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【FGO EpLW アルビオン】第八節 United We Stand

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末法電脳都市ロス・アルビオン。アサシンの襲撃を退けたマシュたちの前に、異形の矮人が現れる。

「ブリアレオスの、アバター?」
眉根を寄せ、手甲を構えつつマシュが問う。襲って来ないのなら、敵意はないのか。
「あの怪物は、次元の壁の向こう……1666年のシティ・オブ・ロンドンに置いてきたはずですが」
矮人は肩を揺らし、くぐもった異様な声で言う。

「「「さよう。われらの本体は、さっきのあちらに閉じ込められておる。アサシンのせいかどうか知らぬが、そうなっておる」」」

アイアンサイドが首を傾げる。先程からわけの分からぬことばかりだ。
「われら、だと。貴様らも大勢いるというか」
『ああっと。このブリアレオス、ヘカトンケイルはな、腕が百本、頭が五十もあるだ。ンだで、ひとりでも五十人分おるだ』
「「「そういうことだ。ま、アバターもそれなりに増やせるがな」」」

マシュが警戒を解く。少し話が見えてきた。
「……わたしが次元に穴を開ける以前に、こことシティ・オブ・ロンドンが繋がっていた、と。あちらにもこちらにも、確かにあのアサシンがいました。そして――――貴方も?」

矮人は頷くと、泥水を操作して二つの泡を作り、宙に浮かべる。それをピタリとくっつける。

「「「ここ……2049年のL.A.と、1666年のシティ・オブ・ロンドンは、次元は異なるが『同じ特異点』なのだ。誰かが無理矢理に、霊的にリンクさせて継ぎ接ぎしおった。おまえが穴を開けてくれたせいで、物理的にも繋がることになった。こちらとあちらと、両方の英霊を全滅させねば、われらは聖杯を手に入れられぬ。わかるかな?」」」

マシュのかぶるエピメテウスが呟く。
『誰かが特異点を継ぎ接ぎした。そンなことが出来るのは、ウォッチャー、バロン・サムディしかいねえだろな』
「ですね。……ここで貴方を倒しても、本体には影響がないと」

「「「さよう。この貧弱なアバターでは、アサシンどもにも、おまえたちにも敵わぬ。われらはな、還りたいだけだ。母なるガイアの奥底、タルタロスに。そこがわれらの職場なのでな」」」

エピメテウスは珍しくびくびくしている。相手はなにしろ、ティターン神族を打倒した原動力の一人だ。兄プロメテウスの判断に従ったため直接戦ったことはないし、現状味方ではあるのだが、怖いものは怖い。

『……英霊の座に登録されてるのは、データだけだ。お前さン本体は、タルタロスだかオケアノスだか、エーゲ海の底だかにいるはずでねえか』
「「「さよう、エピメテウスよ。われらは別に聖杯などいらぬ。神代の戦でもないのに喚び出されて迷惑しとるのだ」」」
「簡単な推測ですが……何かの抑止力でしょう。敵でないなら、ご協力をお願いします。ひとまずはあのアサシンを倒さねば」
「「「さしたる協力はできんが、助言はできる。あれを見よ」」」

アバター・ブリアレオスが廃ビルの窓を開け、上空を指し示す。黒雲の中に、なにか……蠢いている。

「「「われらの本体だ。おまえが開けた次元の裂け目を押し広げながら、じわじわこちらにも出て来ておる。時間はないぞ」」」

マシュが下唇を噛む。あれが降りてくれば……市民への被害どころか、特異点全てが呑み込まれ、滅んでしまう。場合によっては人理が危ない。
「……どうやって、貴方の本体を倒せばいいのです。自決出来ますか」
「「「アバターが本体を自決させることなど出来ぬ。誰ぞ途方もなく強い英霊にぶつけてみてくれい」」」
『お前さンを倒せるような英霊を、おらたちで倒せちうのも、無理な注文でねえかな……。いっそお前さンが全員ぶっ潰して、聖杯でおらたちを生き返らせるとか』

ブリアレオスは肩をすくめる。
「「「はは。そこまで責任は持てぬし、われらの本体にそんな判断力はないわい。もろともに滅ぶだけだ。……さて、ではわれらについてきてくれ。会わせたい奴がおる」」」

◇◆

オークに連れられて、下水道に降りる。そのままずーっと歩いて行って……LED傘を灯火にして……急に広い所に出た。ぽつぽつ電灯が灯ってるが、上が高くって、天井は暗闇の向こうで見えねぇ。コンクリートの巨大な柱が荘厳に立ち並ぶ。古代の神殿みてぇだ。

