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【FGO EpLW アルビオン】第六節 Old Earth

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(前回のあらすじ:炎上するシティ・オブ・ロンドンで跳梁跋扈する、邪悪なる英霊たち! マシュ、エピメテウス、そしてシールダー・アイアンサイドが、彼らに立ち向かう!)

「ヒィヒヒハハハ! 追って来るかァ、クソアマ!」
どこへ逃げても無駄です!

セイバー・張献忠が、鞭剣を振り回し市民を殺戮しながら、炎上するロンドン市街を走る! 追うのは殺気満々のマシュ! だが、彼の脚力は常人の三倍にも達する。このまま家屋を飛び渡り、狭い裏路地を駆け抜けていけば、容易にマシュから逃れられるだろう。

マシュは走りながら思考する。バーサーカー・ナックラヴィーは、シールダー・アイアンサイドに任せた。彼なら勝てる。しかし、このセイバーと、あのアサシンを生かしておけば、市民が次々と死ぬばかり。なんとしても追いついて、惨たらしく殺す!

『この先は、細い路地が続いてるだ。市民はいねえ。だども、このままだと……』
被っているエピメテウスが冷静にナビゲーションをするが、マシュは奥歯を噛みしめる。追いつけない。死者が増える。わたしのせいで!
「なにか、手は……!」
『おらもお前さンも、遠距離攻撃は出来ねえだな。なんか投げるとか……あ、おらを投げつけるのはやめてくンろ』
「しません」

マシュは走りながら小石を掴み投擲!「イヤーッ!」「殺ァーッ!」セイバーが鞭剣で切り裂く!
マシュは走りながら木材を掴み投擲!「イヤーッ!」「殺ァーッ!」セイバーが鞭剣で切り裂く!
マシュは走りながら煉瓦を掴み投擲!「イヤーッ!」「殺ァーッ!」セイバーが鞭剣で切り裂く!
マシュは走りながらゴミを掴み投擲!「イヤーッ!」「殺ァーッ!」セイバーが鞭剣で切り裂く!

「バッハァー! クソボケ、そんなもんでおれがどうにかなるかァァ! 足止めにもなりゃあせんわァ!」
『ダメっぽいだな。他になにか……』
マシュは……敵の進む先を見て、立ち止まる。そして手甲を、大きな盾に戻す。背負って走るには重すぎる!

「そうか……わたしの盾は……」
マシュの瞳孔が開き、センコめいた炎が灯る!
「こう使うものだった!」
マシュは……円盤投げじみて、シールドを利き手で振りかぶる! 肩から腕にかけて、縄めいた筋肉が盛り上がる! まさか!
「イイイイイイ………!! イヤーッ!!

ゴウランガ! マシュが十字架つき巨大シールドに縦回転を加えて投擲! これは! まさにギロチン・チャブめいた巨大シュリケンだ! それは狭い裏路地をジグザグに駆け抜け、ゴミやコケシ、フクスケなどを切断破壊しながら高速でセイバーの背中に迫る!
「また何か投げやがったかアホがア――――ッ!!」
振り向いたセイバーから放たれる七本の鞭剣を……巻き込み、逆に引き寄せるッ! 無視できぬ質量だ!

「な、なアア―――にィ―――ッ!?」
高速で引き戻されるセイバー! チュイイイイイン! バズソーめいた処刑機械が迫る! 回避不可能!

SMAAAAAASH!!

「アバババババ―――ッ!」
ストライク! セイバー・張献忠の顔面と胴体を、シールドシュリケンがサジタル面切断! 霊核を破壊! 脳髄と臓物が溢れ出る!
「別了(サヨナラ)!」
左右に両断されたセイバーは勢いよく地面に叩きつけられ、輝く粒子となって爆発四散! インガオホー!

