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「変革のさなぎ」 Inner MBA 体験記 #31

離婚、病気、死別、失職、災害... 大きな変化が人生に起きた時、「終わった...」と捉えるか「新たな始まり」と捉えるか。多くの人はその中間かもしれない。

変化と変革の違い

人生には否応なしに変化がある。冒頭の5項目に薬物中毒(Drug Addiction)を加えた6Dが代表的なネガティブな変化だと、今回の講師 Jeremy Hunter は語った。

6D = Divorce, Disease, Death, Downsized, Disaster, Drug Addiction

現代人は人生の時間というものを、連続した一直線上「→」のものと捉えている。そのため、上記のようなネガティブな変化に対して、人生の線→が途切れた、傷ついたと思ってしまいがちだ。

一方、時計がまだなかった頃の人類は、月の満ち欠けのイメージで時間を捉えていた。時間は循環するものであり、不連続なものだった。夜が来て新しい朝が始まる。月が満ちて欠け、また満ちる、というように。そういう意味では「変化が怖い」というのは現代人特有の悩みかもしれない。

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ただし、6Dはいずれも外的な変化(Change)だ。自分一人の力ではどうしようもない。一方、自分の内部*では、変革(Transformantion)を起こすことができる。

*自分でコントロールできる範囲のことに集中する、というのはこれまでのInner MBAでの大事な学びのひとつだ。6DはいずれもOuter Gameである。

変革における3つのステージ

変革のプロセスには、1.終わり 2.中間 3.始まりがある。別離や失職など、何かが終わるイベントが起きて、何かしらの紆余曲折があり(通常、長期間に渡る)、やがて新たな始まりを迎える。

人間関係、仕事、学業、あらゆる局面で完璧な人生を送っている人はいないので、多かれ少なかれ、誰しもこの変革の経験があると思う。

Jeremy は蝶の羽化で例えた。つまり、芋虫の段階が1.終わり(Ending)、「さなぎ」としての2.中間(In-Between)がある。それから蝶として羽ばたく3.始まり(New Beginning)を迎えると。

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間のさなぎの時期に、もがき、耐え忍び、悩むことは避けられない。もっというと、この痛みや不快感こそが正しいプロセスを経ている証拠だという。ここで大事なマインドセットは「自分は終わってる、ダメな奴だ」と悲観するのではなく、「自分はいま、変革の途中にいるだけだ」と思うこと。

喪に服す

印象的だったのは、終わりを迎えた時に、すぐに行動する必要はないということだった。その痛みを受け入れて自分の中で消化し、手放す(Let it go)プロセスを経るのが重要である(合併した航空会社の客室乗務員がすぐに新路線に配属されて混乱してしまう例が紹介された)。

Jeremyの言葉を借りれば、終わったものに対して「喪に服す」ということ。これがないと、いつまでも「あの頃はよかった...」という幻想に囚われる。パンデミックを例に取るなら、人類はもう「Back to Normal」ではなく「New Normal」な世界にしか行けないのだ。

Jeremy のかつてのクライアントに、とある日本人女性がいた。彼女は元カレと行った映画チケット、レシートに書かれたメモ、旅行した時の切符...そんな思い出の紙切れがパンパンに詰まった封筒を捨てられないのだ、という。別れから2回の引っ越しを経て、さらに別の人と結婚もしたのに、「終わり」のステージから抜けられていないのだ。

喪に服す儀式が必要だと考えたJeremyは彼女と一緒にその封筒を家の裏で燃やしてあげた(村上春樹の小説にありそうなシーンだ...)。

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それから彼女はさらに数ヶ月のさなぎの期間を経て、今は子供にも恵まれ、幸せに暮らしているとのこと。

何度でも着替えよう

最後に、変革に向けて「正しくもがく」ための問答集が紹介された。

Q:一体、何が終わったのか?(それを受け入れられるか?まずは喪に服そう)
Q:何を手放すべきなのか?(もう悩んでも仕方ないことは何だろうか)
Q:誰からどんなサポートが必要か?(ひとりだけで解決できることは少ない。どんな新しい人間関係が必要だろうか)
Q:新しい自分になるために、どんな能力を学ぶべきか?
Q:そのために、何を始める?(逆に止めることは何だろうか)

言うまでもなく、この作業は、マインドフルネスを使ったり、ジャーナリング(書き出す)したり、親しい誰かに相談しながら行うと良い。

繰り返すが、不快なことはプロセスの一部である。あなたが迷っているなら、それは正しい。いつか来る新しい始まりに向かって、ああでもない、こうでもない、と悩んでみよう。鏡の前で、自分に似合う服が見つかるまで何度でも着替えるように。

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以上、今回は私が最も好きなJeremyの講義だったので長めの投稿になった。なお本編では変革(Transformation)ではなく変遷(Transition)という単語が使われていたのだが、記事中では直感的に伝わりやすい前者を選んだ。

次回 Inner MBA 体験記 #32 に続く!

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