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【FGO EpLW アルビオン】第七節 Welcome To The Jungle

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(前回のあらすじ:恐るべきバーサーカーが出現し、シティ・オブ・ロンドンを呑み込む! マシュは宝具とカラテで『門』を開き、仲間たちと共に何処かへ転移したが……?)

『z... Welcome to L.A. ... A.D.2049...』

暗雲に覆われた空。黒くねばつく雨。聳え立つ超高層ビル群。げたげたしい巨大ネオン看板群。張り巡らされる電線網。アスファルト道路を行き交う車。立ち並ぶ屋台。立ち込める霧と湯気。壁一面のグラフィティアート。ゴミ箱から路上に溢れ出るゴミ。LED傘をさし、編笠を被り、レインコートを着込んで行き交う雑多な群衆。

「L.A.……!? ここは、ロサンゼルス、ですか!? しかも……AD2049!?
『カルデアは今、2017年だったか。30年以上も未来だなや』

行き交う群衆は、浮浪者、ヤク中、酔っ払い、チンピラ、ヤクザ、ゴス、ポン引き、娼婦、オカマ、サイバネ野郎、さらりまん。南米のバーとかにいそうな逞しいならず者。白人、黒人、ヒスパニック、インド人、ムスリム、イエロー、ブルー、グリーンスキン、エルフ、ドワーフ、獣人、リザードマン。それぞれの混血やキメラ。

アイアンサイドが周囲を見回す。マシュはともかく、フルプレートアーマーを纏った巨漢の騎士の姿は、この近未来都市でも目立つはず。しかし……誰も気にもとめない。手を触れようとしても、幽霊のようにすり抜けてしまう。
「吾輩たちの姿は、こやつらには見えておらぬようだ。触れもせぬ。ロンドンの大火前と同じだ」
「では、また待てと言うんでしょうか……」
『とにかく、情報を集めねえと……』

時代的にも距離的にも全然別の都市。そしておそらくは、特異点。ならばロンドンのように、どこかにサーヴァントが潜んでいるはず。はぐれた仲間のサーヴァントたちや、ひょっとしたら彼、◆◆◆も。そう言えばロサンゼルス出身だと言っていたが。

「……シティ・オブ・ロンドンは、どうなったでしょうか」
『おらたちではどうしようもねえ。あのまンま、ブリアレオスに呑まれちまったンだろな』
「では、人理は……」
『ここがどこかはわかンねえだが、英語圏で近未来だとする。仮にロンドンがああなっても、英語は使われ続けたわけだ。いや、1666年には既にニューイングランド植民地はあったか……つまり、まあ、あンまり気にしねえ方がよさそうだな』

とにかく、じっとしていてもしょうがない。マシュ、エピメテウス、アイアンサイドは、この都市を探索するために出発した。

◆◆◆

「おやおや」「追ってくるとは」「なんて奴ら」「しかし」「むしろ好都合」「こちらが我らの本拠地なれば」「火薬充分」「魔力満載」

雑踏の中、路地の影、ビルの窓辺、監視カメラの向こう。仮面を被った怪しい人影がちらほら。彼らは次第に数を増やす。男が、女が、老人が、子供が、次々に仮面を被り、彼らとなる。ゆっくりと取り囲み、近づく。

◇◇◇◆■◆■◆◆■◆◆■◆◆■◆

エピメテウスは、水晶髑髏の内側に地図を投影してマシュを案内する。アイアンサイドは周囲を警戒しながらついてくる。

ロサンゼルスは、東西に伸びる山地を境に南北に分かれる。北は内陸盆地のノース・ロサンゼルスで、山地には例のハリウッドサインがある。その南麓がハリウッド、ウェスト・ハリウッド、ビバリーヒルズといった有名な地域。その南がセントラル・ロサンゼルス。西の太平洋岸にはサンタモニカ。南がサウス・ロサンゼルス。イースト・ロサンゼルスとの境にはダウンタウンが広がっている。

『……ンで、おらの記憶データによれば、ここらはロサンゼルスのダウンタウンに相当する地域みてえだな。ちうても街並みが全然変わっちまってて、よくわかンねえだ。こんなとこまで海が入り込ンでる……』
「あっちにチャイナ・タウンがあります。そうすると、その北にドジャー・スタジアムが……」