◇◆◆

GGGGG……ZGGGGGGGGGG……

「……むぅッ!?」
「■■■■■■■……!」

同時刻。格闘していたアイアンサイドとナックラヴィーが、同時に気配を感ずる。なにか、極めて恐ろしいものが、迫っている。
「ここは危険だ! 逃げよ!」
アイアンサイドは、セイバーの死でやや平静を取り戻した市民らに呼びかけるが、その瞬間!

SPLAAAAAAAAAAAASH! 石畳を突き破って水柱が聳え立つ!
「■■■■■■■!!!」
ナックラヴィーが怯えて後ずさる! すなわちこれは……淡水! テムズ川の泥水だ! 次々と水柱が噴出!

SPLAAAAAAAAAAAASH! SPLAAAAAAAAAAAASH! SPLAAAAAAAAAAAASH! SPLAAAAAAAAAAAASH!

『『『■■■■■■■■■■■■』』』

悍ましい意志の声が、その場の全員のニューロンに響き渡る!

◇◇◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「エピメテウスさん! これは!?」
『あ……あり得ねえだ! まさか、あいつが……!』
盾を自動回収して手甲に戻し、南へ駆け戻るマシュにも、エピメテウスにも聞こえる! エピメテウスはぶるぶると震える!

ZGGGGGGGGGG……GWAM!GWAM!GWAM!GWAM!GWAM!GWAM!GRRRRRRRRR!!!

シティ・オブ・ロンドン全体が、大地震のように揺れ動く! 家屋倒壊! 地面陥没! ロンドン橋が市民を満載したまま落っこちる! テムズ川の水面が逆巻き、津波と共に山のような大怪獣が身をもたげる!!

『『『■■■■■■■■■■■■』』』

長さ数十メートルにも及ぶであろう、太くグニャグニャとした触腕は、百本。大岩や家屋を持ち上げ、投げつけることも可能だ。その根もと、触腕が集まる頭部は……頭足類のそれは、輝く巨大な、百の眼を持つ。一つの頭部に二つずつ眼があるなら、五十の頭があることになろう。頭部の背後には、ぶよぶよとした肉塊。臓腑のありか。胴体だ。全体に異様な紋様が浮かび上がり、螢火めいて光を放つ。

これぞ、ああ、悍ましきサーヴァント。半神どころか、古代の神々にも等しき巨神、その分霊。地球、ガイアの落とし子の、ほんのひとかけら。『狂戦士(バーサーカー)』のサーヴァント。辛うじて、そのクラスにどうにかこうにか留められる程度のもの。ギリシア神話に名高き、三柱の『百手巨人(ヘカトンケイレス)』……その一柱。真名をば『ブリアレオス』。別名は『アイガイオン』。

真名判明

バーサーカー・ケイオスタイド 真名 ブリアレオス

知性も理性もありはせぬ。手当たり次第に触腕を伸ばし、尖端をほつれさせて触糸を放つ。生き物を、無生物を、その貪欲な腹に収めていく。触腕で市街地を薙ぎ払い、大怪獣が上陸する!

『『『■■■■■■■■■■■■』』』

「■■■■■■■!!!」

ナックラヴィーが触腕の一本に捕まる! 淡水、泥水で出来たブリアレオスの肉体と消化液が、ナックラヴィーの肉体を灼き苛む! 間もなくナックラヴィーは触腕自体に呑み込まれ、霊核ごと溶かされてしまった。ナムアミダブツ……!

「「「「アイエエエエエエエ!!アイエエエエエエエ!!アイエエ――――エエエエエ!!」」」」

燃え盛るシティ・オブ・ロンドンを、市民も、マシュも、アイアンサイドも、アサシンたちも、てんでんばらばらに逃げ惑う! 北へ、北へ! テムズ川から離れる!

