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月の銀の林檎

KABOOOOM! 摩天楼の谷間で武装ヘリが爆発し、燃え上がる残骸が真っ黒い川に降り注いだ。ヘリの破片には「梵」の紋。

炎と爆煙の彼方、夜空に浮かぶものあり。禍々しく歪みねじれた光輪を背負い、長い腕を垂らし、青白く光り輝く異形存在!

BRATATATATA! 遠巻きにそれを取り囲む、複数の黒い武装ヘリから一斉に機銃掃射! だが異形存在の周囲の空間が陽炎じみて歪み、銃弾を逸らす!

ギイアアァーッ!

それは怪鳥のような、おそらくは怒りの叫び声をあげた。目も鼻も耳もない卵のような頭部には、ただ赤く裂けた、歯のない口だけがあった。光輪が強く輝き、光線が周囲に――放たれる!

ヂュン! KABOOOOM! KABOOOM! KABOOOM!……

「……ファック?」

饐えた臭いで目を覚ます。うつ伏せに倒れ込んだ俺の部屋のベッドは、路地裏のゴミ箱に変わっていた。コートの胸元には、昨日の晩飯の未消化物と胃液。OK、最悪の目覚めだ。身をひねり、仰向けになる。息が苦しい。

短く刈った髪を左手で引っ掻くと、こびりついた血が剥がれ落ちた。脇腹の痛みが戻ってきたが、命があるだけマシだ。右手にはまだ、銃もある。

不意に、誰かが俺の顔を覗き込んだ。銀色の短髪の、女。全裸。胸も膨らんでない乳臭いガキ。OK、幻覚だ。

「おじさん。そこで寝てると、ゴミ収集車に回収されちゃうよ」

幻覚が喋った。幻聴だ。さもなきゃ頭のネジが外れきったアホだ。近頃の若者の倫理道徳はどうなってやがる。

「ファーック!」

叫んで、立ち上がる。ゲロと唾液を地面に吐き捨て、ガキを睨む。青白い瞳と目が合う。瞳の中に「梵」の紋。眉間に銃口を向ける。クソが。

「大丈夫?」
「ノットOK。『梵』の追っ手、だな?」
「ノー。僕も追われてる」

「いたぞォ!」

ガキの背後から衛兵どもが駆けてくる。俺は引き金を、

ヂュン!

閃光と共に衛兵の胴体が横にずれ、倒れた。

「僕は、エリス。逃げよう」

【続く/800字】

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