36

9ヶ月のInner MBAも、いくつかのライブQ&Aセッションを残し、いよいよ最後の週を迎えた。ラストセッションの講師は Scot Shute、LinkedIn の元VPであり、現コンパッション&マインドフルネス部門統括。私のお気に入り講師の一人でもある。

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テーマは 「Activating Your Inner MBA」

Activating というのはビジネス英語によく出てくる言葉で、活性化させる、駆動させる、実行(アクション)に移す、といったニュアンスだ。

Scottに限らず、マインドフルネスを心の筋トレと例える人は多い。そして、筋トレにおいて体幹=Inner Muscle を意識しないと効率的なトレーニングができないように、ビジネスの世界でも Inner Muscle が肝となる。この9ヶ月鍛えてきたことをもっと効果的にするため、最後の週は心の体幹トレーニングをしようということだ。

選択のLet go

講義の中で「Let go 」という言葉が何度も出てきた。ディズニーのあまりに有名な映画ソングを持ち出すまでもなく、「手放す」ということだ。雑念やこだわり、偏見などを心の内から手放し、解放していく。

例えば、二者択一に迫られたときの Let go テクニックが紹介された。これを使う場面はスーパーでどちらのシリアルを買うか?でもいいし、どちら仕事を受けるか?でも、最も大きい人生の決断...例えば、この人と結婚する/しないか?でもいい。

オプション1と2があったとする。まずは瞑想の中で、オプション1について考える。そして、1を選んだ自分になりきる。想像し、身体に浸透させ、その人生が骨の中まで染み渡る。それから、身体をラクにし、口の周りにかかっているテンションを緩める。深呼吸する。オプション1を心の中で一気に獲得し、それから解放する(Let go)のだ。オプション2についても同じことを繰り返す。

このプロセスを通して、どちらが自分にとって正しい選択なのか感じることができる。わかるのではなく、感じる。パレットについた絵の具が、洗い流されずそこに残るように。

Scott はかつてLinkedInで非常に重要なポジションを採用する際、最後の候補者二人に対してこの手法*を使って決めたとのこと。

「片方の候補者に対してなぜかオレンジ色のサイのイメージを感じた。彼がいつもオレンジ色のリュックを持っていたからかも。なぜか心に引っかかった。翌日、スターウォーズの映画を見ていたら偶然、オレンジ色のサイが出てきて...それが正しい選択だという声を聞いた気がした」

*個人的に思い出したが、これはGoogleのエアポートテストにも近いものがあると思う。

面接官は、空港で飛行機が飛ばず、近隣のホテルも満杯といった状況を想像し、「この人と一緒に空港で一晩閉じ込められても耐えられるか」と最後に自問自答します。明日の朝まで一緒にいられそうだと思えばその人を雇うんです。 - 村上憲郎・グーグル日本法人元社長

内なる声とLet go

自分の内なる声を聞き、従うべし、というのはよく聞く言葉だ。簡単に思える。

ただし、それができないために現代人は振り回され、多くの場合、欲や見栄や世間体に苦しんでいる。実はこれらは全て他者の声であり、自分の Inner Voiceではない。

上記のような選択肢すらもわからないとき、どのように心の中に入っていき、願望を見つけ出し、アクティベートすればいいのだろうか。

Scottがもう一つ紹介した瞑想(というより思考実験)はこうだった。

「本島からから離れた島にボートで着いたことを想像する。あなたは手ぶらだが、島にはパルテノン神殿のような建築物の基礎がある。そこに階層や修飾を加えていく。出来上がってきたら、誰でも好きな人を招待して、中にある本でも絵でも、好きなものをあげる....そして、力を抜き、息を吐く。今のイメージをここで解放する(Let go)」

子供の頃、積み木で空想の世界に遊んだように、この体験で得られるのはあらゆる制限がなく、創造的な自分の姿だ。それが内なる声を聞く一つの方法である。

思考実験的とはいっても、実際にやってみると、この想像はかなり深い集中に入っていなければ難しい。

体幹トレーニングで言えばキツい体勢を長時間保ち、その後一気に力を抜いて筋肉を解放するプロセスに似ている。

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今回の講義の最初に、Mystic(神秘主義者)という単語が紹介された。

これまで Inner MBAでは比較的、科学的根拠とともに示される学びが多かったし、だからこそ私も興味をそそられたのだと思う。

しかし、この最後のセッションではそれらの左脳的なロジックを超越し、さらに先の精神世界に踏み込んでいく話が多かった(オレンジ色のサイは少しスピリチュアルがかり過ぎているかもしれないが笑)。

もちろん、だからと言ってScottの話は眉唾ものだ、と決めるける話ではない。現実と神秘。それはおそらく、サイエンスとアート、論理と直感、カラダとココロ、のような表裏一体の関係なのだろう。

Scottがメールの署名に引用しているという詩人ルーミーの格言が印象的だったのでその言葉を紹介して今回の記録を締めくくりたい。

"Work in the invisible world just as much as you work in the visible world." (見える世界と同じように、見えざるで世界で働きなさい)

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以上、次回 Inner MBA 卒論編に続く!

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