「どうします! このままでは……!」
『おらたちでどうにかなる相手でねえ! 巨人族でも神々でもどうにもならねえ相手だ! 逃げろ! 逃げろーッ!』

エピメテウスが本能的な恐怖に慌てふためく。マシュは歯噛みする。ガイアが直接生んだ巨人。ビーストや蚩尤やメーガナーダのような、反則級に規格外の英霊だ。真名を聞かずとも分かる。聞けばなお分かる。

以前メーガナーダを涅槃へ送れたのは、鼎……聖杯の力を借りたればこそ。蚩尤の攻略もメーガナーダがいればこそ。現状では、自分たちにあの大怪獣の暴走を、とどめる方法はない!

だが、英霊たちはシティ・オブ・ロンドンから出られぬ! 城門を通ることも、城壁を乗り越えることも、橋の彼岸へ渡ることも!

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「門……!」
ムーア・ゲートに辿り着いたマシュたちだが、潜ることは……やはり不可能! 背後にブリアレオスの触腕と津波が迫る! 狭い路地を通ることで津波は増幅され、凄まじい高さに達している!

ZZZZZZZMMMMMMM!!!ZZZZZZZMMMMMMM!!!ZBBBBBBBBB!!!

「マシュ殿! ことここに至らば、吾輩は騎士として華々しく散る覚悟! どうにか逃げられよ!」
「出来ません! 逃げることも、死ぬことも!」
「ならばァ、戦って勝つのみ!」

アイアンサイドが軍勢を展開! しかし、もはやシティの大半は水底だ! 吸収出来る火炎も乏しく、彼の甲冑も黒いまま!
「なにか、手段は……! こんなところで!」
を、開けるだ!』
エピメテウスの示唆を受け、マシュは冷静さを取り戻す。そうだ。門を。思い出せ、あの感覚を!
「スゥーッ……ハァーッ……スゥーッ……ハァーッ……!」

チャドー呼吸! 手甲をつけた両拳を胸の前で合わせ、迫り来る津波とブリアレオスを前に立つ!

「門をォ――――ッ! 開ッけろォ――――ッ!!」

マシュが叫ぶ! 震脚! 両拳が唸りを上げ、虚空に裏拳!

「『魔手悟空拳』!!」

KRAAAAAAAAAASH!!

ブリアレオスを倒すことは不可能だが……それは次元そのものを砕き、穴を開ける! 何処かへ通じるであろう脱出口を!
「アイアンサイドさん! 急いで!」
「おう!」
マシュ、エピメテウス、アイアンサイドが、穴に飛び込む! 直後に黒い津波が城壁と城門に叩きつけられ……。

「ほう、あのシールダー、『門』を開けたぞ」

金髪の少年と、緋色のマントの男。彼らは何処かで、炎上するロンドンを観察している。
「彼女の持つ宝具は、貴方の持つ宝具のひとつと同じ力を秘めています。次元に門を開くぐらいは可能でしょう」
「英霊を召喚し、門を開く。十字架と円卓。まことに、『クロスオーバー』にはもってこいというわけだな」

011010011010001101001010101010100100110100100110100101010101010101101001001101001010101010101001101001101000110100101010101010010001101001110100100110100100110100101001000110100101010101010101010101010101010011010011010001101000100110100110100110100011010001001101001010110100110100011010001010101010

門の彼方は、何処か。敵の背後か。涅槃か、虚無か、混沌か。―――否。

「「ここは……!?」」

暗雲に覆われた空。黒くねばつく雨。聳え立つ超高層ビル群。げたげたしい巨大ネオン看板群。張り巡らされる電線網。アスファルト道路を行き交う車。立ち並ぶ屋台。立ち込める霧と湯気。壁一面のグラフィティアート。ゴミ箱から路上に溢れ出るゴミ。LED傘をさし、編笠を被り、レインコートを着込んで行き交う雑多な群衆。

マシュも、エピメテウスも、アイアンサイドも驚愕する。ここは―――ロンドン、なのか?

近くのネオン看板にノイズが走り、文字が書き換わった。ノイズまみれの電子音声がそれを読み上げる。

『z... Welcome to L.A. ... A.D.2049...』

ネオン看板の文字が掻き消え、01ノイズが覆う。

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