「あー……あれか、日本の首都の地下にあるやつ。ネットで見た」
「そう。地下貯水槽だ。まあ上が汚えんで、ここも下水が流れ込んでひでえ有様だが……」

ボコボコ、ボコボコ、と妙な音。足元の黒い水たまりが泡立ってやがる。なんだ、こりゃ。

「「「『オーク』よ、でかした。われらもそいつの仲間と合流したところだ」」」

不気味な声が響く。水たまりから気色の悪い矮人が、ぬるりと出て来た。
「……なんだ、お前」
その矮人の足元から、ボコボコと人影が複数。すわ、敵か! ……って、おいおいおいおい。
◆◆◆さん!」『おう、生きてただか』
水晶髑髏、エピメテウスを被ったシールダー、マシュ。あとなんかでけぇの。

「……お前ら! どこほっつき歩いてやがった! ……なんだ、その甲冑野郎は」
「そちらこそ、その緑色の人は誰ですか」

◆◇

再会の喜びもそこそこに、互いの情報を交換する。あと、被ったエピメテウスから画像や映像、音声つきでログが提供される。マシュたちは随分な大冒険だったようだが、俺はこの辺をちょっと歩いただけだ。そっちでなくてよかったぜ。

アイアンサイドっておっさんは新しい仲間で、セイバーやアサシンはまだ見つからねぇようだ。カルデアとも通信が繋がらねぇ。で、この不気味悪ぃ野郎がなんとかいう大怪獣のアバターで……えーと。

「……んじゃよぉ、このオークも、お前のアバターなのか」
「「「違う。そいつは現地採用だ」」」
「そうだ。英霊ってわけでもない。幻霊(スペクター)ってのが一番近いかな、あんたらの定義で言うと」

何の話だか分からん。マシュも首傾げてるじゃねぇか。ダ・ヴィンチちゃんもいねぇし。
『ロス・アルビオンでオーク、ちうと。ひょっとして、アレか』
「そうだ。俺は『四つのゾア』の一柱ルヴァの子。あるいはサーマスの子であるロスの子。混沌と情愛、革命と熱情の象徴、『オーク』様だ」
なんのこっちゃ。マシュはなんか気づいた顔をして、ぽんと拳を掌で叩く。

「全然わからん。説明しろ。オークってのァ、アレだろ、ファンタジー作品とかに出て来る脳筋種族だろ」
『そういうイメージは、トールキンやD&D以後……ってわけでもねえか、グレンデルもいるし』
「近世英国の詩人、ウィリアム・ブレイクの作品の登場人物……霊物、と言うべきでしょうか。とにかく、いわゆるオーク、ではありません」
なんのこっちゃ。要するに、別に悪い奴じゃねぇってことだけはわかった。いい奴ってわけでもねぇんだろうが。

当のオークが無言で挙手し、発言を求めている。まあ御本人に聞くのが一番だろう。オークはタバコをつけ、渋い声で喋りだす。
「俺は反体制、反抗する者。熱情から生まれ、虐げられる者のために怒る。虐げる者を倒す革命者だ。ただ……俺が完全に勝っちまうと、結局は新たな秩序、支配者にならざるを得なくてな。いろいろあって、ここでは妥協してたんだ。混沌の世界と、秩序の世界のどっちが暮らしやすいか、考えてよ。俺は混沌の方を選んだ。みんな自由ならそれでいいだろ、ってな」

――――いい歳こいて、8年生(訳注:中学2年生)症候群にでもかかってらっしゃるのかしら、このオーク。いや、こいつはこいつで真剣なんだろう。笑っちゃいけねぇ。笑っちまいそうだが。

「そこへ、あいつが……アサシンがやって来た。あいつとは一応うまくやってたんだ。混沌と無秩序を好むってとこは同じだしな。でも、あいつはやりすぎた。やりたい放題にやった結果、大勢の市民が不幸せになっちまった。俺も力を奪われ、こんなザマさ。で……」

オークがタバコでブリなんとかを指す。そいつが話を継いだ。

「「「そこへ半日前、われらがやって来た。本体はあちら、アバターはこちらと分けられてな。カルデアのことについては、ウォッチャーから聞いた。 そのカルデアの一行が、こちらかあちらのどこかにおるというのだ。そいつらを殺すか、味方にするかは、われらに委ねられた」」」
「俺とこいつ、ブリアレオスが出会ったのも、半日前さ。ウォッチャーと一緒に話を聞いたんだ。で、俺は決めた。アサシンたちを倒すため、あんたらと手を結ぼうってな。合流できてよかったぜ」

マシュが腕を組み、頷く。
「……なるほど、事情は掴めてきました。あとは、アサシン……イシュタムさんと、セイバー・勾践さんが揃えば……」
「人数や名前や特徴は、知らされてなかったな。まだいるのか。じゃ、ブリアレオスに探してもらおう」
「おう、頼まぁ……―――――――ん」

ZGGGMMMMMMM……! ZGGGMMMMMMM……!ZGGGMMMMMMM……!