ザザッ。ビルの上で「ふわふわローン」のCMを流していた巨大モニタにノイズが走る。マシュとアイアンサイドは、それを見上げる。群衆は誰も反応しない。サーヴァントのしわざか。ウォッチャーか。

01101010……ノイズが、次第に意味のある形を取る。奇怪な仮面が浮かび上がる。

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「「「よぉーーーこそ、来訪者」」」

「「アサシン!」」

周囲の群衆が、一斉に、ぐるりとマシュたちへ振り向く! 体格も人種も性別もバラバラだが、全員に同じ仮面! 肉体が変形し、同じ体格、同じ性別へ変わっていく!

「「!!!」」

マシュが唾を飲み込む。大群衆。数千はいる。それが全て……敵! あの威力の爆発をこの数で起こされたら……!

「ここはL.A.」「ロス・アンゼルス(Los Angeles)?」「イエスであり、ノー」「ルイジアナ(LouisiAna)?」「ノー」

アサシンたちが、ガイ・フォークスのアバター『アノニマス』たちが、嘲るように会話し始める。それと同期して、巨大モニタに文字が表示されていく。アノニマスたちのセリフを、そのまま。モニタの中のアサシンも身を乗り出し、睨め降ろす。

「「「「ここは」」」」
「ロンドン・アルビオン(London Albion)」
「ロウワー・アルビオン(Lower Albion)」
「ロス・アルビオン(Los Albion)」
「ロンドンのアルビオン」「地下のアルビオン」「失われた(Loss)アルビオン」

ザザッ。巨大モニタが、威圧的なオスモウ・フォントで文字を表示する。

A.D.2049

人理定礎値:??

末法電脳都市 ロス・アルビオン


「末法、電脳都市……!?」

どういうことだ。未来のロサンゼルスではなく、未来のロンドンなのか。あるいは平行世界か。
『地理的には、どう見てもロンドンでねえ。ロサンゼルスだ。テムズ川もねえ。地名がおかしいだ』
「歴史が変わってしまったということですか!?」

アイアンサイドが食って掛かる。
「貴様らァ、何者か知らぬが、吾輩たちと戦う気か! よかろう、全員倒してくれるわ!」
倒す。どうやって。こいつらは……全員が、奴のアバターだ。本体はどこだ。次元移動の疲労は無視できない。
「刺激しないで下さい。こいつらは掌から火薬を放ち、爆発を起こします。防ぐことは……なんとか、可能ですが……」

それを聞いて、アイアンサイドが笑う。
「むふん! 火薬、爆発とな! よかろう、吾輩が受けて立とうではないか!」
アイアンサイドが鼻を鳴らし、不敵に笑う。ああ、そうだ、彼は。

「さてさて、絶望させるために」「教えてやろう」「これは『聖杯戦争』」「君たちもよく知るところ」「聖杯は」「まだ出現していない」「聖杯を手に入れるには」「他の英霊を全員殺すしかない」「君たちも互いに」「殺し合わねばならない」「仲間同士であろうともだ」「そうなる前に」「慈悲深くも」「私が君たちを」「始末する」

アサシンたちが嘲笑い、掌を構え、黒色火薬を射出する。全員でぶっ飛ばす気だ!

「「「「『爆殺火薬陰謀劇の夜(ナイト・オブ・ガンパウダー・プロット)』!!」」」」

ZGGGGGTTTOOOOOOOOOOOOOOOOOOMMMM!!!

「『無敵鋼人大胆不敵(インヴィンシブル・アイアンサイド)』!!!」

アイアンサイドが掲げた盾に、火炎と爆風が吸い込まれる!
「ぐわーっはっはっは!! ぶわーかめが、吾輩に火炎が通じるかァ!!」
猛烈な勢いで魔力が彼に流れ込む! 黒い甲冑が赤熱!
「そして! いィでよ我が軍勢、『赤き鉄騎の護国卿(ロード・プロテクター)』!!!

ザン! 全方向に赤熱する鉄騎兵が出現! アサシンたちを外へ押しやる!

「なんて奴」「これはいかん」「もう少し様子を見る」「策を練る」

相性が悪いことに気づき、慌ててアサシンたちが逃げ去る。群衆は……気にもとめずに歩いて行く。あの爆発も、群衆や地形には何の影響も及ぼしていないようだ。どうやら、英霊たちが戦っている世界のレイヤーと、群衆たちのレイヤーは違うようだ。このままなら一般人を巻き込まずにすむが。

「聖杯、戦争」
マシュたちは廃ビルの一角に潜み、アサシンの告げた情報を整理している。
「彼らの言うことを信じるのもなんですが……今度は敵も味方もなく、『一騎』残った英霊だけが、聖杯を手に入れるわけですか」
「むう……互いに殺し合わねばならぬとは。マシュ殿、吾輩と戦うか」
「貴方は、聖杯に託す望みはないのでしょう。でも、わたしにはあります。そうしなければ、わたしは帰れません」
『おらもまあ、破壊されれば座に還るだけだけンども、マシュはなあ……現世に帰る場所があるからなあ』

つまり。キャスター・エピメテウスも、アサシン・イシュタムも、セイバー・勾践も、シールダー・アイアンサイドも。味方になった英霊全員が、一旦消滅せねばならない。敵は当然倒す。味方も……説得すれば、自害してくれるかも知れない。彼らは特に聖杯へかける望みはない。

わたしだけが残らなくては、聖杯を手に入れられない。先輩を救えない。カルデアに帰還できない。だからだ。

「シンプルです。敵対する英霊を全員で団結して倒し、その後、わたし以外の英霊には自害してもらう。それしかない。そうならない方がいいですが」
「よかろう。それまではお供つかまつる」
『ンだな。ちうても、ガイ・フォークスを、おらたちだけでは……』

「「「よう、カルデアの御一行」」」

背後から突然の声。マシュとアイアンサイドは驚き、振り向く。闇の中に……アサシンではない、何ものかがいる。

ぴちゃり、ぴちゃりと水音。くぐもるような声。ずるり、ずるり、と何かを引きずるような音。エピメテウスが声を震わせる。
『……また、遭うとはなあ』

ふらりと現れ出たのは、ボロ布を纏った、ふためと見られぬ醜い矮人(こびと)。おお、その形相といったら! まるっきり畸形で、ぶよぶよ、でこぼこした禿頭には、目や鼻や口や耳がたくさん、デタラメについている。腕はグニャグニャの触腕で、吸盤が並んでいるではないか。そいつは目の横と鼻の上に具わった、複数の口で、同時に告げた。

「「「安心せい、敵意はない。われらはバーサーカー『ブリアレオス』。の、アバターだ」」」

◇◆

BRATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATA………

特異点・イジェフスク。ここでの戦いは、いよいよ終わろうとしていた。
狂える悪霊カラシニコフは、ひたすら『娘』たちを作り出すしか能がない。
『娘』であるアーチャー・カラシニカヴァたちは、ひたすら増えて銃弾を撒き散らすしか能がない。

対するライダー・ウェンディゴは、銃弾をほぼ防げる。味方のぶんもだ。そしてウェンディゴと、アサシン・イシュタムは、容易に相手の魂を喰って自らを強化出来る。セイバー・勾践もまた強い。これでは……アーチャーに勝ち目はない! 無傷とはいかないが、ついにアサシンは包囲網を抜け、カラシニコフの首に縄をかける!

「チェックメイト。おじいちゃん、迷わずあの世へ逝きな! 『奇妙な果実(ストレンジ・フルーツ)』!」

カラシニコフの目から狂気が消え、血涙が蒸発していく。無数に増え続ける『娘』たちを介して発生し、呪いに囚われ、存在し続けていた彼は、本来の人格を取り戻したのだ。

『…………ありがとう……………』

霊体が金色の粒子に分解し、カラシニコフは微笑みながら消えていく。彼の『娘』たちも、狂気から解放され…………次々と倒れていく。戦争は終わった。

「やれやれ、これでイジェフスクはクリアかい。で、この特異点は……」

言い終わる前に、工場全体が、いや特異点全体が激しく震動! 地面が割れ裂け、工場が崩れ落ち、天空が歪んで巻き取られる!
「やはり……聖杯もないのに、こやつを倒せば崩れていくというのか!」
【これでたぶん、虚数空間に放り出されるね。ふたりとも、オレ様につかまってな】

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