いやな音を立てて、地下貯水場が揺れ出した。パラパラとコンクリ片が落ち、壁や柱にヒビが走る。

「な……なんだ、地震か。ロサンゼルスは確かに地震多いけどよ……」
『地面じゃねえだな、上の方が揺れてるだ』
「上か。隕石が落っこちて来たのか。アーマゲドンか」
「まさか、ブリアレオスさんの本体が、もう……!」
「「「いや待て、これは……地上へ戻るぞ」」」

ZGGGGGGMMMNNNNNNNN……!

◇◆

ブリアレオスが一行を泥水で包み込み、地上へ転移する。群衆が慌てふためき右往左往。なにかのレイヤーが重なったのか、一行を見て、仰天して逃げていく。人々が逃げる方向の逆。空が、ヒビ割れている。ブリアレオスではない。

「あっちになんか落っこちたみてぇだな。なんだ、核兵器か。それとも宇宙人が攻めてきたのか」
オークが眉根を寄せ、ひび割れた空を睨む。
「……ともかく、行ってみよう。ブリアレオス、頼む」

◆◇

崩れ落ちた天空の下。ブリアレオスのアバターが、黒い水たまりから出現した。続いてエピメテウスを被った◆◆◆、マシュ、アイアンサイド、オーク。

「ふー……毎度毎度なんだが、どこだここァ」
エピメテウスが周辺の地図を投影し、ナビゲーションする。
『ンン、ここは……ロサンゼルスでいうと、北側だな。有名なハリウッドの看板から北の盆地だ』
「ああ、『サンフェルナンド・バレー』か。ポルノ産業のメッカの……へへへ」

いやらしい笑いをするマスターに、マシュが軽蔑の目を向ける。しかして周囲の状況は――――

「見たところ、スラム街と廃墟だな。未来に何があったのやら」
「……なにか、います」

バラバラと、廃墟から何者かが現れる。冬服を着込んだ、サングラスでショートヘアの女性たち。全員が同じ姿、同じ自動小銃で武装!
「敵だな。へっ、こちとらシールダーが二騎もいるんだ、銃なんか怖かねぇぞ!」
「数が多すぎます! 見渡す限りのビルから……」
「ふん。仮面のアサシンやブリアレオスのように、アバターを操っておるというのか」
一挙に囲まれた。天空の穴からもバラバラと、同じ連中が降ってくる。ヒーローめいて三点着地し、こちらに銃口を向ける。

「「「お前たちは、カルデアとやらの連中か!」」」

思わず両手を挙げていたマスターを、みんなが見る。
「……おい、マシュ。お前かダ・ヴィンチが交渉しろや」
「カルデアとは繋がりません。仮でもなんでも、マスターはあなたです。護衛しますから交渉して下さい」
マシュの言葉に、一同が頷く。

「ちぇっ、しゃァねぇな。……おう、いかにも。俺がカルデアのマスターで、こいつらが……」
「マスターだけこっちへ来い! 我々が保護する!」
「……銃持ったごつい女たちとのハーレムは、ちょっとなァ……」
「なんだか分からんが、渡すわけにもいかんな」

0001001101001101001101000110100010011010010101101001101000110・・・・・

サンフェルナンド・バレー上空。『穴』は空間に01ノイズを放ちながら、徐々に塞がっていく。消えゆくイジェフスクから転移して来たのは、アーチャーたちだけではない。旋風の中にいるのは……。

「うー……どこだい、ここは」
【なんか、また廃墟ばっかりだね】
アサシン、セイバー、ライダーの三人組。虚数空間を飛び渡り、ロス・アルビオンへ落下したのだ。

「見よ、あやつらがまだおるぞ!」
セイバーが歯噛みして下を指差す。散々聞き慣れた銃声。次々とビルの廃墟から湧き出し、山を超えた高層ビル群へ向かっていく。
「こいつらの親父は天国へ送ってやったのに、まだ残ってんのかァ。親離れしやがって……」
アサシンも舌打ち。一体一体は大したことはないが、数で押されると厄介だ。それに、この特異点の機械工場でも占拠されたらコトだ。と、何やらアーチャーたちに囲まれている連中がいる。ということは!

「あいつらは……!」

◇◆

「あいつらは……!」
アーチャーたちに包囲されていたマスターが、空中を見上げる。何かモヤモヤした霧の塊が、冷たい風を放ちながら降りてくる! その中にいるのは!
「敵か!?」
「違う!」

ズオン! ライダー・ウェンディゴが一同を風で攫い、上空へ逃れる! マシュが安心し、微笑んだ。

「……味方です。お久しぶりですね、アサシンさん、セイバーさん」

◆◇

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イジェフスクから通じた穴の数km南。バイクや自動車を強奪したアーチャーたちの大軍が、サンタモニカ丘陵を三方で超え、南へ侵攻! 高速道路405号線を、国道101号線を、州間高速道路5号線を駆け抜け、銃弾を撒き散らしながら進む!

「殺せ!殺せ!」「皆殺しだ!」「殲滅だ!」「戦争だ!」「工場を奪え!」「物資を奪え!」

BRATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATA!!!
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